1/10
第一話
「ほらごらん、これが宇宙さ」
小人が腕を一振りすると、墨を流したかのように、夜空が一段と暗くなった。いや、見方を変えれば、逆に明るくなったとも言えるかも知れない。
視覚の全てが光の点に埋め尽くされる。
背景の闇が濃くなったことで、星々の光が際立ったのだ。
わたしは、自分という存在が壮大な宇宙にひろがっていくような、不思議な感覚を覚えた。
「これが宇宙……」
「そうとも。僕の魔法で余計な光を消しているからね、本当はこんな風には見えない」
わたしは言葉を忘れて星空に見入った。
小人がなにやら小難しい話をしているけど、そんなのはどうでもいい。
思い描く。
小舟にのって星の海を進むわたし。
光の粒が、神々や動物たちの形をして語りかける。
けれどもそこは、虚ろな世界だった。
音もにおいも存在しない。
目を閉じれば星々は消え去り、暗闇が全てを支配する。




