次の話へ
気持ち悪い話。学校が舞台だからうちでもありそうな気がしてしまう。
文章を読んでいるようなクダの落ち着いた語り口調にはさすがのリョーコも口を挟まなかったが、話し終わったとなるやあごを突き出して言う。
「で? クダくんはそれを誰から聞いた体なのかしら?」
確かに、今の話の一部始終を知っている嶋は消えてしまったわけだから、この話を伝えられる人物は誰もいないはず。
クダは穏やかにほほ笑んだ。
「別に実話の体じゃないんだ。ただの創作話。怖い話ならいいんだろ?」
「ふうん、ルールの隙を突いてきたわけね」
なんのルールだよ、というセントの呆れた突っ込みにクダはただ肩をすくめる。
クダはたいてい落ち着いていて、何を言われても受け流してしまう。ぼくらが騒いでいるときも一歩後ろで黙って様子を見ていることが多い。
頭が良くてどんなバカ相手にでも丁寧に説明してくれるから、バカ代表のシンはクダになついている――というか、ある種手綱を握られている。
シンが携帯電話を持ち歩いて今どこで何をしているか多少は連絡をしてくるようになったのも、クダがうまく言いくるめたおかげだった。
ぼくとしては、面倒なきょうだいのお守りを引き受けてくれるクダには非常に助かっているものの、いまいち何を考えてるのかはつかめないところもあった。
「ってか、オチ放棄してるじゃない。作り話なら顔がなんだったのかも決めなさいよ」
「想像の余地がある方が怖いと思って。顔がなかったとか、嶋自身の顔だったとかのオチもあるんだけどやめておいた」
偉そうな指摘に冷静に返されたミナは、「別に怖くないし」とそっぽを向いた。
――さて、とうとうここにいるみんな話し終わってしまった。次はぼくが話さないと。
正直怖い話なんて何も思いつかなかったから、みんなの話を聞きながらあれこれ考えていたのだ。
創作でいい、というお墨付きを得られたところで、ぼくも何かで読んだ話をすることに決めた。
「じゃ、ぼくは双子の話をするよ」