鼓動と追跡
「テツ様、準備はできましたか?」
「早くしないと遅れますよー?」
「カノー今いく」
「車に乗って待っててくれー」
お気に入りのカバンに荷物を詰め込みテツは車に駆け足で向かった。
「そんな大きな荷物をもってきてー」
「なにを詰め込んだらそうなるのやら」
「また不必要なものまでもってきてるなこれは。」
カノの溜息じみたいつもの吐息が漏れる。
「カノ?空港までどれくらいだ?」
「30分くらいで着くとは思いますよ。」
「ですがテツ様が遅かったので空港につくのは出発ギリギリになりますからね。」
「着いたら走っていただきますよ。」
「仕方ないなぁ。」
「まぁ向こうにつけば遊びまくれるしな。」
今日のテツは機嫌がいい。
そして一路飛行機にのり目的地に向かうのある。行き先など細かいことはテツは気にしていない。ただ遊べるということしか考えていなかった。
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飛行機をおりるとテツはうるさいカノを振り切り一人街の中に消えていった。
ショッピングなどを楽しみブラブラ歩きながら、気になった女性に触れ次々に落として回っていき、
「誰かいい子はいないかなぁ」
といつものように呟いていた。
だが奇岩地帯に入り、ブツブツいいながら歩いているとテツの足が止まった。
今まで味わったことのないような心臓の高鳴りを感じた。
「マリアだ。。。」
微かな声で噛みしめるようにテツはいった。
テツの目線の先にいた一人の女性が静かに振り返った。
「おーーい!おーーい!」
テツはぼーっとしていて気付かない。
カノが目の前に立ってようやくテツは気がついた。
「やっと見つけましたよ。どこにいたんですか!」
「あ、あ、すまん。なぁカノあの女性なんだけどよー」
「ん?誰ですー??」
テツがカノに話したときにはその女性の姿はもうなかった。
「なにか様子が変ですよテツ様。」
「いや、なにも変わってないぞ。ホテルにでも戻るか。」
先ほどの話がなかったかのようにカノに問いかけた。
だがホテルに戻ってもあの女性のことばかり気にしてしまいテツはその日あまり眠れなかった。
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明くる朝
「カノ、カジノにいくぞー」
「テツ様、今日はお部屋で休むといっていたじゃないですか?」
「眠れないんだよ。寝ようと思ったらあの人が頭の中に現れるんだよ。」
「何か気の紛れることでもしないと気がどうにかなりそうだよ。」
ホテルに着いたテツは眠れずに一夜を過ごしていた。
カジノで連戦連勝のテツもこの日ばかりはボロ負けだった。
みるみるお金が消えていく。
集中しようにも集中できなかったのである。
気が紛れるどころか気になり出しどうにもならない状況になっていた。
負けに負け意気消沈したテツは憂さ晴らしにブランド店にて時計を大人買いし気を紛らわせた。
「そろそろおやめになったほうが、ら」
店員に止められたから止まったものの、止めがなければ収集がつかなった。
それを見ていたカノが半ば強引にが飛行場へと連れて行こうとする。
なぜならテツが。
「あの女性を探すまでは帰れない。カノ!今後のスケジュールをすべてカットしてくれ。カットできないならカノ!代わりにでてくれ」
この言葉にはさすがにまずいと思い連れて行った次第である。
「………………」
帰りの飛行機の時間が迫り飛行機に乗り込むもおかげでカノと一切話すことなく飛行機の中は閑散としていた。
「はぁ。。。」
テツは心ここにあらず状態の上の空で飛行機から降り自分の荷物がくるのを待っていた。
「テツ様、テツ様、荷物が来ましたよ。」
カノの呼ぶ声を聞き『はっ』となり急いで荷物を取る。
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家に戻ってもテツはどこか上の空。
メイド達にお土産をせがまれてるのが疎ましくなっていた。
だが、1人のメイドの一言にテツは正気を取り戻した。
「テツ様、こんな綺麗な女性物の時計。誰の為のプレゼントですの?わたくしのですか?わたくしのですよね?ですよねー?」
「ん?なんだそれは?どこにあったんだ?知らないぞ。俺は!。カノ!!お前が買ったのか?」
「はて?わたしは買ってませんよ?」
「テツ様がぼーっとしていたから取り間違えたんじゃないですか?」
「俺がそんなことするわけないだろ?」
「いえ、テツ様は正気ではなかったので、十分あり得えると思いますがね。」
カノの語尾が強かったのもあるが、テツは返す言葉がなかった。
「おっ!!そうだ!!」
「これを買った人を探そう!!」
「なくなって困ってるはずだ!!」
「もしかしたら、あの人のかもしれない。そして見つけたら触れよう」
最後の言葉はカノ達には聞かれないよう頭の中で思うだけにした。
こうしてテツの追跡が始まりを告げた。
次の日からというものテツは人が変わったようにカノから言われたことを素直にやった。
だが断るごとに、
「カノあの時計のことについて調べたいんだが。」
だがそれには決まって同じ答えが返ってきた。
「ダメです。そのことならわたくしカノがやっておきますからお気になさらず、テツ様はこれをお願いします。」
と、一向に言われたことをやってもどんどんと違うことを頼んでくる始末。
カノは時計探しなどする気などない。というよりテツには内緒で事を終わらせ、テツにはだ調査中といって別件の要件をテツにお願いするつもりでいた。
なぜならこんなに率先してそして手早く処理していくテツをみたことがないからである。
テツはというとカノの考えることがわかってかある一つの決心を固めようとしていた。
「ここにいてはなにも変わらない。俺は出る」
そう決めたテツだがなにをしていいか分からない。
テツには唯一といっていいほど何でも話せる友?違うな腐れ縁がいる。
リンというメイドだ。昔から世話役としてテツのそばにずっといたメイドだ。年も近くいつも一緒に遊んでいた。
だがこの時ばかりは何も返してはくれなかった。カノにチクリはしないかと思ったほどだ。
なにもいってくれなかったからかテツは意地になっていた。
「どいつもこいつも!一人でも出てってやる!」
テツは荷造りをし今夜すぐにでも出ていこうと思った。
そして夜が更けカノそしてその他のメイドたちに見つからないよう屋敷を飛び出したテツは近くに物陰を感じ、草むらに体を隠した。
「テツ様?わたしですよ。リンですよ。やっぱり出るんですね。」
リンが小声で話しかけてきた。
「なんだよ。リンかよ。俺を連れ戻しにきたのか?俺は戻らねーからな。」
リンはその言葉に笑顔で、
「あの時なにも言わなかったのはテツ様の本気度を知りたかったからですよ。」
「じょあ、俺と来てくれるのか?連れ戻しにきたんじゃないのか?」
「はい。一緒にいきますよ。だってその荷物じゃすぐに返ってなきゃいけないじゃないですか。」
リンはクスっと笑いながら傍らに置いてあった自分の荷物を持ってきた。
テツはその荷物の大きさに、
「もし今日俺が出なかったらどうしたんだよ。俺に気がつかなかったらどうするつもりだったんだよ。」
その言葉にもリンはクスっと笑いながら、
「テツ様の考えることはわかります。カノはまさかとは思ってるでしょうけどね。」
こうしてリンという、頼もしいのか?一緒にいく仲間が増えた。