94 白崎 凛のことは嫌いだ。それなのに……
突然だが、俺は今ピンチである。
ちょっとでも、動くことさえ出来ないほどピンチである。
「ダーリン。こっち見たら許さないからね!」
「分かっているよ!」
「白崎さん大丈夫です。私が責任もって見張っておきますので」
白崎がそう言う理由にはしっかりした理由がある。
なぜなら、ここは浴室。
そして白崎は今、着替え中である。
だから、妹の雫が俺が白崎の着替えを見ないかと、監視役を担っているのだ。
全く、失礼な奴らだ。
俺は白崎の体なんて見たくもない。
なのに、ここまで警備してくるとか、一体、こいつらにとって俺はどういう印象があるのかわからない。
「白崎さん。何かありましたら私に報告をしてください」
「おい、雫。俺はこいつに何もしないからな」
「そう。なら、なんかあったら、ママに報告させてもらうから」
あいにく今日に限って俺達の親はいない。
雫に聞いたところによると、雫の学校関係の集まりとか……
まぁ、そんなことはさておき、俺は白崎の体を見るなんてことはしない。
仮に見たとしたら、俺の人生が終わる。
まずは、親に説教を受けることは確定。
そして、妹には今後、白い目で見られ、人間扱いされることがなくなるだろう。
勿論、白崎がこのことを学校中に言いふらせば学校生活も変わる。
宮前、小日向はも俺を人間扱いしなくなるし、最近、なぜかといい感じの千葉さんに関しては俺に幻滅するに決まっている。
以下のことが想定しているので俺は絶対に白崎の体なんか見ない。
もっとも……
「ほらほら、ダーリン。せっかく二人だから、お背中を流し合おうよ~」
俺が白崎を見れないことを良いことに、白崎は俺の体をべたべたと触ってくる。
「おい、白崎。いい加減にしろよ」
俺は白崎を睨みつけた。
けれど白崎に触れているのが嫌だから睨みつけたわけではない。
なぜだろう
白崎の柔らかい手に白崎の手から伝わる暖さ。
白崎が俺の体に触られていると意識をしてしまうと、鼓動が早く、まるで緊張してしまっている。
どうした俺。
最近、白崎を意識してしまうとどうしてだか、心拍数があがってしまう。
最初の頃は、あいつに似ていることが嫌で、白崎を嫌っていたのに、どうしてだ……
「分かったダーリンの体は触らない。その代わり私の背中洗ってくれる?」
白崎は、長い髪をかき上げる。
前の俺だったら言っていただろう。
「そんなことするわけないだろ!」
「どうして、お前の体なんか洗わないければならないんだよ!」と……
「あっ……ダーリン。そこ気持ちいい……」
おかしい、おかしい。
今の自分は自分ではない。
まるで、誰かに操られているようだ。
自分の意思は白崎のことを嫌っているつもりだ。
それなのに、体が言うことを聞かない。
もしかして、俺は白崎のことを好きだと言うのか……
いや、それはない。
だって俺は白崎のことが嫌いだ。
嫌いで仕方がない。
俺が嫌いな女子に瓜二つなところに、白崎の馬鹿さ。
それにわがままなところに、鶏のようにうるさいところ。
そう言うところが白崎の嫌いなところだ。
なのに……今の俺は……
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