すべてあいせ
文章力がなくてすみません。
「たとえば、ほら、いままであつめてきたきのみすべてがよそにうばわれたとするだろ。そしたら、おれはそいつをとっちめておれがうばわれたぶんよりもおおくのきのみをようきゅうするな〜。」
随分と今日は頭の良い話をするもんだなぁ、と友達の言っていることに耳を傾ける。
「おまえだったらどうする?」
まあ、当然というような質問に少し考える。
「僕だったらそいつを殺すかな。」
「おまえ、こわいこというなよ〜。」
例えばの話だろ。何も本気で殺そうなんぞ思っちゃいない。比較的僕らは小さい動物だ。殺そうとする前に殺されてしまうだろう。
「でも、それがせいかいなのかもしれないな。」
「いや、正解なんてありはしないさ。それぞれ違った意見を持っているんだから。」
当たり前のことをさぞ大層に言う。
「かっこいいなあ…」
まあ、この反応をするよな。それを狙ってやっているんだから。本当、単純な奴。
「それよりさあ、久しぶりにドングリ池行かない?」
「いいね。さいきんいってなかったからねがいごといっぱいたまってるんだ。」
「お前よくそんなに願い事あるよな。」
「まあ、それがとりえだからね。」
「取り柄って言う程のもんか?」
「ねがいごとっていっぱいあったほうがたのしいじゃん?」
「そりゃあそうだけども…うーん、でも確かに願い事がいっぱいあるのはすごいことなのかもしれない。」
「でしょ!そうでしょ!」
こいつの顔は嬉々としていた。本当、面白い奴。
そんなやりとりをやってる内にドングリ池に着く。そこにはいつも通り、小さなコマドリがいた。コマドリは美しい歌を歌っていたが、こちらを見ると怯えて逃げてしまった。これもいつものことだが腑に落ちない。そんなに怖がらなくてもいいのに。
「おまえといっしょにくるといっつもにげちゃうよな〜。ひとりでくるときはそうでもないのに。きらわれてるんじゃね?」
「そうかもな。何とかして仲良くなりたいんだけど…」
これは相性の問題なのだろうか。それとも……
いや、一回面と向かって話し合ってみたら案外すんなりと仲良くなれるかもしれない。それを願おう。
「そういえばさいきんはドングリのりょうがへってきてるな。」
「お前が願い事多すぎるからじゃね。」
「それはないな。ドングリがそんなことでへるとはおもえないし、だいいちさいきんはいってもいないからおれがげんいんじゃない。」
妙なところで鋭いな。僕がこいつを舐めすぎなのかもしれない。
「じゃあ何が原因なんだろうな。」
こういう時は何か嫌な予感がする。少なくとも良い方向には事は進まない。すると茂みの奥からがさごそと何かが動く音がした。そちらを見てみるとよく見知った顔がこちらを覗かせていた。
ヘビだった。こいつは食いしん坊な奴だ。ドングリが減っているのはこいつの仕業か?疑いの目で見る。
すると、それを感じ取ったのか、こう言った。
「ナンだ、オレがクったとでもイいたいのか?」
うん、そう思ってるよ。ていうかさっきまでの会話聞いてたんだ。
「お前以外に誰がいるっていうんだ。」
「シッケイだな。オレはナニもしてないぜ。それにここにキたのもヒサしぶりだしな。」
「じゃあ、いったいだれが…」
あっ、お前もそう思ってたんだ。そう思うよな、普通。
「そのヘンのジジョウはクマがシってるんじゃないか?あいつここらヘンにスんでただろ。それにあいつドングリタべそうだし。」
そうだなあ…クマか。クマに会いに行くの面倒くさいな。
「どうする?今から行く?」
「そりゃあもちろん。いくにきまってるだろ?これはきんきゅうじたいだ。」
あまり緊急事態だとは思わないけど、最初っから行くということは分かっていた。
「じゃあ行くか。ヘビも疑ってごめんな。」
「まあ、イいってコトよ。」
ヘビに別れを告げ、クマの住み処に向けて歩みを進める。すると、道中に不審なものがぱらぱらと落ちていた。
「なんだこれ。何か色の着いた砂みたいなのが落ちてるけど。しかも、紫とか青とか色とりどりだな。」
そう眺めていると何故か頭がくらくらとして視界が歪む。慌ててそれから目を逸らすけど、気になるのでもう一度目を向けてみる。しかし、またもや頭がくらくらしてしまう。これは危険だと本能が感じたのかその場をすばやく隣の友達を置いて走り去ってしまった。
しばらく走っている内に冷静になってきて走るのを止める。ふと友達のことを思い出して走ってきた道をゆっくり歩いて戻っていく。
「なんで走り出してしまったんだろう。」
あの謎の砂には何かあるのだろうか。いくら考えても答えに辿り着くことが出来ないことを分かっているにも関わらず考え込んでしまう。
そうしている内に向こうも走って追い駆けてきていたのか案外早く合流する。
「もう、いきなりどうしたっていうんだよ。」
「ごめん。何か走りたくなったから…」
「へんなの。」
さっきのことは忘れよう。それより今はクマの所へ行ってドングリが減った原因を確認しよう。
再びクマの住み処に向かって歩きだす。けれども、あの事が気になって仕方がない。『どうして』その疑問だけが頭の中にいっぱいに詰まっていく。
どうすればこの状況から脱出できるんだ。どうすれば、どうすれば どうすれば、どうすればどうすれば……」
「おい、ほんとうにだいじょうぶか?」
その言葉でハッと我に帰る。
「ありがとう。ちょっと考え込んでただけ。別に大した事じゃない。」
「ほんとか?ぜったいだいじょうぶじゃなかっただろ。おまえむりすんじゃねえぞ。」
相変わらず優しいな。こういうところに惹かれて友達になったのかもしれない。いや、それはないか。小さい時から一緒だもんな。
生まれてから気付いた時には隣にこいつがいた。皆から避けられていた僕にとっては嬉しい唯一無二の存在だった。二匹とも親はいなかった。僕達はいつも一緒だった。最近は一匹のこともあるけど。
昔を愛でていると友達は不思議な顔で見てくる。
「きゅうににやけだしてきもちわるいな。」
やばっ、顔に出てたか。
「まあいいや。もうすぐクマんちにつくぞ。」
すると巨大な黒い物体が視界の隅に入ってきた。
「誰だい、こんな辺鄙な所にまで足を運ぶ暇人は。」
クマだ。こいつはなかなかの臆病者であまり他を寄せ付けさせない。
「用がないなら帰ってくれないか。」
「いや、さいきんドングリのかずがへってきたからどうしてかなとおもってクマにきいてみたらわかるんじゃないかというしだいです。」
と友達はへりくだった感じで尋ねる。クマはというと、今、正体を知ったのか、ああという感じだ。
「お前等だったか、リスとオオカミ。一瞬誰か解らなかったよ。」
「ごぶさたです。」
「こんにちは。お久しぶりです。」
クマはいつも僕のことをオオカミと呼ぶ。何故なのかは分からない。だって僕はリスなのだから。
「で何だったっけ。」
「ええと、このごろドングリのかずがへっているようなきがするんです。それはどうしてかなっていう。」
「うーん。それはちょっと解らないな。でも、最近虹色の砂が所々に落ちてるからそれと関係があるんじゃないかな。」
その言葉を聞いてはっと思い出した。あの砂にはやはり何かがあるようだ。
「ありがとうございます。こんどおれいさせてください。」
「いや、いいよ。全然何の情報も与えてないから。」
ていうか、何であんなに媚びたような態度を取るんだろう。何かあったのか?
クマと別れて、今度はオンボロ橋に行ってみることにした。オンボロ橋は名の通りぼろぼろで今にも崩れそうな橋だ。何でも100年前に架けられた橋らしく老朽化でこうなったのだと思う。
すると、そこにはちょうど橋を渡る姿が見えた。
「オラァ、ダレダコンナボロッチイハシタテタヤツハ。コンナモンオトシテヤルゼ。」
そう言っている奴はここいらでは有名な暴れん坊のアライグマだ。そんなことしたら自分も落ちるだろうに。
「オイ、ナンダナニミテンダ。」
あっ、こっちに気付いた。向かってくる。
「ナンダ、モンクアンノカ、ゴラァ。」
「あのー、さいきんにじいろのすながおちてるのってしってます?」
「アン?ニジイロノスナ?アァ、サッキミカケタナ。」
「本当か?」
「ホントウモナニモオマエタチモミタダロ?」
「見たけど…」
「それでそのにじいろのすながおちてるのとドングリのかずがへってきてるのがかんけいがあるっぽいんだけどなにかしってることってないですか?」
「ナイナ。」
「本当に何かないのか?ほんの些細なことでもいいからさ。」
「ソレナラジブンデカンガエルンダナ。」
嫌な返しだなと思っていたらアライグマは続けてこう言った。
「ソウイウコトナラキツネニキケバイイダロ。イマアイツネッコヒロバニイルシ。」
自分で考えろと言っておきながら何なんだろう、ツンデレなのか?
因みにさっき出てきた根っこ広場とは嘘を吐くと根っこに捕まると有名な場所だ。
なんかたらい回しにされてるような気がするが今度は何か有力な情報が得られるような感じがした。
アライグマの言葉をもとに根っこ広場へと向かって行く。着くと証言通りキツネが居た。
「何カアッタノデスカ?」
「いや、大したことではないんだけど気になることがあってね。」
「ソレハ何デスカ?」
「さいきんにじいろのすながおちてるでしょ?それはなんでなのかなっていうのと、それとドングリがへってきてるのになにかかんけいがあるのかなっていうのなんだけど、しってることある?」
「ソノコトナラ聞イタコトガアリマス。森ノ奥深クニ架カッテイルト言ワレテイル逆サ虹カラソノ虹色ノ砂ガ出テキテイルコトヲ。」
「逆さ虹って?」
「逆サ虹トイウノハ少シ昔ノコトニナルンデスケド、丁度貴方達ガ生マレタバカリノコトナンジャナイカシラ。
アレハ忘レモシナイ出来事デシタ。アノ日、私ガパートナート暮ラシテ丁度一年ガ経ッタ日、悲劇ガ起コリマシタ。
私ハソノ日ノ朝、イツモノヨウニパートナーヲ見送リマシタ。ソレガ最後ニナルトハ知ラズニ。
パートナーハイツマデ経ッテモ帰ッテ来マセンデシタ。不審ニ思ッタ私ハパートナーヲ探シニ行キマシタ。ココヤドングリ池、オンボロ橋、誰モガ行ク所ハクマナク探シタノデスガ何処ニモ居マセンデシタ。諦メカケタソノ時奥ノ方ニ何カガアルノガ見エマシタ。近寄ッテ見テミルトソレハリスノ死骸デシタ。顔ヲ上ゲルトソレハモウ見タクモナイ光景ガ広ガッテイタノデス。無数ノ死骸ガマルデ雑草ノヨウニアル光景。マサカトハ思イ少シ進ンデミタノデスガ予想ハ裏切ラレルコトハアリマセンデシタ。ソノ時デス、見タノハ、逆サ虹ヲ。アレ以来、ズット逆サ虹ハアノ場所ニ架カッタママ。亡クナッタ動物達ヲ嘲ウカノヨウニ。
ゴメンナサイネ、コンナ暗イ話シチャッテ。
マア、実際ニ行ッテミタラ何カ分カルンジャナイ?」
「ありがとうございます。」
教えられた通りに歩いていく。何故か凄く寂しく感じているのは果たして何の声なのか分からないが、今はただ隣を気にしながら向かっていく。
「今までありがとう。」
なんて言葉を言ってみる。
「なんだよ。おまえまさかしぬのか?」
「な訳ないけど今言っておかなきゃもう言う機会がないように思えて…」
「そっか、じゃあおれからもいままでありがとう。そしてこれからもよろしく。」
その後は二匹とも会話なく目的の場所まであと僅かの所にまで来た。
するとだんだん意識が遠のいていき、目の前が真っ暗になった。
ほうっと意識が戻ったときにはもう何が何だか分かっていた。
今なら全てを愛せられる気がした。
狼の周りには無数の死骸が落ちていた。
こんな作品を最後まで読んで下さってありがとうございました。