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第三話 彼女の正体

 この屋敷はとにかく敷地が広い。

 敷地内には自然的なもので言うと、ちょっとした林から小川、池など様々なものが存在する。

 また、建造物としては居住スペースのほかに、ソレイル教の教会と訓練場がある。

 教会はハルカス家が教会とかなり親しい関係にあるからであり、訓練場はハルカス家の血筋からしばしばでる、武や魔法に優れた者が、教会・国へと身をささげ国家の軍を引っ張る存在として、いわば『勇者』として世に出るために訓練を行うそんな場所である。

 そして、セレナは武と魔法、両方の面において優れた能力を発揮し、日の半分近くをこの訓練場で過ごす事になっていた。

 幸か不幸か、彼女は本来ならばその片方しか行われないであろう訓練を二つとも受けても耐えることができるほどに精神力が強かった。

 いや、その言い方は少々おかしかったかもしれない。

 何故なら、彼女の周りには見方は居らず、彼女にはその訓練に耐えるより他の方法はなかったのだから。


 さて、彼と彼女の物語に話を戻そう。

 二人はあれから一昨日、昨日と共にお昼ご飯を食べていた。

 まだお互いがどういう関係であるかということさえも知らないのに、二人はもう完全に打ち解けあい、まるで子供の頃から一緒に育てられてきた幼馴染のように二人は楽しそうに会話をしていた。

 まだ二人がであって、一緒にいる時間は三時間程度でしかないというのに。

 これがいわゆる、運命の出会いというものなのだろうか。

 二人とも幼い頃から、同い年ぐらいの子供との交流は全くなく、二人ともが同じ時、同じ場所で同じように相手を求めていたのだからそういっても過言ではないように思える。

 そして、今日も共にお昼ご飯をとり、時刻は午後の四時。

 二人は疾うに別れそれぞれ自分の行うべきことをこなしている時刻である。

 ルークはいつも通り父親の後について、仕事の手伝いをしていたのだが、ここで、彼を呼ぶ声がかかる。

 その声の主の男にルークの父親が応じ、しばらく話した後、ルークの元へと向かってくる。

 そして。


「訓練場のほうで人手が必要なんだそうだ。

 背の小さい子供のほうが都合がいいとのことだ。

 彼について手伝ってあげなさい」

「すまないね。

 訓練場の床下に入らなくちゃいけないんで、一人じゃ厳しくてね。

 見てのとおり、図体がでかいもんだから、一人じゃ明かりを取ることすら難しいんだ」


 どうやら、訓練場の一部の床が壊れてしまい、その修理の補佐として彼に来て欲しいということであった。

 明かりや、道具を運んだり渡したりする補佐が必要であり、その補佐は狭い空間でも動きやすい者、即ち背の小さい子供が望ましいということらしい。

 自らが尊敬する優しい父親から与えられた仕事に対して、ルークに否やはない。

 素直に頷き、ルークは男について訓練場へと向かったのであった。




「ふぅ、助かったよ。

 なかなか頼りになるなぁ」

「ありがとうございます」


 二時間ほど後、彼らは無事作業を追え、床下から這いずり出てくる。

 彼はその小さな体躯を生かして、狭い空間の中でも俊敏に動き回り、期待通りに補佐をこなして見せたのだ。


「悪いが後何回か手伝いを頼むことになると思う。

 そのときはまたよろしく頼むぞ」

「任せてよ」

「おう。

 そうだ、俺の手伝いをしてくれた報酬にこれをやるよ」


 そういって渡されたのは木で彫られた大きな耳と長い鼻が特徴的な動物の置物であった。


「初仕事の報酬ってわけだ。

 大事にしてくれよ?

 俺が一生懸命彫ったやつだからな」

「これは何?」

「俺の故郷で、神聖な動物として扱われていたものを真似て彫ったんだ。

 寿命がとっても長い事から『健康長寿』のご利益があるって言われてるんだ。

 しかも今渡したように二つセットにすると、家族を大切にすることから『縁結び』のご利益もあるってわけだ」

「縁結び?」

「あぁ、まぁ、そうだなぁ。

 友達と仲良くなったり、さらに仲良くなれるようなおまじないっていうことだ。

 もし将来仲のいい女の子ができたらその片方、牙がちっちゃいほうを渡してやるといい」

「女の子だけなの?」

「ん?

 まぁ、別にそうじゃなくても……ってこれ以上は子供にする話ではないな。

 基本的にはそうだな。

 その子と分かれることがあっても、片方を渡しておけばいつかまた引き合わせてくれるだろうよ。

 もっとも、よくよく考えてみれば、お前ぐらいの年の子に渡すにはちょっと渋かったかもな。

 もし別のがよければ変えてやってもいいぞ?」

「ん~。

 ううん、これがいい」

「そうか。

 よし、それじゃあお疲れ様。

 これで今日の仕事は終わりだ。

 俺は道具を片付けてこなくちゃいけないからすまんがが一人で帰ってくれ」

「分かった。

 ありがとう、おじさん」

「しっかりと働いた報酬なんだ。

 礼はいらねぇよ」


 そういって手を振って倉庫の方へ男は去っていく。

 ルークは手荷物その手のひらに二つあわせても余裕で収まる置物を手にニヤニヤと笑顔を浮かべている。

 初めて自分の働きが認められて、報酬までもらえたということがよほど嬉しかったのだろう。

 二つの置物を色々といじりながら笑顔が隠せない様子だ。

 がしかし、辺りはもうすでに暗くなり始めており、この辺ではよくその置物が見えない。

 どこか良く見えるところはないかと、ルークはきょろきょろとあたりを見渡す。

 あたりではちょうど訓練場のドアが少しだけ開いていて、そこからは激しい訓練の音と共に光が漏れ出している。

 そのことに気づいたルークはドアへと近づき、手に持つ置物をドアの光に当たるしてじっくり眺めようとしてふと気が付いた。

 そのドアの隙間からはとある身長差のある二人が剣の稽古をしている様子が見え、ルークにはその小さい方、金色の髪をした青い目の少女に見覚えがあるということに。

 少女は大柄の男相手にほぼ互角の戦いをしていた。

 ルークは少女の見る者を魅了するような華麗な動作に目を奪われ、しばらくの間、その場所を動くことができないでいた。

 どれほどの時間が経過したのであろうか、その訓練がいったん休止したタイミングで彼の後ろから声がかかる。


「お前さん、そんなところで何をやってるんだ。

 怒られるぞ?」


 先ほど一緒に作業を行っていた、大工である。

 その後ろからかけられた声にびくりと身を震わせたルークは少し早口で言い訳のようなことを話し出す。


「え、えっと、初めはそっちでもらったやつを見てたんですけど、その、ちょっとあたりが暗くって、あんまり見えなくって。

 それで、もうちょっと詳しく見たいって思って、それで明かりがすぐ近くにあったから……」

「あぁ、俺の上げたやつを見たかったのか。

 おうおう、あげたかいがあるってもんだぜ。

 でも、今そこはハルカス家のお嬢様が使用中なんだ。

 そこにいるのがばれると問題になるかもしれんからな。

 見るなら向こうに帰ってからにしようぜ」

「ハルカス家のお嬢様?」

「あぁ、そうだ。

 彼女がどうかは知らんが少なくとも彼女の父親はいい顔をしないだろうからな。

 じゃあ、帰るぞ」


 そういうと彼はルークを手招きし、屋敷へと帰っていく。

 ルークも、その後に続いて屋敷の方へと向かっていくのであった。

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