スノールプス
テツは目を覚ますと狼の群れに囲まれていて狼達との間には一触即発の雰囲気が流れていた。
狼達の後ろからこの群れのボスらしき白い毛で覆われた狼が威厳たっぷりに近づいてきた。
「青年起きたか。多くの物に見られたくなった故青年のみこういう形になってしまった。手荒な真似をしてすまなかった」
「お前たち青年が怖がってるではないか。静かにしなさい」
狼達は上歯茎をあげ歯を剥き出しにし唸っていた。
だがボスの一言にみな静かになった。
ボスは体の至る所に傷があり数多の争いの中この地位に登りつめたんだなという貫禄が滲み出ていた。
子供狼が興味本位でテツに近づいてきた。
その瞬間一斉に狼達は警戒しだした。
「かわいいやつだなぁ。人間は初めてか?」
とテツは狼を撫でてあげた。
子供狼も撫でられて気持ち良さそうだった。
「青年!その時計はどうしたんだ」
いきなりボスが話し出したことに驚く。
「物をたずねるときはまずは名乗ってくれないか?」
臆することなくテツが言った。
「青年すまん。私はボルだ。でどこで手に入れた」
「どこで手に入れたって?それは言えないな。あなたのことをまだ信用できない。もう一つ質問に答えてほしい。なぜ狼なのに話すことができるんだ?あっ。青年って呼ばれるのあんまりしっくりこないから俺の事はテツって呼んでくれ」
ボルに対しての話し方に他の狼達は怒り狂い今にも噛みつきそうだった。
「わかった。テツというのか。まぁ、お前たち落ち着け。テツに手荒なことをしたのは事実だ。我々の事を知ってもらい我々の思いを伝えよう」
「話すことができる理由はその時計の力だと思うが詳しいことはわからない。ただその時計を持った男と出会ってから話せるようになったというのはある。」
《そういえばなんでマンタ君は話せるんだろう?あれだな。たぶん滝神様のお力デス〜。わたくしにもよくわからないのデスとかいいそうだな。
それよりもこの時計はなんなんだ。ただの時計かと思ったのに次々に色んなことがわかってくる。グールに最初にあった時も、どこで手に入れたってすごい形相だったしな》
「テツ。俺の話聞いてたか。なにやら考え事をしてたようだったが」
「ごめんごめん。ちょっと仲間のこと考えててさ」
「その時計は俺の良き友であり弟でもあるパトのものなんだ。パトのこと、行方、なんでもいい。何か知らないか?」
「やっぱり英雄ってパトだったのか…弟?」
テツは弟ということに疑問を持ち聞こうとしたがテツが言う前にボルが、
「テツやはりパトのこと知ってるのか!!」
「知ってるってほとじゃない。俺らも探してるんだ」
「そうか……。我々は嗅覚に優れている。テツがこの町にやってきたとき懐かしいその時計の匂いがしていてもたってもいられなくなってしまったんだ。あいつ今どこで何をしてるんだか、月日が経ち過ぎてる。もう会えないと思うけどな。期待してしまった」
「なぁボル。よかったら町を襲ったりした経緯は知ってる。そのことよく聞かせてくれないか?あとパトとの出会いも話してくれないか?弟といっていたことも気になる」
「あぁいいぞ。あいつとの事は一生忘れない」
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「まずはテツも知ってると思うが俺たちは人と共存していた。そして酔っ払いが射殺したことにより俺たちが襲うようになったという話になってるとおもう。
でもほんとの所は少し違う。
優しい人達と仲良く暮らしていた狼もいた。
だがそんな人達ばかりではなく俺らの事を怪訝している人も中にはいる。当時のボスはその人とよくやりあっていた。
排除してやろうと考えた男はそのボスを苦しませるべくボスではなくまだ幼かったボスの子供を殺すことにしたんだ。
明らかに計画的だったんだよ。町のものはこの事実を知っている。でも男への同情からか偶然やってしまったということにしたんだ」
「殺された狼ってのは俺の弟だったんだ。ほんとは俺が殺されるはずだった。俺ら兄弟はいつもと変わらない日常を過ごし共に遊んでいた。遊び疲れ帰ろうとしたときあの男が現れたんだ。敵意剥き出しに俺たち兄弟めがけてあいつは発砲してきたんだ。一発目は威嚇だったのだろう外れた。
でも俺はその一発で怖さから体が動かなくなった。男が二発目を発砲しようと俺に銃を向けた時俺の弟が俺の前に来て………俺の………代わりに……」
「ボル無理しなくていい」
「テツすまん。この話をしたのはパトだけなんだ」
「ゆっくりでいいよ。疲れたんじゃないか?今日はここまでにしよう。明日また聞かせてくれ。ボルさえよければ俺の仲間達にも話してやってほしいんだけどダメかな?」
「そうだな。悪い明日にしよう。どんなやつかわからなかったからテツのみを連れてきたんだ。テツを見る限り仲間も信用できそうだ。というより信じてみたい。話してみたい。まだ人間に慣れていなく敵意を持つ俺の仲間達もいる。そいつらには俺から言っておくから安心してほしい」
「明日迎えに行く。テツ。お前に会えてというよりテツでよかった。テツと話しているとパトのことを思い出すよ。さて、送っていくから俺の背中に乗りな」
テツは走って送ってくれるものだと思い背中に乗ったが違っていた。
「しっかり掴まっていてくれ。でないと振り落とされるぞ」
テツの準備が整う前にあたりが白くなった。かと思うと次の瞬間にはトミイの家の前にいた。
「雪像でホワイトアウトになって次の瞬間には俺らの前にいただろう?俺らは迅速のスノールプスと呼ばれているんだ。あまりに速すぎるから俺らが通った所は地吹雪になりホワイトアウト現象が起きるんだ。まっ話の続きはまた明日な」
そういうなりホワイトアウトだけが残りボルは一瞬で消えてしまった。
「テツー無事だったの?」
トミイの家が開きモモ達が近づいてきた。
「あぁ、大丈夫だ。みんなに話したいことがあるから中で話してもいいか?」
病人でも家に入れるようにジャキとモモはテツから離れなかった。
テツを探しに林の中に入ってはみたものの何もなく家に引き返しずっと家の中で無事を祈っていたらしい。
「ありがと。心配かけてごめんな」
「それでな」とテツはボルに出会ったことパトと繋がっていたこと明日話を聞くことをみんなに伝えた。
テツだけ先に会ってずるいと怒られた。
やっぱりこいつらも連れて行きたいとボルにいって正解だとテツは思った。
「あっ。そうだマンタ君。マンタ君はなんで話せるんだ?」
「また藪から棒になんデスカ?わたくしのこの語学は小さくなったときに書物をあさり覚えたのデスヨ。どうですか。えらいでしょう!」
マンタ君は誇らしげだった。
そこは滝神様じゃなく独学だからちょいちょい語尾がおかしいのかとテツは納得した。




