わたくしは○○○の○○○君
滝の中を進んでるテツ達。
「暗くて何も見えないよ。みんな近くにいる?ちゃんと手握ってくれてる?」
ジャキの不安そうな声だけが反響して聞こえてくる。
暗闇の中を歩いていると足場がいきなりガタガタと揺れ始め、カタッという音が聞こえてきた。
テツ達は足場が外れイカダの様な物に乗り水の上を浮かんでいた。
静かな水の流れに乗る様にまっすぐ進んでいるかと思うと一気に真下に落ちていってしまった。
「おい、おい、まじかよ。地面に叩きつけられたら俺たち……。こんな最後は嫌だ」
テツは祈っていた。
「みんな巻き込んでごめん」
テツが皆にそうつたえると、ぽよーん♫ぽよん♫ぽよん♫
テツ達はある物にぶつかったかと思うと跳ねあがりそのある物体の上に無事着地した。
「ん?なんなんだ。この柔らかい物は?」
「なにこれぇ気持ちいい」
「すごいあったかいよぉ」
「ジャキ大丈夫か?」
「うぅ。怖かったよー」
皆が各々はしゃいで話していると、
「あのぉ、くすぐったいのであまり触らないでください。おぉそこはダメです」
可愛らしい声がしてきてテツ達ははしゃぐのをやめて止まった。
「やっと落ち着きましたか。わたくしあの魚のマンタのマンタ君と申しマス。滝神様にマンタ君と呼ばれておりますので皆様もマンタ君とお呼びくださいデス。滝神様より皆様の案内役を任せられておりますのでどうぞよろしくデス」
「なんでマンタが喋ってるんだよ。ってか案内役ならちゃんと迎えにこいよ」
「マンタ君と呼んでください!マンタと呼び捨てにいいのはわたくしと滝神様だけデス。あんな高い所にどうやって登れっていうんでふか!!あなただけ落としますよ」
マンタ君がラルを振り落とそうとしたのをジャキは優しくなだめた。
「マンタ君ラルのこと許してあげて。俺ジャキよろしくね。くすぐってごめんね」
優しく撫でられたのが気持ちよかったのかマンタ君が至福の顔をした。
マンタ君はすごいスピードで泳いで行く。
「ところでマンタ君、これから俺らはどこに行くんだい?」
「それはわたくしにもわからないのデス。この道は滝神様が作った道ナンダ。だから何処に繋がってるからわたくしもわからないのデス。地獄に連れて行かれるかもデスネ」
「怖いことをさらっと言うな!」
皆の揃ったツッコミにマンタ君も笑い
「ごめんデス。地獄はないデス。わたくしも行くことになりますからね。わたくしも行きたくないデスヨ」
「おっ!みなさん着いたみたいデスヨ」
前方に光の塊が見えてきた。
「みなさん離れ離れにならないようにしっかり捕まっててくださいね。いきますよー」
そういうと光の中にマンタ君は突っ込んでいった。
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寒っ!!
「おい!みんな無事か?」
テツが周りを見渡すと一面雪化粧だった。
近くにリン、ジャキ、モモが横になっていた。
「なぁ、ラルはどこだ!?」
皆が慌てて手分けして雪に埋れてないか辺りを探していると、
「あのぉ、ラルさんでしたら光の中に入る前に滑り落ちてしまいまして……ごめんデス」
ジャキのポケットから小さな声が聞こえてきた。
「驚かせてごめんデス。わたくしデス。マンタ君デスヨ。水がないと小さくなってしまうんデス」
マンタ君はジャキのポケットからひょっこり姿を出した。
「落ちたってどういうことだよ。どこにいるか分からないのか?」
「光に入る瞬間でしたので近くにいるとは思いますデスヨ」
「ここにいても何も手掛かりとなるものなさそうですし、マンタ君を責めても何にもならないですよテツさん。あっちに灯りが見えますのでいってみませんか?」
「そうだな」テツはモモの声に溢れそうな思いを押し殺した。
「ラル……無事でいてくれよ」
「こんなことになるなら俺一人で行動した方が……今までの事もあるしこれからも何があるかわからない…」
テツはラルを巻き込んでしまったことを悔い考えていた。
町の入り口にやってきた一向は【ベコモ】という看板を見つけた。
町の名前の下に【雪国ベコモ、英雄の作りし暖かな町】と書かれていた。
「あっ!?皆隠れて!!」
「リンどうしたんだよ。そんな慌てて、警察でもいたか?」
「そうじゃない!あそこの家見て!あれラルじゃない?」
リンの指差す方向にベットで横になり女性に看病されているラルの姿があった。