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死んだ幼なじみからメールが来ました③

 いろいろと混乱する頭を必死に整理してまず最初に思いついたこと。

 それは「話したい」ということであった。まずは何より話をしたい、声を聞きたい。サエはCメールを使っている。今の混乱した状態でメールができるのであれば電話だって……という発想が生まれたのは幸運である。光の速さで通話ボタンを押し、半ば祈るような気持ちでつながってくれと受話器に耳を押し当てると確かに発信音が聞こえた。

 それも長くは続かず、すぐに聞き慣れたような、しかし非常に久しぶりで安心する声が聞こえる。


「はい、もしもしー。どかしたの?」

 夢なら覚めないでくれとこれほどまでに思ったことはない。受話器の向こうに彼女がいるのだ。

「……ぁ」

「ちょっとーどしたの?あー、さては早くもホームシックかぁ?このサエちゃんの声が恋しくなっちゃった?」

「……く」

 正直我慢の限界を通り越していた。十五年間一滴も出なかった涙が頬を伝う。なんとかバレないように受話器から顔を離して声を押し殺すように泣いていた。いろいろと言いたいことはあったはずなのにいざ声を聞いてしまうと言葉よりも感情が溢れてしまう。

 溢れすぎて軽く咳き込み、受話器に再度顔を当てる。

「ちょっとー?もしもし?本当に大丈夫?問題発生?」

「いや、問題っていうか……」

 問題といえば大アリなのであるが、何が問題なのかいざ本人を目の前にするとどう言葉にすればいいのか迷う。とにかく迷って迷って口にした言葉は最悪の言葉であった。

「お、お前なんで生きてるんだよ!」

「……は?」

 言ってしまってから「しまった」と思った。よりにもよって最悪の言葉をかけてしまった。

「あ、えと。ごめ……」

「いきなり電話かけてきてなにそれ。最悪」

「ち、違う!わけがあって……」

「どんなわけ?」

「そ、それは、えっと……」

 今度こそは本当に言葉を選ばなければいけない、でないと受話器の向こう側にいる幼なじみは電話を切ってしまうだろう。もし切ってしまえば……二度と電話ができなかったら……。

「すまん、とにかく嬉しくて……」

「え?」

 しばしの沈黙。

「あっはっはっは!ちょっとなんなの一体ー」

 音が割れんばかりに声高に笑うサエ。そういえばサエはこうやってよく笑うやつだった。


「なんか今日のトオル変だよ」

 パニックになる俺と対照的に冷静にサエにこのように返されると、俺の方までも冷静になり、とりあえず事態をつかまなければいけないことを悟る。

「すまん、サエ。確認だがお前は俺の幼なじみの冴島カナエ、だよな?」

「へ?んまぁーそうですよー。私はあなたの家の三軒となりの冴島カナエですよー」

「なぁ、お前今どこにいるんだ?」

「どこって、今家だけど?」

「今から会いにいく」

「へ?」

 まだこの時期日は高いとはいえあたりは暗くなってきている。だが、俺はサエの家なら目をつぶっていても到着できる自信があった。

(もしかして俺は長い悪夢を見ていただけなのでは……?)

 確かに俺が今話している相手は十五年前に死んだはずのサエであった。その本人が今家にいるという。悪夢から覚めたなら行かなくては――。

「会うったって、だっていまトオル――」

 未だに声がするスマホを投げ捨てて、俺は走った。

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