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君への手紙 ~LOCAL.STORY~

君は流山橋を知っているか

作者: まさかす

 この手紙を読んでいるという事は、私はこの世にいないという事でしょう。だから最後に手紙に書き留めて置きたいと思う。


 そしてこの手紙を君が読んでいると言う事は、流山橋の渋滞は解消したという事なのだろう。そう、千葉県の流山市と埼玉県の三郷市を繋ぐ、あの橋の渋滞が。


 私がこの手紙を書いている時、つまりは私がまだ生きていた時、流山橋の土日の夕方の渋滞といったらそれはもう酷いものだった。お盆休みや年末年始の高速道路の渋滞も酷いものだが、流山橋の土日の夕方渋滞といったらもう……筆舌に尽くし難い物だ。


 流山橋を中心に双方向2キロ程度の道のりが、凡そ1時間以上掛かるという事象が毎週繰り広げられる。数メートル進んでは10分停まるという状況が毎週繰り広げられる。それが休日の見慣れた光景と言える状況になっている。簡単に言えば「歩いたほうが早い」という事だ。

 

 そんな渋滞の中に巻き込まれると、私はエンジンを切って渋滞の中を過ごしたんだ。その時にはまだアイドリングストップなんて機能が車に付いていない時でね、自ら切っていたんだ。だが君達はそんな渋滞に合わずに三郷から流山へ、流山から三郷へと何の気兼ねもなく向かう事が出来るんだろうね。そうか、渋滞はもうないんだな。羨ましいよ。私も渡ってみたかったな。土日の夕方、流山橋を快適に、流れるように渡りたかったよ。

 

 どんな風に解決したんだろう? 橋を増やしたのかな? いや、単純に橋を増やせば解決できる物でも無い気がするから、きっと良いアイデアが出たんだろうね。生きている間に見たかったな。土日の夕方、流山橋の上を、快適に自動車が流れている様子を。





 100年以上前に書かれた手紙にはそんな事が書いてあった。誰が書いたのかも分からないが、白かったであろう紙は茶色く変色し、文字も滲んで判別が難しいほどであった。


 以前に歴史博物館で以って『自動車』と呼ばれる乗り物が展示されていたのを見た事がある。私自身が機械に興味が無い事もあってか自動車の仕組みは良く知らないが、ざっくり言うと油を燃やして走っていたらしい。


 面白い事に『自動車』と呼ばれているのに自動では無く、人間の操作が必要だったらしい。更にはその自動車で移動する人が沢山いると自動車が沢山連なる『渋滞』という現象が起きるとか。何度聞いても意味が分からん。昔の人は大変だったんだな。


 他にも『電車』なんて乗り物もあったらしい。


 それの殆どは電気を利用して動いていたらしいが、一部の電車は自動車と同じく油を燃やして動かしていたという事だ。その電車は「レール」と呼ばれる鋼鉄製の棒状の上を大きい箱が移動するという仕組みで、その箱の中にすし詰め状態で沢山の人が乗り込んで、あちこちに向かっていたらしい。そしてそのレールというのは固定されていたらしい。つまり、決まった場所にしか行けないという事だ。ほんとに昔の人は大変だったんだなと思う。


 更には『飛行機』なんて乗り物もあったようだ。

 

 これも油を燃やして推力を得て、大気を利用して浮かぶと言う物らしい。ただし、それに乗る為にはそれに乗る専用の場所まで自動車や電車に乗って移動する必要があると言う事で、場合によっては何時間も掛かるらしく……。つまり、乗り物に乗る為に乗り物に乗って、そこまで移動するという事をしていたらしい。


 今は人も物も街角のあちらこちらに置かれた物質転送装置で以って、地球上の何処にでも数秒で移動できるし、それが当り前の光景である。


 そうそう、私の家も数日前、最新型の家庭用物質転送装置を買っちゃいました。これは人も移動できる最新型なのでちょっと高かったけど、思わずボーナスで買ってしまった。今までは人間以外の転送装置しか持って無くて、自分が移動するためには家の外にわざわざ出て、街角の人体転送装置を利用していたけれど、これで家の中から直接、どこにでも転送移動出来るようになった訳だ。


 そんな今の生活が当たり前であり、自宅から直接転送移動が出来なかった事が不満だった事もあるけれど、自動車だの電車だので移動しなければならなかった昔の人達に比べたら、今は便利な時代と言う事だな。

2020年 04月24日 3版 誤字訂正他

2019年 07月20日 2版 少し改稿

2018年 11月22日 初版

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