キョウダイ
カニバリズム(人肉嗜食)等のグロテスクな描写があります。苦手な方はご注意を。
おれの兄貴は何でもできた。
勉強もスポーツも得意で、苦手な事はない。
そのうえ明るくて気が利く奴で、友達が大勢いて人付き合いがうまい。
クラスの人気者で先生から受けもよくて、女子から絶大な人気を誇る、完璧な男。
おれの持ってないものを、兄貴は全部持ってる。
くそっ、胸糞悪ィ。
何で兄貴ばっかりいい思いしてんだ。
何で兄貴は何でも持ってるんだよ。
おれだって同じ親から産まれたのに、どうしてこんなに違うんだ。
同じ兄弟なのに!
―――おい、いつまで黙ってるつもりなんだ。
仕方ないでしょ、こんな事言えるわけないじゃない……。
あなたが言ってよ。
何言ってんだ、もともとお前がどこのどいつかもわからない男と寝たのが悪いんだろうが。
それくらい自分で言え。
何よ!
あなたの浮気が原因なのよっ、あなたのせいよ!
人の事を棚に上げてよくそんな事が言えるな。
だからあいつは兄貴に比べて出来の悪い、出来そこないの弟になっちまったんだよ。
あいつは俺の息子なんかじゃない。
ちょっと、私のせいだって言うわけ!?
私だってあんな男の子どもなんて産むつもりなかったわよ!
あぁ…もっと早く気づいてればよかった。
そしたら堕ろせたのに……!
夜中に両親が言い争いをしているのを、聞いた。
あ〜そっか、
おれ、
この二人の子どもじゃなかったんだ。
兄貴の弟じゃ、
なかったんだ。
なーんだ、
だからおれ、
兄貴と全然違うんだ。
だからおれ、
兄貴みたいになれないんだ。
おれは、兄貴と、他人、なんだ。
おれは知ってたんだ。
おれとお前は、兄弟なんかじゃないって。
そして思ったんだ。
おれはお前と、兄弟なんかのままでいたくなんかないって。
だから考えたんだ。
おれとお前は、兄弟なんかじゃ物足りないって。
おれは願ったんだ。
おれはお前と、兄弟なんかより深い繋がりが欲しいって。
おれは実行した。
お前を、誰よりも欲していたから。
「……兄貴、」
どうして?
「だって、仕方ないだろう?おれは、お前が欲しいんだよ。おれ達は兄弟じゃないから」
ああ、そうか。
兄貴も聞いてたんだ。
でも、なんで?
「……なぁ、お前はおれの事、嫌いって言ったよな」
そうだ、兄貴なんて、嫌いだ。
「違うよ。お前は、おれのこと、好きなんだよ」
やめろ、こんなとき、に笑うな。
「好きだから、おれに近づこうとした。好きだから、おれが他人だと知ったとき、お前はおれの存在が遠くなる事を恐れた」
笑うな、いやだ。
「だからお前は、おれを殺そうとした。自分の傍にいられないのなら、と」
赤い舌が、おれの唇を這う。
熱い。
「おれも、同じだよ」
「ぐあっ……」
熱い、あつい。
腹がえぐられる、熱い血が溢れる。
「でも、こんな包丁ひとつ刺すだけで満足なのかい?」
熱い、熱い熱い。
「おれはね、駄目だよ。こんな刃物ひとつでお前を愛しきれないよ」
ぐずっ、ぐじゅ…、
「っは、がぁぁっ!ひぐっ……!」
熱い、焼かれる。
痛い。
あぁ。
「痛いね…、苦しいよな。待ってろよ。もう、すぐだ。ああぁ……、こんなに血が出て……きれいだよ」
もっと見たいな。
そう言って笑う。
押さえ付けられた腕に、
灼熱の痛み。
「―――ぁああぁあああ!」
痛い熱い痛いあつい熱い痛いいたいアツイいたいいたいあついいたあぁぁああああ!!
「甘い、甘いよ。美味しいよおいしいおいしい」
ぐしゃっ、
ごりっ、
ぶちぃっ!
腕が、喰い千切ぎられる。
「いたい、いたいよぉぉぉ!やめてよ兄貴、お願いだからっ……!助けて、いやだっいたいよ、たすけて……兄ちゃん!やめ、」
「ここも食べようね」
どっ!
心臓を、一突き。
「ぐっ……!あ゛ぁ、あ、………に、い……ちゃ……」
最期に見た兄貴の顔は、幸福に満ちていた。
弟は、死んだ。
でもそんな事どうでもいい。
弟の身体はここにある。
それだけで十分だろう?
あぁ、愛しいおれの弟。
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる…………美味しいよ」
ああ、幸せだ。
これで、
ずっと、
一緒だ。
「ちょっと待っててくれよ、あいつら片付けてくるから。終わったら、」
また、愛し合おう?
勢いのままに書いたものです。読みづらい……。狂った小説が書きたい!と、いくつかテーマを決めて書き始めたら、いつのまにかBLに走ってしまいました……。兄弟モノ好きです。カニバネタはもっと好きです。包丁ひとつじゃ〜の台詞、個人的に気に入ってます。ずっとこの調子のまま書き続けるつもりですが、読んでいただけたら嬉しいです。感想も、是非。