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1話 エリートニート化は突然に

主人公の大雑把な説明


彼は小中高校と基本出席はするがすぐに帰り、家から出ない生活を送っていた半引きこもり野郎である。

今から4年ほど前の話だ。

某国の首都にある某アパートの203号室には私の苗字である『十神(とかみ)』の薄汚れた表札が掛けてあった。

首都の物価は高い。

田舎の実家業を継ぐのが嫌で出てきた私はボロアパートに住む他はなく、日々バイトで食いつなぎながらどうにかしていい企業に入ろうと何十件も企業を回った。

しかし企業から帰ってくる返答はいつもこうだった。

『この度は弊社にご応募いただきありがとうございます……』などという文句から始まる。

そして『慎重に検討を重ねた結果……』やら『今回はご縁がありませんでした……』やら『応募者が……』などと遠回しにお前いらないと書かれた文面が長々と綴られる。

そしてメールは『今後のご活躍をお祈り申し上げます』とか『今後のご健闘をお祈り申し上げます』などという文面で締めくくられていた。


俗に言うお祈りメールだ。


流石に100社以上も落ちれば分かる。私は必要とされていない……と。そして私は気づけば競馬場に来ていた。

賭け事をやるのは初めてだしましてや競馬なんて一度もやったことがない……ただ電車の中でポスターを見てなんとなく足を運んだだけ、ただそれだけの話だ。


もう田舎に帰るつもりだったから帰るのに必要なお金に余裕を持たせて残っていた10万を5連単とかいう馬券に突っ込んでみた。もう、やけだった。どうにでもなればいいと思った。

夢をきっぱり諦めて帰ろうと思った。

そんな私が選んだ馬は人気が低い馬5頭。

人気は最下位の物らしい。

当たることはまずないだろう。

それでも良いと思えた。それは、私の選んだ5頭の馬の人気のなさ、必要とされていないことが少し私に重なって見えたから。

夢を買うわけじゃないけど、その時の私は確かにその馬達を応援していたのだろう。

自分と同じ負け組なんだって。


ラッパが鳴り、レースが始まった。

途中のことは覚えていないが、気づけばレースは終わっていた。

何故だろうか、努力は結ばれると言うものを垣間見た気がした。

私が選んだ馬はこのレースで引退なのだと言う。

まさに執念の走りというものであったらしい。

ところで私の買った馬券なのだが万馬券というかオッズがとんでもないことになっていた。

そして受付へ行きお金を受け取った。


全く現実感がなかった。


ふと税金を支払わなければ……と思った。

一気に現実に引き戻される気がした。

よくネットで調べてみると競馬にかかる税金は買った時点で25%支払っているのだという。

昔は当たった金額にも税金がかかっていたらしいが少し前に起きた税金改革で無くなったらしい。


……結局その後の私は田舎の実家に帰らなかった。

あぶく銭にしがみついて故郷へ戻ることを拒否した。

競馬で得たお金だがもう一度当たる気が全くしなかったし、もうやけでもないのでギャンブルにハマることもなかった。

ただどうせマグレで得たあぶく銭など自分で持っていても身を崩すだけだ……と思っていたところクラウドファンディングと言うものを見つけた。

やはりあぶく銭は泡となって消えるのが一番いいのだろう。


これも仏様か神様の意志だと思い、とある企業に出資することにした。

どうせ泡になるのならギャンブルに注ぎ込むより人に注ぎ込もうと思った。

それで誰かが負け組から這い上がっていけるのなら、とそんな思いもあった。


投資するのは大企業ではなく中小企業と呼ばれるところだ。

企画はすでに出来上がっていてあとはそれを実行するだけらしいので思い切って出資してみた。

それが私の始めての出資だった。


それから3年後、私はやり手の投資家と呼ばれるようになっていた。

昔、私をいらないと言った大企業にはほぼ出資せず技術やノウハウを腐らせている中小企業に次々と出資しやりたいようにやらせた。

別に大企業が嫌いなわけじゃない。

恨んでいるわけでもない。

ただ彼らには展望が見えなかっただけだ。

ちゃんと一部の大企業には出資している。


ついでにどんなに技術を磨いたところで売れなければ意味がないとも思い、マーケティングのプロを雇ってみた。


そして気づけば今では高級アパートメントのオーナーなんてものをやっている。

社長たちに誘われてスポーツをやるようになったせいか体も最近では随分引き締まってきた。

私はたまたま賭け事で得たお金を他人に渡しただけだ。

それ以外は何もしていない。

それからと言うものの私はほとんどお金を使わず、株式優待だけで食っていける。

アパートメントのオーナーとしての収益もある。


だから私は働くことを放棄した。

エリートニート十神だ。

自宅警備員で何が悪い……あっ警備員はちゃんと雇ってあるので防犯上は大丈夫です。


これから浪費する一方だと思っていたが……どんどんお金が貯まる。

お金が巡らないことは良くない……という考えのもと取り敢えずパソコンの能力の限界に挑戦してくれと5社程に頼んで研究してもらった。

別に失敗しても良いからさ、ニートらしくハイエンドモデルのパソコンが欲しいじゃない。

もちろん画面は6個ほど設置する予定。む?こうなってくると画面も良いものが欲しいな。

さらに出資。せいぜい良いものを開発してくれよ。


ここでふと気づく……あれ?

そういえば最近ゲームも何もやってないな。

学生の時はやっていたものだけど。

相当ハマっていてそれで父さんに叱られたっけ。

ゲームも開発させようかなぁ……と思ったけどそれに回せるほどの手元のお金がないや。

銀行に預けてある分を一気に引き落とすと銀行の支店が潰れちゃいそうだし。


取り敢えずゲームを買おうと、パソコンを開く。このパソコンは優良大企業の東堂グループが発売しているノーマルスペックのパソコンだ。

東堂社長と仲良くなった時に貰ったローズゴールドバージョンの記念品というか限定品。

そんなパソコンを開くとメールが何件か来ていた。

普通の大企業からの出資の相談メールだ。

無視はよろしくないので見るが正直興味がない。

と言うか今私のお友達の社長さん達に頼んでいることとあまり変わらないから出資する必要を感じない。


「『お便りありがとうございます。慎重に検討を重ねましたが今回は貴社の貴意にはお答えすることが出来そうにありません。貴社への支援は出来そうにありませんが、貴社のより一層の繁栄をお祈り致します』っと」


……いつのまにかお祈りする立場になっていたのか。

実家を思い出す。寺を継いだらどうなっていたのかな。……いや、坊主は嫌だ。頭を丸めたくない。なるなら神官だ。頭フサフサがなぜ坊主には許されないんだ。


思い出のアルバム的な感じてパソコンを弄っていると昔のエントリーシートのデータが出てくる。


十神(とかみ)空神(くうが)18歳、高卒、資格なし、実績なし。


これで大企業に採用されなかったのは当たり前とも言えるのではないだろうかと今では思う。

それは完璧に私のせいだ。

そして名前がキラキラネームのであるのに少しばかりの憤りを覚える。

私自身でも初見ならそれをクーガとは読まないだろう。

まぁゼウスなんて読ませかたをされるよりは幾分かマシだが。


さて、ネットショッピングのお時間だ。

仮想通貨ならたくさん持ってるからななんでも買えちゃうぞ。

少し盛った。というか良くみたらネットショッピングのロゴに東堂グループのロゴが……どんだけ手広くやっているんだ。


ゲームの人気ランキングで見るとどうやら最近はVRゲームが流行っているらしい。

本体のお値段は……なんか安くない?

もともと医療機器って話だからもっと高いものかと……安全面が不安だ。

おっ61万円のカプセル型があるじゃん!これにしよう!高いから安全そう。即決です。


ソフトも結構充実してるなぁ。新作を買うか。


題名は『フリーライフ』


ん?……なぜだろう、クソゲー臭がする。


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