〜猫の小説家、猫男爵の素顔に迫る〜後編
猫男爵「ノベルティみたいな…
雑誌の付録かおまけみたいな賞は
いらないよ、僕は」
インタビュアー「たしかにあなたは無冠の帝王として有名ですね」
猫男爵「僕は無宗教、神はいないと断じて言えるよ」
インタビュアー「ですが、あなたの作品には天使や悪魔…それに神など宗教的なものが
多く登場しますが?」
猫男爵「そう、作品を読めばすべてわかるさ」
インタビュアー「ゲホッゲホッゲホッ…ヒュー…ヒュー」
猫男爵「君はがんばりすぎだよ、喘息持ちだってね
帰りたまえ」
インタビュアー「大丈夫です…」
インタビュアーは喘息薬を吸引した
猫男爵「理解し合うことが全てではないと思ってる」
猫男爵は水を一杯差し出した
インタビュアー「しかし、あなたはインタビューがお好きですね?」
猫男爵「私はミーハーなんだよ、
例えば、好き、と思った瞬間に嫌いとも思っているだろうし
嫌いだと思った瞬間に好きだと感じているんだ」
インタビュアー「常に矛盾していると?」
猫男爵「…君は僕の作品だったら何が好き?お気に召すものがあればだけど」
インタビュアー「白のカラスと黒の鳩です」
猫男爵「なぜ?」
インタビュアー「唯一のラブストーリーで
唯一のハッピーエンドだからです」
猫男爵「そうかな?バッドエンドの暗い話ばかり書いていると?」
インタビュアー「違いますか?」
猫男爵「そうだね、サービスしようと思えばいくらでも書けるさ、
その、読みやすいものはね、つまり皆が言うところのハッピーエンドってやつ
だがそれでは本物の喜びから遠ざかってしまう
バッドエンドもまたしかりだよ
君の好物は何?」
インタビュアー「トマトです」
猫男爵「本当に?」
インタビュアー「…糖質制限で最近食べてませんが
バニラアイスです」
猫男爵「じゃあ毎日、毎食バニラアイスだったらどう?
嫌になる、違うかな?」
インタビュアー「…毎日」
猫男爵「?」
インタビュアー「毎日、毎食バニラアイスが食べたいです!!
女の子はみんなそうです!」
猫男爵「呆れたね、君とはこれ以上話したくないよ」
インタビュアー「そんな…ゲホッ…」
猫男爵「また日を改めるといい、
私はインタビューが好きらしいからね」
インタビュアー「それはインタビュアーとしてですか?
それともひとりの女として?」
猫男爵「難しいね」
ーふたりが後日デートしたのは
言うまでもありません
毎日、毎食向かい合いながら過ごすことになることもー
ーFinー
猫男爵については変な話なのですが、
自身の投影に近い部分があり、
特に前編を書く前なんかには
顔だけ猫になったような感覚に陥っていて、
それがきっかけで書き始めました
ポップをモットーに常日頃書いているのですが
少しは自分の苦悩している姿を書いてもいいかな?
と、ふと思い、
インタビュー ウィズ キャットライターを書きました
記録している限りでは約2年前に書き始めたものです
実は料理は暴力に似ているなと思っていて
この再加熱さえ拒む、ブルーベリーソースを温め直すシーン辺りまでが
非常につらかったです
書き上げて少し解放されるのかと思ったのですが
何かしら書き続けないとだめみたいですね
今でも落ち込むと猫男爵になってしまいます(笑)
少しでもお気に召していただければ幸いです