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魔王は働きたくない  作者: 宮島闇継
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第五話:これが私の全力全開!




 人間たちは焦っていた。魔族を見つけて被害なく魔王を捕獲。ここまでは完璧。パーフェクトだ、オルター。

 しかし、それからが問題だった。

 魔王を捕らえれば後は情に厚い魔族は勝手に全面降伏するだろうと考えていた。実際その認識は間違っていない。特に魔族の長たる魔王などは顕著で一族の為に城を建設するほどだ。勿論自分のパーソナルスペース確保が第一ではあるわけだが。

 とにかく、人間の予定では魔王を手にした時点で勝利目前。後は煮るなり焼くなり好きなようにとなるはずだったのだが……

「先遣部隊が全滅した、だと……?」

「は、はい……」

 沈黙。

「後方支援隊も半壊で生き延びたのは一握り……だと?」

「え、ええ……」

 静寂。

「あえりんだろう! 魔王は我らの手にあるのだ! なぜやつらは降伏しない!?」

 爆発。

「再三に渡り魔族たちに伝えましたが一切関心を持たず……むしろ、嬉々として反撃してきていたような……」

「奴らは自分たちの王に対する忠義はないのか!?」

 ここは、会議室。軍の上層部が集いあれやこれやと議論を交わしているがこれほど荒れることは極々稀だ。

「ええい、魔王への拷問は一体どうなっている!? 何か聞き出せたのか!?」

「そ、それが……」




「うーん、囚われの王も飽きたな」

 こちら牢獄。絶賛囚われ中の魔王である。何もしない寝ているだけでいい時間というのは甘美ではあるのだが浸かりっぱなしはさすがに飽きるものだ。

 代わる代わる獄卒があれやこれやと拷問?らしきことをしようとしてくるわけだが……

「おい、いい加減そこから出てこい!」

 言いながら獄卒が熱した鉄棒を顔に押し付けてくる。無駄と分かっているのにご苦労なことだとほとほと思う。

 だって、たかだか数百、数千度の熱さが魔王の理不尽シールド(今名付けた)を貫けるわけもなく、むしろ不可視の理不尽シールドに触れた先から鉄棒の方が溶け消えていく始末。獄卒からしたら魔王を殴ったはずが武器が逆に使い物にならなくなるという理不尽!

 更に極めつけは魔王の身体を覆っているKOTATSU。牢獄の寒さに耐えきれずに魔王の召喚したKOTATSUにくるまりKOTATSUMURI魔王と化した圧倒的防御力に手も足でない獄卒たち。中はふんわり暖かく、外は絶壁のKOTATSUの前には例えドラゴンだろうと誘惑に耐えきれずKOTATSUにINする自信が魔王にはある。

 しかし、そこまでの防御力を誇りながらも魔王がなぜ逃げないかと言えば至極簡単。

 手足に首つけられた拘束具が外せないからだ。寝転べる程度の緩みがあるので多少の動きづらさを感じるもののそれ以上の不便を感じないのだが、如何せんこの魔王の筋力値は人間の女性並か下手したら子供レベル。こんな見るからに硬そうな鉄輪など腕力でどうにかできるわけもなく試す前から諦めている。

「はあ、誰か向かいにきてくれないかなー」

 助け、なんて甘っちょろい事に期待なんてしていない。あるとすれば人間滅ぼしたついでにその辺に魔王が転がってたんで連れて帰るか、ぐらいの薄情さしかないだろう。

 それならまあ、それでも構わない、と魔王は思っている。この際人間がどうなろうともう知っちゃこっちゃない。こっちは不可侵を貫いた。野蛮にも火蓋をおろしたのは人間。後は野となれ山となれ。

 

 ただ、


 ただ、


「暇だなあー、ゲームもなんもないもんなー、寝あきたなー」


 冷たい牢獄。

 震える獄卒。

 ぬくぬくと暖まり怠惰の限りを尽くす魔王。

 ある意味、平和な世界がそこにはあった。


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