我が身に降りかかる現実
テツは下を向いたまま動こうとしない。
さらに昨日までの鼻歌はどこへいったのかと思わせるラルの運転。
車の中は静けさに包まれていた。
モモも話しかけようにもなんと声を掛けたらいいのかわからない。
静けさを打ち消すかのようにオスナに向けて車を走らせているとテツの携帯が鳴った。
ロキからの電話だった。
「お前達なにやらかしたんだ。指名手配になってるぞ。お訪ね者だよ。お訪ね者。
なんでも脱走犯っていうじゃないか。」
テツは確かに家を脱走はした。警察からも身元引受人でないリンとあたかも身元引受人のように出てきてはいた。
テツが知ることになるのは後の事になるが経緯は次のようである。
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テツがリンと警察署を出た後カノの遣いがやってきた。その人はドクであった。
警察から前に遣いだといって女性が見えたことなどその時の状況をドクは聞いた。
そんな人を寄こすとはカノから聞いていない旨を警官に伝える。
「じゃああの女性は一体。。」
とドクと警官は顔を見合わせた。
カノから電話でテツの状況を触り部分しか聞いていない警官はドクから詳細を聞いた。
「それならば!!」
「こちらの不手際でテツをお渡しできなかったということに対して名誉挽回を図るため全力でサポートさせていただきます。我々にお任せください!」
こうしてテツはドク達といった身内だけが探し回っていた状況が警察も加わることになり全世界の警察から目をつけられ指名手配となってしまった。
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話を車中の電話に戻そう。
ロキが連絡をくれたのには続きがある。
指名手配になってることに気付いてまずオスナの知り合いに状況を聞いてみたというのだ。
そしたら入口の検問から町の中まで物々しい雰囲気になってるらしい。
「なんたってあんたの懸賞金がバカみたいな金額だったから市民も含めすごいってよ。
で、オスナに向かわない方がいいと思って連絡したんだ。」
オスナの友人の話ではベラミからオスナまでは厳重体制を引いてるらしい。
完全に袋のネズミ状態ってやつだな。
「なにかいい手はないのか?」
「一つだけ手はあるぞ。いまテツ達が通ってるのは両サイドを山に囲まれた道。通称ドリー渓谷。山の名前をバラカ山という。まだそこは整備が行き届いてるから大丈夫だが一歩中に入ってしまうと自然が猛威を振るう。
山の険しさから誰もその山を登ろうとはしないんだ。」
「まずは整備された道から離れてそこを目指すしかない。」
「みんなに聞いてみる。」とテツはみんなの顔を見て見た。
みんなの顔を見てみると状況を察したのかみんな覚悟を決めてる顔をしていた。
ラルも愛車と別れるのが惜しいのか項垂れているが、「日頃の行いが悪いからじゃないの?」というリンの言葉になにも言えなかった。
山道入口に車を止めてはすぐにばれてしまうと思いすぐ近くの見つけにくい林の中に車をつっこんで事故車に見せかけた。
「おれの車がぁ」とラルは車を見つめ後ろ髪を引かれる思いだった。
バラカ山入口に来ては見たもののやはり誰も登ろうとしない山ゆえどこが入口なのかわからない状況だった。
一向はバラカ山入口と書いてある立て看板から頂上を目指すことにした。
果たしてモモ、リンといった女性陣は登ることができるのか、男とはいえまだ子供のジャキは登ることができるのか不安になる山だった。




