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交わる世界のリブート  作者: 田んぼのアイドル、スズメちゃん
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ニューギニア島攻防戦-1

 ニューギニア島に到着次第、作戦伝達を目的としたミーティーングが開かれた。

悠人たちキング島で訓練を行っていた訓練兵のほかにも、様々な訓練場で訓練を行っていた訓練兵が集められていた。

 作戦会議の内容は大きく分けて3つである。

1つ目は訓練兵1班に正規軍の兵士5名を追加し、1個分隊として作戦に当たること。

2つ目が前衛班、後衛班、補給班の3種類の班に分けられ、作戦を行うこと。ちなみに悠人たち2班は前衛班に配属された。

 3つ目は大まかな作戦概要であった。現在の防衛線の位置に前衛班を展開し、前衛班の援護及び支援を後衛班が行う。前衛班、後衛班問わず弾薬や糧食の補給を補給班が担当する、ということしか説明はなく。状況に応じて臨機応変に対応せよといったかなり適当なものであった。


 作戦会議の後は直ぐに同じ分隊となる正規兵との顔合わせとなった。

 2班に割り振られているテントに向かうと、1人の男性を中心として5名の兵士が待機していた。

「初めまして、2班の班長をやらせていただいている一ノ瀬哲也です。よろしくお願いします。」

 形式的ではあるが、哲也の挨拶に合わせて悠人たちが敬礼する。

「こちらこそ初めまして、君たち2班に配属されることになった君塚(きみづか)一等軍曹だ。君たちにとっては初の実戦だと思うが、あまり気負わずに自分にできることを精一杯やって欲しい。」

 君島軍曹は30代前半といった感じの男性だ。あまりいかついといった様子はなく、どちらかと言えば優しそうな印象を受ける。

「右から有野(ありの)上等兵、大宮(おおみや)一等兵、島村(しまむら)上等兵、滝川(たきがわ)伍長だ。」

 軍曹の紹介を受け他の4名が敬礼をする。

 有野上等兵と島村上等兵は20代半ばと思しき女性で、滝川伍長は20代後半の男性、大宮一等兵はあまり自分たちと年齢が変わらないように思える青年だ。

「明日には戦闘地域へ出発だから、できる限り今日のうちに打ち解けておくように。じゃないと、作戦中の情報伝達に支障をきたすかもしれんからな。わかったか?」

「「「はい。」」」

「では、少しの間だが自由行動だ。分からんことがあたら俺たち、先輩兵に何でも聞いてくれ。」

 時刻はもうじき19時を迎え、日没時間である。明日は早朝から作戦地域への移動であるため、早く就寝しなければならないが君島たちと交流を深めるために、簡易宿舎で和気あいあいとした雰囲気で雑談をしていた。


―・―・―・―・―・―・―


 翌朝、日の出とともに駐機場から大量の輸送機が飛び立った。

 なぜ夜間に移動をしなかったのか。それは、暗闇の中では蟲の発見が極めて困難であるためである。蟲たちはレーダーでは発見しにくいため、基本的には目視による発見に頼る必要がある。そのため、早朝に出発する必要があった。

 目的地はもちろん、現在の防衛線であるビンテュニ湾付近に建設されているベースキャンプである。

 輸送機の機内の中は自然と張り詰めた空気になっている。

 それは無理もない。訓練兵からすれば、初めての実戦であり、自分達の見える位置に先頭に使用するパワードスーツが置かれ、否応なく「これから戦闘である」ということを意識させる。

「どうした?緊張してるのか?」

 悠人にたまたま隣りの席にになった君島が話しかけてきた。

「お気遣い、恐れ入ります。やはり少し緊張しております。」

「そうかそうか。戦闘に行くのは怖いか?」

「・・・はい。」

「正直で何より。俺も初めての戦闘は怖かった。でもな、恐怖ってのは適度に感じてた方が冷静に行動できるんだ。だから恥じる必要はないぜ。」

「ありがとうございます。」

「それよりよ、お前らの班長の一ノ瀬だっけ?あいつは頼りになんのか?」

「それは・・・。どうでしょうか・・・。以前はとても頼りになる人物でした。しかし、今は・・・。」

「そうか・・・。だいたいわかった。」

 いきなり君島が声を潜める。

「あいつに班長が務まらないってなったら、お前が班長を変われ。」

「なぜでしょうか?」

「昨日話してみて、お前が一番班長に相応しいと思った。まぁ、これはあくまで俺個人の意見だ。だが、一応は考えておいてくれ。」

「了解しました。」

 悠人は君島の思いもよらない話によって悩むこととなってしまった。


 ベースキャンプに隣接した仮設駐機場に輸送機が到着したのは午前9時頃だった。

 仮設の駐機場は木を切り倒し、必要最低限の駐機場としての機能をもたせただけのものである。

 到着次第慌ただしく戦闘準備を始める。しかし、雑な整備や適当な補給作業は戦場で自分を殺すため、各自自分ができる中で最も早く作業した。

 悠人はパワードスーツを装着し、ヘヴィーライフルを装備する。ヘヴィーライフルの弾薬をパワードスーツの収納スペースに丁寧に納め、ヘヴィーライフルにアタッチメントのグレネードランチャーを装着する。

 このグレネードランチャーはカートリッジ式が採用されており、グレネードランチャーのマガジンも先と同じように、詰め込んでいく。

 ヘヴィーライフルをはじめとした銃火器では近接戦に心もとないため、予備を合わせパワードスーツ用の巨大なナイフを3本装備する。

 その後、パワードスーツに装備させる兵器とは別に、生身でも扱えるサイズの武器も装備する。

 アサルトライフルは使い慣れたブッシュマスターACRを使う。ブッシュマスターACRは行軍訓練の時にも装備していたものだ。ハンドガンはデザートイーグルを装備する。そして、サバイバルナイフを装備する。

 パワードスーツで使用するもの以外はあくまで予備武器である。そのため、持っていく弾の数は少なめだ。

 一通り自分の準備を終えた悠人はほかの班員を見渡す。

 みんな真剣に自分の愛機や武器の整備を行っており、とても士気が高いように思われた。

「お前ら、準備は終わったか?」

 悠人たちより一足先に準備を終わらせた君塚が、悠人に声をかけてくる。

「はい。遅くなって申し訳ありません。今終わりました。」

「いやいや、いいんだ。準備ってのは不足はあっても、やりすぎというのはない。それに、戦場じゃあ自分の命に責任を持てるのは自分だけだからな。」

 どうやら君島は悠人たち訓練兵が心配で見に来たようだ。

「お気遣いありがとうございます。皆の準備ももう少しかかると思われますので、もう暫しお待ちください。」

「わかった。全員の準備が完了し次第、一ノ瀬に俺たちを呼びに来るように言っておいてくれ。」

「はい。了解しました。」

 悠人の返事を聞き、君島は自分達の待機場所に戻っていった。


 数分後、訓練生全員の全員の準備が整い、出撃の時が来た。


 悠人たち訓練兵が担う役割は簡単に言うと『盾』の役割となる。

 ニューギニア島に侵攻してきている蟲や化け物は、ニューギニア島駐屯兵によって侵攻を食い止められている。そのため、上陸された島の西部の一帯しか占領されていない。それによって後退しているとはいえ、未だに最終防衛ラインは機能している。

 訓練兵たち増援部隊が贈られた最終目標はニューギニア島の蟲たち敵を殲滅し、人類の生存領域を死守することである。

 そのため、訓練兵たち増援部隊を中心として最終防衛ライン前に『盾』を展開する。『盾』は防衛ラインの前面に横一列に展開し、各部隊は遭遇する敵を各個撃破していく。

 展開した部隊はあくまで『盾』なので、基本的に各部隊の進軍速度を合わせなければならない。しかし、実際にはそううまくはいかない。そのため、前衛班がうち漏らし、突破されてしまった敵をたたくという仕事も後衛班が担う重要な役割である。

 前衛班は大きく分けて左翼、中央、右翼の3つの部隊に分けられる。左翼、中央、右翼の3つの部隊はそれぞれ装甲車などの重装甲の機械科部隊を中心として構成されており、この部隊には防衛線を設営する為の資材や工兵も同行する。その為、この機械科部隊は他の部隊はより人数や兵の練度も高い精鋭班で構成されている。


 悠人たちの2班は中央班の右端という位置に配置された。

 進軍開始の号令とともに作戦が開始された。作戦通りベースキャンプからさほど離れていない地点で直ぐに戦闘が行われ始めた。それは、悠人たち分隊も例外ではなく、作戦開始地点から約100mのところで巨大な蟻型の蟲と戦闘が始まった。

「目標の総数は5だ。この数なら俺たちだけで殺れるな。滝川、大宮は俺と一緒に来い。有野、島村はいつもと同じように援護を頼むぞ。訓練兵たちは待機だ。」

「「「「了解!!」」」」

「「「「分かりました。」」」」

 君島は目視で蟲を確認するなり即座に班員の指示を出し、君島、滝川、大宮の3人が突撃、有野、島村の2人は3人を援護すべく狙撃体制をとる。

 突撃した3人のうち滝川と大宮はヘヴィーライフルによる銃撃で君島はマチェットを使用して蟲の足を砕き、君島を襲おうとする蟲を有野と島村が狙撃を行い妨害する。

 パワードスーツの強靭な腕力から繰り出されるマチェットの一撃は容赦なく蟲の甲殻を砕き、ヘヴィーライフルから打ち出される12.7mm弾は甲殻をたやすく貫通し蟲を絶命させる。

 その結果、見事なチームワークによって5体の蟲はあっという間に倒してしまった。

「やっぱり、本物の兵士は凄いな・・・。俺たちとはやっぱり違いうな・・・。」

 先輩兵たちの見事なチームワークを目にし、正樹が感嘆の声を上げる。

「俺たちもあれぐらい出来るようにならないとな。まず俺たちは訓練通りのことが出来るように頑張ろう。そうすれば少なくとも軍曹たちの足手まといにはならないはずだ。」

 正樹の言葉に同感しつつ、悠人は自分たちがやらなければいけないことを確認した。

「一通り片付いたな。前進するぞ。」

 君島の号令がかかり、進軍が再開された。


 作戦が始まってどれぐらいたっただろうか。ベースキャンプから距離が離れるほど必然的に敵との遭遇回数が増えてきた。

 遭遇する敵は巨大蟻がほとんどで、この種類はVR訓練で一番多くシミュレーションしたタイプの敵である。そのため、不測の事態に備え君島達正規兵は周囲の警戒を行い、巨大蟻との戦闘は訓練兵たちが行っていた。

「オラアアアアァァァ!!」

 パワードスーツの拳部分に強化パーツを装着し、パンチ力を強化した正樹が蟻の脚部を殴り、次々に破壊する。そして、動きの止まった蟻を香蓮がヘヴィーライフルでとどめを刺す。

 この2人のように、みんな訓練でいつも行っているような戦闘方法を使い、確実に眼前の敵を倒している。

 しかし、例外というのはどこにでも存在している。その中でもこの2班は、例外の4人と他の班よりも多かった。

 悠人と麗奈は両手にナイフを装備し、次々に素早く蟲の脚部などの関節部分を切りつけて行っていた。それによって動きを止めた蟲にあまりVR訓練で成績の良くない優華と晴馬がとどめを刺していく。

 もとより、悠人と麗奈はパワードスーツを用いた近接格闘が得意で、なおかつナイフを使用した戦闘を得意としていた。パワードスーツでの格闘技能は君島曰く、正規兵としても十分やっていけるほどであるとのことだ。

 そのため、近接戦闘が苦手な人間のカバーを得意な人間が行うことによって、効率良く敵を撃破できていた。

 次に大悟はベースキャンプの武器庫にたまたま転がっていた、巨大なウォーピックを装備している。通常、こういった取り回しが悪い武器は好まれない。しかし、大悟はこの巨大なウォーピックを器用に振り回し、蟲の頭や脚部を殴打する。

 巨大なウォーピックの重量とパワードスーツの強靭なパワーアシストによって繰り出される強力な一撃は、まさに一撃必殺と呼ぶにふさわしい威力を誇り、一撃で巨大な蟻の頭部を吹き飛ばすほどであった。

 2班は初の実戦を前にかなりまとまりのある班になっていた。それによって互いに互いをカバーしあい、1人の負傷者も出さずにここまで来ていた。これは強い信頼関係が結ばれている結果とも言える。

 しかし、哲也は違った。最後の例外が哲也である。

 哲也は一切前線に立とうとせず、物陰に隠れており戦闘意欲の欠片すら見えない。

 初の戦闘とはいえ、ここまで戦意喪失している者は、ある意味で例外と言っても差し支えないだろう。

 それによって君島たち正規兵たちから向けられる視線はとても冷ややかなものになっていた。


―・―・―・―・―・―・―


 戦闘が一段落し、補給班からの補給を待つ間に小休止することとなった。

 皆思い思いに休息をとっているが、いつ敵の襲撃があるかわからないためパワードスーツを装着したままである。

 悠人は休息をとりながら、先程まで完全に戦意喪失していた哲也が気になり、目を向けた。

 哲也は怯えた小動物のようになっており、一目でもう戦力にはならないと分かるほどであった。しかし、それではここを生き延びることは出来ない。ここは人類の領域ではなく、未だ敵地と言ってもよい場所なのだ。

 少しでも哲也を励まそうと、悠人が立ち上がった時、

「烏野、ちょっといいか?大事な話がある。」

 君島に声をかけられた。君島の顔は神妙なものであり、とても重要な案件があるようだ。

「はい。大丈夫です。」

 君島が何について話そうとしているか、悠人はなんとなくわかったため、承諾の返事を返した。

「まぁ、わかってると思うが、話ってのは機内でも話したように、お前に班長を代わってほしいってことだ。一ノ瀬じゃあ、班長は絶対に務まらない・・・。」

「やはりですか・・・。班長の件はお受けしても問題ありませんが、どうして自分なのでしょうか?この2班には佐々木をはじめとして優秀な者が多数おります。にも関わらず、どうして自分なのでしょうか?」

「それは、昨日の夜に2班の全員と少しずつ話したんだ。その中で俺は烏野が一番班長に向いていると思った。それに加えてさっきの戦闘を見たが、実力的にも申し分ないしな。」

「・・・。了解しました。班長の仕事、お受けさけていただきます。」

 悠人は少し考えた後、班長を変わることを承諾し、君島に敬礼で返した。

「総員傾聴!これより2班の班長は一ノ瀬に代わり烏野が引き継ぐことになった。これに対し意義や質問等がある奴は手を上げろ。」

 君島の言葉に対して質問や反論を意味する挙手は無かった。そして、哲也は今自分が持つ唯一のアイデンティティである班長という地位を奪われ、半ば絶望していた。


 悠人が班長として君島達とこれからの予定などについての問い合わせを終えて班員たちのもとへ帰ると、麗奈が駆け寄ってきた。

「私はあなたが班長の仕事をするにあたって、出来得る限りのサポートは何でもするから、何でも言ってほしい。」

「わかった。その時は頼むよ。」

 麗奈は少しうれしそうにする。そして、何かを言おうとした時、

「おい!全員集まってくれ!!」

 突如君島が声を上げる。

 分隊の全員が分隊長の君島のもとに集まると、君島は苦虫を嚙み潰したよう表情をしながら、重い口を開く。

「これから俺達は中央班の機械科部隊へ増援に行くことになった。補給が完了次第、すぐに移動する必要がある。」

 これに対して島村が疑問を問う。

「確か、機械科部隊には精鋭部隊が配属されていると記憶しています。にも関わらず、何があったのですか?」

「どうも、状況はよくわからないんだが・・・。どうやら、中央班機械科部隊に壊滅的な損害が出たらしい。」

「そんな・・・。」

 君島の話した信じがたい内容に、班内からも悲痛な声が聞こえた。

「現段階で損害が一番少ない上に急行できる分隊が俺たちらしい。どうやら俺たちは貧乏くじだな。どんな奴がが出るかわからない、全員の心準備をしておいてくれ。」


 更に危険な所へ行かなければならないが、自分たちにできることは最善を尽くして戦うことだけである。

 悠人は決意を固め、こぶしを握り締めた。

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