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隠恋慕  作者:
2/7

もういいよ、それが言えない





昔から知ってるんだ。 ちょっと怖いけど、誰にでも優しい。こんな私にも優しくて、繋いでくれた手は私の手をしっかり握ってくれて。 憧れだった、こんな風に強くなりたいって思ってた。 なのに、この気持ちが最近変なんだ。 見ているだけで満足出来なくなってきて。 出来るだけ、側にいたいって。 いてほしいって、思うようになっちゃったんだ。




§




「東のやつ、こっち見てた。 あいつ、後でしばく」

「ま、愛美ちゃん。 たまたま後ろ見てただけかもしれないし。 怖いこと言わないでよ」


今にも立ち上がりそうな愛美ちゃんを、私は必死に止めた。 東くんはすでにこちらを見ていない。 一緒にいる北野くんも…… こちらを見てはいない。 そんなことで落ち込む私は、やっぱり弱いんだ。

「……まーた俯いて。 ほら、顔上げて! 可愛い顔も見えなきゃ意味ないよ!」

「……うん。 ありがと」


愛美ちゃんはいつも私を励ましてくれる。こんな私にも普通に話してくれる。 信頼できる大事な友達。 でもそれに頼ってしまう私があまり好きにはなれないんだ。


「ゆかり、北野くんてどんな人?」

「え? えっと…… 怖いけど、優しい人」

「へぇ。 じゃその怖いけど優しい人と目が合ったんだけど」

「え……」


私はすぐに北野くんのほうを見た。 ……東くんと何か話してるみたいで、こっちを見てる様子は無い。 期待しちゃったんだ、だからこんな大きなため息が出てしまうんだ。


「……そんなに好き? 北野くんのこと」

「……うん。 好き」


自分で言って恥ずかしくなる。 言葉にしただけでこんなになるなら、伝えるなんて絶対に無理だと思う。

「うーん。 ゆかりならもっといい人がいると思うんだけど」


愛美ちゃんはどこか不満そうに腕を組んで悩むような表情をする。 いい人、そんなこと言われても。

「私は北野くんが好きだから。 にあってないとか、不釣り合いとか、そんなのじゃなくて。 その…… 北野くんにしか、こういう気持ちは、も、持てないって言うか……」


多分この気持ちは自分じゃ変えられないから。変えられるのは…… 北野くんしかいないんだ。



「……まったく。あんの根性無し」

「え?」

「んーん、なんでもない。 私ちょっとトイレ行ってくるね」


そう言って愛美ちゃんは教室を出て行った。根性無し…… って聞こえた気がする。 私に言ったのかな? でも愛美ちゃんはそう言うこと、ハッキリ言ってくれるし。 誰のこと、言ったのかな。 もし私に言ったのなら、その通りなんだけど。






後ろ姿を見つめる。 昔はすぐ後ろで見ていた背中は、今はこんなに距離が出来てしまったんだ。




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