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0話:魔王
産まれた時から魔王になることは決まっていた。魔王の第一子として産まれ、過分な能力を持ち、現魔王を超えるとまで言われたその才能。
隠居した魔王を含め、全ての魔王軍はこの先の未来に希望を見た。例え、自分が勇者にやられる日がこようと何の憂いもない。
なぜなら、自分たちには魔王様がついているのだから。いかに女神に愛され、仲間に恵まれ、民に親しまれる勇者であろうと圧倒的な力の前にはただただ屈する他ないのだから。
さあ、世界を我らがものに! 魔族が世界を統べる時がついに訪れるのだ!
今こそ魔王軍にとっての最高の盛り上がりと勢いを得ている。後は魔王が指示を下すだけ。それだけで喜んで命を弾にして飛んでいく。
そんな強い思いを持つ魔王軍。
しかし、当の魔王本人は、
「え、魔王城から出て、戦う? いや、無理無理。こっちは冬イベ消化すんのに忙しいんだよ!」
全く持って世界を統べるやる気を持ち合わせていなかった。