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ウォッタッチドロップ  作者: 都 麗華
神秘のバラカ山編
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【番外編】清見の池を守る者

バラカ山には昔集落があった。


グールが物心ついたころから調査と名をうち諸国からの調査団が金品財宝を求めに登ってきていた。

調査なら許せるものの、来る調査団はどれもやりたい放題状態のためグールの父は調査団追放を掲げ対抗部隊を結成していた。


調査団は清見の池をくまなくいくら探しても根源が何か一切分からずじまいだった。


出処が分からないなら汲んでもっていく他にないと池の水がなくなるほど汲んでいってしまった。


だがグールの母親は「大丈夫よ。」としかグールに言わなかった。


池の水を汲み終えると、この山には他に何かあるに違いないと思った調査団は調査範囲を広げていった。


一向に手がかりが見つからないため集落のものが山分けしているとおもい家を襲撃したり、集落の働き手となろう者を無理やり採掘に加わらせ無理な労働をさせたりというのが何年も続いていった。


グールは病弱だったこともあり家で母親と帰らぬ父をただひたすらに待っていた。


次々と調査団が来ては集落を荒らされというのが何年も続き、集落としての機能が失われ始め、亡くなるもの、夜逃げ同然に集落を出て行くものが相次いでいった。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::


グールには将来を誓ったサラという相手がいる。

グールの母親も寝たきりの状態になっていたところをサラは献身的に看病してくれていた。


サラは父親と二人で暮らしていたがグールの父親と共に集落のために立ち上がり帰ってきていなかった。


母親とグールとサラは細細と静かに調査団に気を遣いながら暮らしていたが、やがてグールの母親が静かに息を引き取るとグールの家に調査団がやってきた。


「ここにはまともに働けるやつはもぉいないのか?男はもうお前しかいないっていうじゃないか?」

調査団の男はすごい威圧でグールに迫ってきた。

「その人は体が悪いんです。連れていってもなんの役にもたちませんよ。」


「なんだ。おい。威勢のいいお嬢さんじゃないか。静かにしてたから気づかなかったが気も強そうじゃねーか。おい。こいつを連れて行こうぜ。」

「なにするんですか!やめてください。なにするんですか!」男達は強引にサラの腕を掴み連れていこうとした。


「待て。連れて行く必要ないじゃないか。その子を連れていくんならおれを連れて行け!」グールは阻止しようと調査団を追いかけた。

「お前みたいなやつに何ができるんだ。」

赤子でも捻るかのようにグールが追いかけてくるのを男達は退けていた。


覚悟の坂まで追いかけていった。

「しつこい野郎だな。なんにもできない癖に出てきやがって。お前は静かに布団で横になってればいいんだよ。」


「そ、そ、その子だけは絶対にお前達に渡さない!!俺はどうなったっていい!絶対にお前達なんかに渡さないぞ!!」


「なんと言おうとお前には無理だよ。諦めな。」

男達が高笑いをしていると、サラも懸命に掴まれながらも体を揺らし抵抗し出した。


すると足場の岩がゴゴゴゴという音を立て揺れ始めた。


「なんだ?地震か?なにが起こってんだ!?」

山の怒りとも思えるぐらいグールのいる辺りが一番揺れていた。


「あぶねー。お、お、お、お。」

調査団がバランスを崩すとサラと共に覚悟の坂から真っ逆さまに落ちていってしまった。


「あぁぁぁぁ。サラぁぁぁ。」

「サラぁぁぁぁ」

グールの悲痛の叫びが響いた。


それからテツ達が感じた怪奇現象が覚悟の坂で起こり始めた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::::


サラがいなくなった日を境に集落を出て行く者が後をたたなかった。


集落から出るものは増えるが覚悟の坂の影響か新たに調査団がくるということも次第になくなっていった。


小さい頃母親が亡くなる前に、「私達の住んでる家の周りの水は献上品としても重宝されるほどに万病に効くといわれるのは知ってるわよね。でもあなたが生まれて間もない頃に調査団が現れるようになってね。この水の根源はどこか。他に何か貴重なものがないのかって今荒らし回ってるのよ。もしこの池を脅かすような人が来なくなって前みたいに平和になったら、これを使いなさい。あなたのその病弱な体も治るかもしれないのに今治してあげられなくて、ごめんなさい。」


と言う言葉がグールの脳裏に焼き付いていた。そしてその時もらったネックレスはあの時から肌身離さず持ち歩いていた。


集落を探検してみるもいつのまにか池に建つグールの家だけになっていた。グールは誰かいないかと思い彷徨っていると母親から絶対に近づいてはいけないという場所に入っていた。


「ヤバイ。ここは何処だ。」

すぐにグールは方向感覚を失い迷ってしまった。


すると目の前に大きな岩壁がそびえたっているのが見えた。


他に道はないかと岩壁に近づいてみるとグールが身につけているネックレスと同じ形をした穴を見つけた。


グールは恐る恐るその穴にネックレスをはめてみた。


するとサラと感じた。あの地震のような揺れを感じた。と同時に岩壁の一部が少しずつずれていき奥に通じる道ができた。


中に入ってみてグールは言葉を失いその場に立ち尽くしていた。


そこには埃にまみれている。様々な資料が並んでいる図書館かと思わせるほど一面に書物が並んでいた。岩の中なのに明るかったのは辺り一面金で埋め尽くされ光り輝いていた。


バラカ山は金山でもあったのである。


真ん中にテーブルが一つあり、その上に見開きになった本が置いてあった。


そこには清見の歴史と書いてあり、グールは埃を払いながら時間を忘れるぐらい読みふけっていた。


すこし読んだだけでこの本の凄さがグールにはすぐ分かった。

誰かに見られたらマズイと思ったグールは一度家に戻り整理しようと思い家路を急いだ。

岩壁を出る時【清見の池を復活させたければ動かせ】という小さな岩を見つけたグールはその岩を動かしてから家路を急いだ。


家に帰ると涸渇していた清見の池の水が復活していた。

「やはりあそこにはなにかある!」


グールの動かした岩は言わば堰の役割になっており、グールが動かしたことにより水が湧き出て池に溜まり終えると自動的に元の場所に戻る仕組みになっていた。


母親からこれを飲んだら治ると効いたことを思い出し飲んでみるとみるみるグールの病弱体質は治っていった。


体力がついたグールは次の日もまた次の日も岩壁にいき、いろいろな書物を読み漁り父が清見の池の守護者だったこと、調査団からこの金山を守るために立ち上がったんだということを知り、自分も守らなくてはと思い守護者になりテツ達が来るまで一人でずっと守っていたのである。


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