小高い丘の椿
リンはレーズンに連れられ街の外れに来ていた。
これからどんな人に会えるのかと胸を躍らせながら……。
小高い丘を越えた先にポツンと小さな家が建っていた。
「リンさん。着きましたよ」
「こ、こ、ここですか?」
テツの屋敷が大きかっただけに大きなお屋敷に住んでいる人だと思っていたリンは拍子抜けした。
「レーズンさんお久しぶりです。あら?そちらの方は見ない顔ですね。きれいな方ですね。レーズンさんの彼女さんですか?」
「ち、ち、ち、ち、ち、ちがいます!!!!!」
リンはレーズンさん彼女と言われたことよりも、きれいといわれたことで動揺を隠せなかった。
「ごめんなさい。レーズンさんには奥様がいらっしゃるって知ってたのにあまりにも可愛かったからからかっちゃった。お顔真っ赤だけど大丈夫?」
いつもは強気なリンもこの人にはかなわないと悟り、またなにより可愛いとかきれいといわれたことが本当に嬉しかった。
「そうだわ、まだ名乗ってませんでしたわね。わたくし椿薫と申します。あなたは?」
「リ、リ、リ、リンです。あ、あ、あ、あ、と申します!!!」
薫の前ではリンはガチガチになってしまう。
「あらあら。。そんなにかしこまらなくても大丈夫ですわよ。立ち話もなんなんで上がっていきませんか?」
母親のような眼差しでリンを見ていた。
「いいいいいいいいいんですか?」
レーズンさんお勧めの人に会えるだけで楽しみだった。あわよくば家に上がりたいと思っていただけに薫からの言葉に体が自然と薫に近づいていた。
リンとレーズンは薫の家にお邪魔することになった。
薫は一人で暮らしている。
外からだとそれほど大きい家ではなかったが、中に入ってみると広く感じた。
殺風景とまではいかないが必要最小限のものしかなく、収納スペースも多くあり整理されている家だというのが一目でわかった。
どこか懐かしくおちついてる雰囲気の家だ。
リンたちは居間の奥にある小さな茶室に通された。
とくにここで教室などは開いているわけではない。
でも彼女を慕い教えを請いに家には数多くの女性が入れ替わり来ているという。
それほどまでに茶室も行き届いた部屋だった。
「少しここで待っていてくださいね」
そういうと薫は部屋をでていった。
すぐに薫は戻ってきた。
大きな皿を持っており、上には菓子がのっていた。
「おまたせしました。お口に合うかなぁ。いまお茶を点てますので食べながらお話しましょ」
持ってきた菓子は甘すぎず口のなかにいれるとホロホロと崩れ、その味にリンは感動した。
「あ、あ、あ、あのこのお菓子って薫さんが作ったんですか?」
「作りましたよ、お口に合わなかった?」
「いえ、すごいおいしいです」
リンは一目見て彼女の聡明さに惚れていた。
「あ、あの、どうしたら薫さんのようになれますか?」
「わたくしのようにですか?みなさんに同じようなことをいわれるのですが、、、わたくしはただ普通に生活してるだけなんですよね」
困った様子のにリンはさらにつめた。
「ではここに住まわせてください。なんでもします。お願いします」
リンは深々頭を下げた。
「なんでもですか?いいですよ」
薫は母親のような笑みを浮かべ、こくりと頭を下げた。




