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魔王は働きたくない  作者: 宮島闇継
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第十一話:魔王と学ぶ楽しい冒険




「はい、右手をご覧くださーい。あれがかの有名なスライムさんです。正直どうやって発生してるかも謎の不思議生物ですが雑食にして直接呼吸器を塞いで窒息死させるというえげつない戦法をとってくる魔物さんです。知性もなくただ食欲により行動しているので、お腹が減っていなければ襲ってくることもありませーん。でも、殴られたら当然怒って反撃してきまーす」

 ところどころ間延びした説明をする魔王。そんな彼女とアインがいるのは和国から出てちょっと歩いた草原。距離にしてざっざっざと三歩歩いたようなところ。

 理由としては魔王によって強制的に冒険者登録させられたアインのお仕事のためだ。和国近辺で大量発生しているスライムの撃退。

 なんてことはない初心者冒険者向けのクエストだ。

 新米冒険者のアインといえど元軍属。最低限の知識、戦闘能力は身に着けているつもりだが、そんなもの冒険者社会には関係ない。

 むしろ、勇者に憧れて、なんて理由で冒険者を目指していない限り冒険者に身をやつすものの大半が元軍人や傭兵だ。

「スライムは我が国にもいたがこちらのスライムは青いんだな」

「ああ、スライムは種類が豊富なのが特徴だからね。一説ではオレンジ色はメス、青色はオスとか聞いたけどそもそも性別とかあったんだ!? ってレベルだしね。あとたまに緑色のもいるけどあれは毒もってるから要注意」

「それぐらい知っている。しかし、なんで魔王がついてきているんだ? これぐらいの相手俺一人でも余裕だろう」

「ちっちち、わかってないなー。この魔王様の力ってのを君はなんも分かってない」

 ふっふーん、と胸をそり返し、なにやら詠唱を開始する魔王。

「あーえー、なんだっけか……力よ集え? いや、収束せよ? んー、まあいいや、ヤサイマシマシカラメマシアブラスクナメニンニク」

 見目麗しい少女が謎の呪文を唱えながら意味の分からないポーズをとるのはただただシュールだった。

 信じられないかもしれないけど、あれ魔王なんだぜ?

 しかし、魔王がポーズと呪文を唱えた途端アインは体に変化を感じる。過去に何度か覚えのある力が溢れる感覚。

「これは……バフか!」

「私ほどになれば多種多様千差万別の魔法から呪いまでどんとこいなのだよ。とりあえず経験値アップに攻撃力マシマシな感じで色々かけておいたからスライムくらいなら一撃で倒せるでしょ! さあ、じゃんじゃん狩ってじゃんじゃん稼いで私を楽させてね!」

 それじゃ! とびしっと敬礼して魔王は姿を消す。やることやったから宿に帰っていったのだろう。

 アインにしてみればスライムぐらいにバフなどなくても問題ないのだがあれば楽なことには変わりない。

 なんだかんだと魔王はあれで過保護なのか? 魔王に渡された装備一式も新米冒険者が持つには性能過多の品ばかりだし。

 まあいい。今や自分も何の因果か世捨て人。魔王の奴隷なのか眷属なのか召使なのかはたまた魔王を打ち倒す勇者なのかわからん立場。

 深く考えず楽しまねば損、か。

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