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ウォッタッチドロップ  作者: 都 麗華
夢の町イギー編
31/39

お腹が減ってきた。

一回戦が終わりモモはリン達の元に戻った。


「やっぱり勝ったね。相手の残り物を使うなんて姉ちゃんらしいや!モモ姉ちゃんこのまま優勝だね」


「さっきのはたまたまだよ〜。ジャキあんまり期待しないで…」

大会は審査員が再起不能のため新しい審査員を集めるのに時間がかかっていた。


《お知らせ致します。次の対戦カードの方はこの会場に残ってください。それ以外の方は時間がかかりますので係員をおつけします。

出番になりましたら係員に連絡いたしますのでそれまではこの町イギーをお楽しみくださいますようお願いいたします》


アナウンスが終わるとモモに近づいてくる男がいた。

「モモさんですね?アナウンスでもありましたように、わたくし係員のレーズンといいます。どこか行きたい所はございますか?」


「レーズンさん。お腹がすいた。どこか美味しいお店しらない?」

リンは大会の美味しそうな料理を見てお腹が空いたようだ。

隣でジャキも頷いていた。

2回戦のモモの出番まで休憩することにした。


「では、ご案内しますね。この町のグルメならお任せください」


「どんな料理が食べれるんだろうね」

そうしてリン達が案内されるとそこにはこの町で味わえない国の料理はないんじゃないかと思わせるぐらい広いレストラン街になっていた。


「よりどりみどりとはこの事を言うのね。どこにしようかなぁ」


「イギーにきたならあそこに行かなきゃ」

レーズンの指差す店は年季の入った店だった。

店に入ると店主はどこか元気がなかった。


「いつものを頼む」

レーズンが慣れたように注文をした。


「この店はね、レストラン街では一番長い間やってる店なんだよ。この町の者はこの店の味で育ったようなものなんだ」


そうこうしていると美味しそうな匂いが立ち込めてきた。


「はい。お待ちどうさま」

「イギー定食4つね」


ご飯に味噌汁、炒め物に漬物と定番のどこか懐かしい定食だった。


落ち着く味に旅の疲れも飛びそうなくらい美味しい料理に皆無言でゆっくり味わっていた。


美味しそうに食べる様子に店主もどこか嬉しそうだった。


食事を楽しんでいるとレーズンの携帯が鳴った。

「はいっ!はいっ!はい!!分かりました。すぐ向かいます。はい!はい!失礼します」


「モモさんの2回戦がもうすぐ始まるからそろそろ戻ってきてくださいとのことです」


「わかりました。戻りましょう。リン達は食べ終えてからゆっくり見に来て」


「モモー。ありがと。間に合うとは思うけど頑張ってね。またあとでね」


:::::::::::::::::::::::


モモは会場に戻ると丁度味の審査中だった。どちらの料理も豪勢でモモは少し自信をなくした。

「あんな料理作れない…」


「あの料理だったら勝てるんですか?モモさんはモモさんにしか出来ない料理を作ればいいじゃないですか?ねっ」

元気のないモモを見てレーズンは励ました。



程なくしてアナウンスがなった。

《続きまして2回戦第1試合モモVSポーターの試合をお送りします。両者の登場を盛大な拍手でお迎えください》


1回戦よりも会場が大きくなり人も多くなっていた。アナウンスの人まで変わった。


『それではそれぞれ意気込みを聞いていこうと思いますっ!まずは、ポーターさん意気込みをどうぞっ!』


「わたしは大好きな中華料理をたらふく食べてもらってる姿が大好きです。今回も満足していただけるよう沢山作ります!」


『ありがとうございますっ!続きましてモモさん意気込みをどうぞっ』


「わたしも満足していただけるよう頑張ります……」


モモは会場の異様な光景に圧倒されていた。


「それでは、2回戦スタートっ!!」


スタートと同時にポーター前の試合同様中華のフルコースを作り始めた。


モモは審査員の様子に作る料理が決まったようだ。


『考え込んでたモモ選手が作る料理が決まったらしく動きだしたぞっ!』

「まずは魚介類コーナーに向かったモモ選手。手に取ったのは白身魚と海老とムール貝だ!!

すぐさま野菜コーナーに移り今度はオリーブをチョイス。一体なーにができるんだっ!』

『キッチンに戻りまずは白身魚の下処理に取り掛かるっ!ウロコをとり内臓を取り出した!これは手際がいい!』


『おっと、モモが戸惑っているぞ!何か取り忘れたようだ。すぐさま取りに行きそれを潰し始めた!!』

『水と魚介類を鍋に投入し、オリーブもいれたーー!さらに潰してあったものを投入!あれはなんだ?トマトだー!』

『煮込み始めたぞ!おっ。ワインを入れ始めた!そろそろ何を作ってるかわかった人もいるんじゃないか!?モモは最後に塩胡椒で味を整えた!本当に手際がいい!』


『できましたー。まず一品目!あれはブイヤベースですね』


『さらに2品目に取り掛かるモモ選手。2センチぐらいにカットしたフランスパンにガーリックとバターを塗り、カットしたトマトを乗せオリーブオイルをかけてオーブンでやいた』


『モモ選手、モモ選手?その料理はなんですか?』


「これはブルスケッタというものです」


終始モモの実況をしていたアナウンサーに不満だったポーターも手際よく完成させていっていた。


両者作り終え審査員の前に料理が並べられた。


審査員達はモモの料理しか食べなかった。というかモモの料理しか食べられなかった。


「ポーター選手のも食べたいけど前の試合でいいだけコッテリしたものを食べたからね。私達はこの試合で審査員は最後で決勝には新しい審査員がくる」


「私達の胃の様子などを考えて作るのも必要だよポーター。いま何を欲しているのか気遣いもまた必要」


「ただ自分の好きなものを作ればいいというものではないんだ」

審査員は皆頷いた。


「これで勝者はおわかりだね。皆さん」


『はい!わかりました!発表致します。勝者モモ!決勝進出一番乗りです!」


《続いて2回戦第2試合を行います。ヴァレリVSナタリの試合をお送りします。両者の登場を盛大な拍手でお迎えください》


アナウンスと共に1人の女性が近づいてきた。

「わたしヴァレリ。中々いい腕してるじゃない?わたしほどではないけどね。せいぜい頑張ってね。どうせわたしに負けるけど。おほほほ」


ヴァレリはモモにそう言い放ち会場に向かっていった。



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