我が家への帰宅《前編》
テツとバルとマンタ君はテツの屋敷に向け行動中。
バルの背中にまたがりマンタ君をテツの胸ポケットにしまい、あまりの速さに何度かスピードを落としてもらいながら疾走していた。
「バルー。やっと落ち着いたよ。あまりの速さに顔がつぶれたり、振り落とされるかと思ったよ」
「テツごめんね。人を乗せて走るなんてないからさ。ちょっと嬉しくなっちゃって飛ばしちゃった」
「頼むから興奮していきなり飛ばしたりはしないでくれよ」
「あいよ」
返事が軽かったのでテツは少し不安に思った。
その不安はむなしくも当たってしまった。
バルは初めて見る物に我を忘れ興奮しその度飛ばしてしまいテツを困らせてしまった。
マンタ君は幸せそうな顔で寝ていたのでテツはマンタ君とこの時ばかりは変わりたいと思っていた。
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「なぁテツー。このベコモの北の海から行った方が早いんじゃないの?なんで南に向かってるの?遠回りじゃないの?」
「馬鹿言うなよ。そりゃ大陸の北に今いて正反対の場所に向かってるから北の海から行ったら近いけどよ……凍え死んじゃうよ。バルは寒いところにずっといたから平気かもしれないけどさ」
「だから陸路は長くなっちゃうけど南のルートにしたんだ」
「なるほどね。マンタ君より俺の方が疲れちゃうね。ご褒美になんか頂戴ね」
「わかったよ。なにがいいんだ?」
「肉!!!」
「間違って腹減ったからって俺やマンタ君食べないでくれよ」
「大丈夫だよ。テツもマンタ君もまずそうだもん。なんてね」
「おいおい………」
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話しているうちに雪国から草原地帯にかわり奥の方に砂漠地帯が見えてきた。
「テツー。暑くなってきたね。休憩しない?この暑さは経験したことないからこたえるよ………」
「そうだな。休憩なしで走りっぱなしだし、お腹も減ったし食事がてら次の町で休憩しようか」
「肉!!肉!!にぃぃくぅぅぅ」
「わかったわかった。食べような。バル頼むから町に入ったら声出すなよ。狼がいきなり話したら騒然しかねないからね」
「辛いなぁ。でも肉食えなくなるのは嫌だし我慢するよ」
「さ…か…な」
マンタ君がムクッとテツの胸ポケットから顔を出しつぶやいた。
「はいはい。マンタ君は小魚でいいかい?」
「いいよ………」
そう言い終えるとまたマンタ君は眠りについた。
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小さなオアシスの町イカルディについたテツ達。
飯屋はどこかとテツが辺りを探していると張り紙を見つけた。
【指名手配脱走犯テツ】
デカデカと何枚もテツの顔写真が貼られていた。
「やばいこの町に手は回ってるのか」
テツは近くに落ちていた布切れを被り顔がばれないようにした。
「テツ人気者だな。至る所にテツがいるや」
「バル!肉食ったら詳しく話すからあんまり目立つような行動はしないでくれよ」
「わかったよ。肉が食えれば俺はそれだけでいい」
目立たないようにしていてもこの砂漠地帯に
狼を連れて歩いてる以上の目立つことはなかった。
飯屋にやってきてバルたちの分も注文すると、隣でよだれを垂らしたバルがいた。
肉がくるなり飢えてたの如くすごい勢いでかぶりついたとおもうと。
「うめぇぇぇぇぇ」
バルの叫びと共にその場にいた人達はこっちを見たまま固まっていて時が止まったかのようだった。
「お客さん今のって……」
「いやぁ、うまいっすねぇ…あははは」
「お代ここに置いておきますね」
テツはバルを引きずり店をそそくさと後にした。
「まだ食ってたのにぃ」
バルは肉を加えたまま引きずられていた。
「話すなっていっただろ!こうなったのはお前のせいだぞ!早くこの町を出るぞ!」
「もうちょっと休みたかったなぁ」
「自業自得デス。さかなは?」
マンタ君の一言にバルもテツも黙った。
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港町まではさほど時間はかからなかった。
港町についたテツ達は最後の必要物資とマンタ君の鋭い目を見て魚を買うことにした。
「魚は新鮮に限るデス」
店頭に並んでる魚ではどうもマンタ君の機嫌は戻らなかった。
「いいデスヨ。自分で探すデスヨ。海にさっそくいくデスヨ」
浜辺にやってきたテツだったがマンタ君をどうしたらいいのかわからかった。
「水につけてくださいデス」
テツはマンタ君に言われた通り海の中にマンタ君を入れた。
するとみるみるマンタ君は膨張していった。
はじめてみるマンタ君の膨張風景に唖然
「少しの水でも膨張しますので謝って水のある所に落とさないでくださいデスヨ」
あまりの膨張速度に絶対落とさないと誓ったテツだった。
陸路が終わり広い海原へとこうして進んでいった。
家に着く予定が中々つかないので一回切ることにしました。
広い海の航海では何が起こるのか。無事に家につけるのか。家についたら何が待ってるのか乞うご期待^_^




