夜の宴
夕日が沈んでいくなか宿屋にいった一向。
みんながそれぞれ宿屋で寛いでいる中抜け出す計画をラルとテツは立てていた。
リンに見つかってはまずいと思い女性達が風呂に向かってる中抜け出すことにし、決行した。
ジャキはというと航海疲れで熟睡中でピクリとも動かなかった。
シェルブーは車で2時間といったところにある。
無事抜け出したラルは鼻歌まじりで楽しそうに運転していた。
鼻歌をやめおもむろに
「シェルブーでは各々楽しもうじゃないか。ついたら別行動でいいよな?集合時間はあえて決めないぞ。どうせ俺酒飲むからその日のうちに運転する気ないし。テツはテツで勝手にやってくれ。」
そう言い残すと楽しそうに運転を再開させた。
テツはラルの言葉にこれで誰にも邪魔されずに能力の確認ができると思い、つくまで車で船旅の疲れを癒していた。
シェルブーに入る前から煌びやかな夜景が目に飛び込んで来て二人は興奮していた。
町中に入ると夜景とはまた違った煌びやかな女性達がたくさんいて二人はあたりを見渡していた。
ラルは適当な場所に車をすぐ止め、すぐいなくなってしまった。
ラルはこの町の魅惑にすぐ取り憑かれてしまった。
「車で別行動なって言われたけどそれ以外は本当一言もなかったな。まぁこれで人目を気にせず行動できるからいいけど。よし行くか!一人になったし、そこかしこに女性はいるものの、人だかりだからあまり目立って行動はしたくないなぁ。」
テツは取り敢えずラルが走っていった方向へ歩き出すことにした。
手当たり次第にもいけないしどうしようか考えようとしようとしても常に女性達の勧誘の嵐を受けていた。
「寄ってってよ。ね。寄って来なよ。」
一人の男に一斉に群がる女性。能力を試したいのにこれじゃわかりにくくなるじゃないか。それに揉みくちゃにしてくるし、あぁぁと試す場所を見誤ったかなとテツは唇を噛み締めた。
暫く歩いていると店の前でタバコをふかしこっちをちらっと見て来るけど誘おうという感じを見せないやる気のない女性がいた。
「よし、あの人にしよう。効いてるかどうか分かり易そうだ!」
テツは獲物を見つけた。
「この町初めてなんだけど色々教えてくれないかい?」
「私なんかでいいのかい?もっと他にいい子いるだろうにあんた物好きだね。」
女性からはタバコを消そうともせずやはりやる気が感じられなかった。
「店の前を通るたびにこの町の女性のがっつきが凄くてさ。。がっつかない女性が良いんだよね。その点貴女は大丈夫だろ?」
「あんた言うこと直球すぎやしないかい?そのままあたしがやる気のないみたいに聞こえるけどまぁいいや。あんた面白そうだし入りなよ。」
失敗したかなとテツは思ったが店に入れるからまっいいかと思った。
店についてソファに腰掛け「あんた名前はなんていうの?あたしはユーリ。」
優しく手を触れて来たので触れ返す。
すると店の前でのやる気のない雰囲気から一点、スイッチが入ったのか、目がトロンとなり甘え出して来た。
「ねぇ。たくさん飲んでってねテツ。あたしも飲みたぁい」
浴びるように酒を飲んでいったテツは歯止めが効かなくなってきた。
後半はユーリに言われるがまま酒を注文し続け空のボトルの山がテツのテーブルの前に広がっていた。
ユーリの巧みな話術だということにも気づかずテツは自分の能力によってユーリを落とせたと勘違いをしている。この事に気付くのはもう少し先の話である。
完全に酔っ払ったテツ
「そろそろおあいそするよ。ユーリこの後二人でどこかいかないかい?」
ユーリは快くいいですよと言ってくれた。
お会計が馬鹿みたいな金額になっているがテツは眉一つ変えず当たり前かのようにカードをユーリに渡した。
テツってすごい人なのね。と満面の笑顔でユーリはテツを見つめる。
お会計を済ませユーリと夜だというのに明るいネオンの中を消えていった。
途中でラルにあった時ラルも女の子を連れていた。
ユーリとホテルにやってきたテツ。
「酔いすぎだよ。これ飲んで。少しは酔いさめるとおもうわよ。」とユーリはテツに薬を渡した。
「ユーリ気が利くな。ありがと。先にシャワー浴びてきたらどうだ?」
「わかったわ。先にいってくるわね。絶対覗かないでよ。」と誘っているのかと感じさせる声で浴室にユーリは向かう。
テツはユーリから貰った薬を飲み、テレビを付けベットに横になった。
だが次第に当たりがボヤけて見えてきた。
「いかん、いかん、酔いすぎたな。眠くなってきちまった。」
懸命に眠らないように努力はしたものの勝手に瞼が閉じていってしまった。
気付けばテツは夢の世界にいってしまった。
寝顔はいうまでもなく、にやけっぱなしで気持ち良さそうに寝ていた。
翌朝、テツは朝日の眩しさに目を覚ました。
テツの前にはユーリはもういなかった。
フロントに電話するとユーリはもうチェックアウトしていた。
淫らな格好だったので着替えていると異変に気付く。
「あぁぁぁ。財布がない!」
フロントに再度問い合わせてみても知らないの一点張り。
「お客様。まだお会計が済んでいらっしゃらないのですが、大丈夫なのでしょうか?」
フロントマンが疑いの口調で問いかける電話越しにテツは次第に青ざめていくのがすぐわかった。
「後から‥‥後からの支払いは可能ですか?」恐る恐る聞いてみてもダメという返ししか返って来ない。
「お客様。大変いいにくいのですが、それ相当の対応をせざるを追えません。警察に届けさせていただきます。」
受話器からはツーツーという音だけが虚しく聞こえていた。
テツは慌ててラルに電話してみる。
だがいくらかけても呼び出し音だけで出る気配がなかった。
テツが頭を抱えてうずくまっているとトントンとドアをノックする音が聞こえてきた。
すいません。警察のものですがご同行願えますか?テツは二日酔いもあいまって憔悴しきっていた。
警察署に付き警官が色々質問してきた。
「あなたの名前は?」
「ここの人じゃないね。ここには何しにきたの?」
「あのホテルには二人で泊まっていたというのは本当ですか?」
「あなたの事を迎えに来てくれる人はいますか?」
テツは頭を下げたまま
「名前はテツです。ここには観光にきました。ユーリという女性と泊まっていました。友人と来ていますので連絡がつけば迎えに来てくれると思います。警察の方が来る前にも連絡してみたのですが繋がりませんでした。」
「この町ではね、あなたのような方が多いんですよ。あなたがいうユーリという方、多分もうこの町にはいないでしょうね。出稼ぎに来ては観光客を騙してほとぼりが覚めるまで地元に戻り、また金が必要になってはこの町に来ているのさ。でもホテル代は払ってもらわなきゃ困るからね。今日は留置所で泊まってもらうよ。」
留置所は相部屋となっているらしい。
入ってみるとこちらに背を向けていたがすぐにそれが誰だかわかった。
「ラル!!!」
「テツ!!参ったよ。ってなんでお前までここにいるんだよ。」
事情を話すとラルも似たような形でここにいるらしい。
二人は揃って肩を落とす。
「これから俺らどうなるんだ。雷覚悟でリンに早く迎えにきてもらおう。」
二人がリンを呼ぶため警察官を呼ぼうとすると、こちらに向かってくる警察官がいた。
「テツだね。先ほど家の方と連絡が付いてね。カノさんって言ったかな。あんたのことを聞いたよ。送ってやりたいんだが他のものを行かせますって事で今日迎えに来てくれることになったよ。よかったな。」
「やべぇ。カノに居場所がばれた。ってかカード使った時点でバレてる。そう考えると今日迎えにくるといってたけどいつ来てもおかしくない。近くまで来てるってことだよな。カノがサツに送ってと頼まなかったのが唯一の救いだな。警察じゃ何もできないと思ったな。カノ。」
テツは電話をさせてくれないかと先ほどの警官に頼んでみた。
「ほんとはダメだがあんたなら構わないぞ。でも規則だから同行させてもらうからな。」
テツの素性を知ってか警戒が緩くなっていた。
リンに電話をした。案の定
「何でそんな所にいるのよ。お風呂から出たらいないからどこにいったかと思ったじゃない。ラルもそこにいるの?こっぴどく締めてもらえばいいのよ。わたし知らない。」
電話越しになだめるモモの声が聞こえて来た。
「しょうがないわね。いってあげるから大人しく待ってなさいよ。」ぶちっ。
リンがくるのが先か、カノの遣いが来るのが先か、テツは気が気でなかった。
ラルと二人待合室にてリンが先に来てくれと願っていると迎えが来たぞと警官がしらせに来てくれた。
俺もここで終わりかと思って入口にいってみると凄い形相のリンが立っていた。
「ありがと。りん。。なんていったらいいのか。ほんとにすまん。どうやってここまで来たんだ?」
「ベラミのホテルでテツ達が警察にいるって話したら送ってくれたのよ。ほんと優しい人でよかったわよ。カノさん達はまだ来たないの?」
「あぁまだ来てないみたいだ。」
それを聞くとリンは警察官の前に行き、
「この度は本当にご迷惑をお掛けしました。わたしは迎えに来ただけなのでお金は持って来てないのですがもう少ししましたら別のものがお金を持って来ますのでその時にこの度の分はお支払いさせていただきます。本当にご迷惑をお掛けしました。」
と一礼した。
警察官もわかりました、以後お気をつけくださいと二人の解放を許してくれた。
テツ達は急いで停めてあるラルの車に向かった。
「もう折角リクシャーでドク達を巻いたのに私たちの居場所ばれちゃったじゃない。一刻も早くオスナに向かうわよ。あとラルとテツはしばらくの間私たちと離れての行動は禁止!わかったわね。」
「はい‥‥‥」
二人のか細い声が車の中に流れた。