死んだ幼なじみからメールが来ました⑤
十五年前の明日六月三日。その日は俺にとって最悪の一日となった。
「サエが……死んだって?嘘……だよな?」
老いた母からの電話に俺は俺は思わずそう聞き返した。
「つい二か月前は……、あんなに元気だったじゃねぇか。お、俺三日前にもあいつと電話したんだぞ?――は?火事で?弟を、優人を助けようとして……?」
絹江からの電話によれば六月三日の深夜一時頃。冴島家から火の手が上がっているのが発見された。出火の原因は未だに分かっていない。
家にはサエの祖母、静子とサエ、そして優人が住んでいたが、幸い静子とサエはすぐに火事に気づき、外に避難していた。
だがここでサエが優人が見当たらないことに気がつく。
「婆ちゃんはここにおって!あたし優人探さんと!」
静子が止めるのも聞かず母屋へと飛び込み、ドアを開けた時だった。
「弟さんを助けようとして家に戻ったものの火災による爆発に巻き込まれたって新聞に書いてあったわね。可哀想に……」
「しかもその弟さんは外の倉庫に隠れていて無事だったとか……」
「十八歳だったかしら。まだまだこれからだっていうのに……」
地域の斎場の中は重苦しい雰囲気に包まれている。普段は七十とか八十とかを超えたじいちゃんかあるいはばあちゃんの顔が飾られる場所も今はサエの顔が飾ってあり、この場にいる誰もがこの若い女性の死を悼んでいた。
「おい、おいこら!ちょっと聞いてんの!?フッ!」
受話器の向こうで非常に不機嫌な声が響く。いや、これは不機嫌というよりも怒っているという方が近い。鼻を鳴らすのは彼女が激怒している時の癖である。
それよりも俺には先程から違和感を感じていたことがあり、それを確かめたかった。
「なぁサエ落ち着いて聞いてくれ。お前今何歳なんだ?」
「はぁ?何歳もなにもトオルと私は同級生じゃん」
「いいから!」
知らぬ間に声を荒らげていた。それに圧倒されたのかサエは一瞬黙りこむ。が、すぐに
「十八歳、だけど?」
と答える。
(やっぱりか……)
受話器の向こうのサエの息遣い。そして自分の心臓の鼓動のみが聞こえるほどに静かな部屋で俺は深呼吸をして気を静めた。
「いいかサエ。これから言うことをよく聞いてくれ、今夜お前の家で火事が起きる」
「は?え?ちょっと、トオル?」
「お前と静子ばあちゃんは逃げることに成功するが、多分優人だけが見つからずにお前は家に戻ろうとするはずだ」
「トオル何言ってんの……?」
「だがな、サエ。家に戻っちゃダメだ。絶対にだ!優人は無事でいるから。家に戻るのだけは――!」
わけのわからないことを必死に訴える友人の都合に全く構わない電話が電話を切る。
「あれ?もしもし?もしもーし」
つい先日泣いて頼んで親に買ってもらった手元の携帯電話からは残念ながら、電話の切れた音しかしない。
「かけ直したほうがいいのかな」
二か月前、新生活を始めるなどといって東京へと行ってしまった三軒隣の友人。彼は必死で私に何かを伝えようとしていた。
なんか火事がどうとか、優人がなんとかとか。言っていることの意味はよくわからなかったのだが、何やら必死だった。東京に行って少し疲れているのだろうか。
「今度会いに行っちゃおうかなぁ」
そう考え横になると、先ほどは少しひどい言い方もしてしまったなと反省する。明日言いすぎてごめんとでもメールを打っておくか。東京に行ったら少し飯とか作ってやったりもして……。
思考と睡眠に同時に頭を使いつつ私は深い眠りに落ちていくのだった。




