死んだはずの幼なじみを救えました②
送り主の名前を見て半分恐怖と半分何かに期待しつつ俺はメールを確認する。
件名は一言「ヤバイ」とだけ書いてあって、俺がメールを開こうとすると急に電話がかかってきて、俺は飛び上がって反射的に通話ボタンを押してしまう。
「う、うおおぉう。どどど、どうした!?」
「……何その反応。ちょっとビビりすぎでしょ。私だよ」
俺の反応の奇異さに軽く引いているサエ。だが驚いているのは俺の方である。
「ああぁ、あぁ、お前だよな。そりゃそうだよな。着信画面にお前の名前あったからなうん」
「はぁ……全くどうなってるっていうの本当に」
深いため息をつく電話の向こうのサエは妙に考え込んでいるように感じた。
「な、何かあったのか?」
「はぁ?何かあったもなにもトオル昨日のこと忘れたの?」
昨日……。俺は昨日あったことを思い出そうとするがなぜか昨日の記憶が非常に曖昧なのだ。
確か昨日も仕事の日だったし、昨日はいつもどおり会社から帰っていつもどおり食事をしてそのまま……。
そこでいや、違う。と何かが告げる、昨日もこうやってサエと話したと告げる自分がいるのだ。話した内容などは不明確だが……。
「ちょっとマジで忘れたの?昨日トオルが教えてくれたんじゃん、今夜うちで火事が起こるとか、優人を助けに行っちゃダメだとか」
そうだったのか……?昨日そんな話をしたのか?俺は?
「ま、まぁあの予言?かなんか知らないけど、まぁそれのおかげで優人もおばあちゃんも、それに私も助かったというか……。あとで消防士さんの人に聞いたんだけど、あの状態で助けに行ったりしたらなんか爆発が起きたりしてすっごく危なくてほぼ助からなかったって言っててね……」
サエの話をそうだったのか、と聞きつつなぜかさっきから自分の中で「そんなことはもう知ってる」といっている自分が居ることに俺は気づく。
「まぁとにかくトオルのおかげで助かったってことみたいだから!その、ありがとね!」
誤魔化しつつもそのように素直にお礼を言うサエの言葉で俺は昨日の記憶が完全に戻ったわけではないものの、なんとか我に戻る。
「いや、別に……当然だろ」
「当然じゃないよ!……だって、トオルすごいよ。なんで今夜火事が起こるとかわかったの?しかもどうすれば助かるかまで……。ひょっとして占いでも始めた?」
「い、いやそういうんじゃなくってだなぁ」
「ふーん、でもさトオル、あなた何か隠してるよね。話し方でわかるよ?」
「い、いやなぁ……」
「ねぇねぇ占いとかやってるならさ、もっといろいろ教えてよ!面白そう!」
なんだか昨日今日はずいぶん昔のことを思い出す事項が多くなった気がする。サエがこのようなオカルトとか占いとかに興味があるのもその一つだ。昔はよく社の前でこっくりさんとかやっていたもので、サエがしきりに俺をからかうために俺の好きな人を聞き出そうと必死になっていたことを思い出す。
「ねぇ!どうやって火事のことわかったの?いい加減教えてよー」
「わかったよ」
この状態のサエは一旦食いついたら離れない。この興味津々のサエを相手にどうやらこれ以上隠し通すのは不可能だと感じて俺は本当のことをいうことにした。
「占いとかじゃないんだが、確突拍子もない話だってのは間違いない。だから心して聞けよ」
「……わかった」
スマホの向こうから唾を飲み込むような声が聞こえるような気がして俺まで緊張してくる。
「俺はサエから見ると未来の俺なんだ」
「……未来のトオル?」
「あぁ、どういう原理か全くわからないんだがな?ただ、俺とお前は同い年のはずだけど、俺は今三十二歳でお前は十八歳だ。だからどういうわけか、十五年前のサエと十五年後の俺がなぜか電話で通じてるってことだ。だからお前の家が火事になることも、それに巻き込まれてお前が……その死んでしまうかもしれないってことも知ってたし回避する方法もわかってたってわけだ」
「……」
先程まであんなに騒がしかった受話器の向こうが急に静まり返る。無理もない。あらかじめ断っていたとは言えあまりに突拍子もない話だ。正直俺も何が起こっているのか完全に把握しているわけではない。
だが、どういうわけだかこの話を説明している間に俺の昨日起こったことの記憶は完全に戻りつつあった。




