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魔王は働きたくない  作者: 宮島闇継
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第0.5話:過去語り




 私は魔王。名はない。

 産まれたその時から魔王であり、死ぬまでそうあり続けることが求められている。誰の都合かと言えばそれはもう人間様の都合だ。


 彼らが共通の敵を求めたから我々はその槍玉にされた。そうして一方的に攻められたから反撃したらその揚げ足に尾鰭から角になんなら翼まで授けて広められた『魔王軍』による世界侵略という覇道。


 いやいやいや。『魔王軍』ってなんぞや、と問いたい。たかだか百人もいない魔族の集落が軍って。少数精鋭にもほどがあるだろ! とツッコミたい。

 その当時の魔王である私の父のありのままの談であるが、

「俺は交渉人を名乗る人間と笑顔で交渉成立の握手を交わしたと思ったらいきなりその人間が爆発して死んで俺は悪徳非道の魔王になっていた。何を言っているかわからねーと思うが俺も何が起こったからわからなかった。頭がどうにかなりそうだった……デスノートとかキラークイーンだとかそんな少年漫画的なもんじゃあ、断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

 と、長々と言っていた。意味がわからない。

 この談からわかる通り中々残念な父は私が産まれて物心ついたと同時に隠居するとか言い出して悠々自適な暮らしを送っている。

 その結果何が起こったかと言えば人間による一斉攻勢だ。今にして思えばこの攻勢の失敗がなければ彼らがこれほどまでに私を討つ事にてこずるような事はなかったのだろう。


 だが、彼らは失敗した。魔王軍に甚大な被害を与えることには成功したが、私を逃した。

 それは幼い私には壮絶なトラウマを植え付け今現在の引きこもり体質を産んだのもこれが原因だろう。だから私は悪くない。

 それにいいこともあった。それまで地上の森の中で生活していたわけだが、行く場所がないから地下でもぐらのような暮らしを強要されたが、案外快適だった。

 地上のような激しい寒暖もないので暮らしやすい。更に下に下にと掘り進めば大空洞へと通じておりそこには見たことない魔物が生息していたのだ。

 恐らく何千年も昔から存在したであろうその時が止まった場所はまさに私達魔族にとっての楽園だった。

 まず人間がこない。

 恐らくどこかから地上に通じているのだろうが、この地下深くの――後にダンジョンと名付けた――空洞はとても日帰りでこれるような場所ではない。踏破しようものなら数年かかるし自給自足もままならない。

 ましてやここに生息する魔物は地上に存在するものに比べて圧倒的にでかい。でかさはパワー。パワーはそれすなわち危険度だ。

 脆弱な人間たちにとって当たれば確殺の魔物など関わらないのが一番に違いないのだ。

 次に、そんな危険極まりない魔物たちだが魔族に対して、一部の例外を除いて敵意を向けてこない、という古くからの認識が通じるのが何より楽園と言える要因だ。

 地上においてはそれが原因で魔族、は危険。魔物たちを先導し人間を滅ぼすと言われたものだが、その人間が足を踏み入れない土地においてならその認識が不利益を被ることはない。

 

 こうして魔族は人間に干渉されることなく、平和に細々と長閑に暮らしたのでした。


                                     


                                       おしまい。








 と、終われたらどんなによかったか。


 十年。平和に静かに魔物と共存してたらまた来たよ。っていうかどこまで追いかけてくるんだよ。


 人間って本当にしつこい。


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