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ウォッタッチドロップ  作者: 都 麗華
始まりの町編
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貿易の町

一夜が明け、モモの家でお世話になってる一向。


モモは昨晩テツと話して料理などを任されて、初めて必要とされたことに喜んだのだが店をどうしようかについて悩んでいた。


モモが一人で切り盛りしているのには理由がある。

モモには両親がいない。祖父母に育てられていたが祖父母がなくなり取り壊しが決まっていた。


モモに他に居場所などなかった。そこで一人でやっていくと告げ、取り壊しをなんとか切り抜け細々と店を続けていたのである。


店を続けるという条件で取り壊しをなくしたこともあり、いつ帰れるか分からない、長期に渡り店をあけたら契約違反になり潰しにくるかもしれないと思うと中々踏ん切りがつかなかった。居場所を取られたくなかった。


悩んでいるモモを見ていた三人は口数が少なくなるかと思いきや美味しそうに朝食を食べる三人がいた。


ラルが「モモ、おまえも立ってないでこっちに座って食べろよ。」


悩んでいたのに皆でテーブルを囲んでいると自然にみんなの笑い声に包まれ悩んでいた気持ちがなくなり楽しい時間だけが流れていた。




「こんな日々が毎日続けばいいのになぁ。。。」





朝食を食べ終えモモは後片付けをしていた。出発の支度をしていた三人がモモの元に来て、リンがいままでありがと。と告げた。


モモとテツは見つめ合うだけで何も言わなかった。


モモが「わたし。。わたし。。」と話し始めたのを聞いていたラルが、

「なんだよ、じれってぇな。一緒に来るんだろ?おまえも早く支度しろ。」



モモは、うんと軽く頷き出発の支度しに部屋に向かうことにした。

三人に背を向けると目が赤くなっていくのを感じた。




ラルはモモの事情を知っている。モモが支度をしていると横に腰掛け耳元で、

「安心しろ。おまえには俺らがいる。」


「ありがと。。。」モモはラルの胸の中で泣きじゃくっていた。



先に車で三人が待っていると店の看板を【準備中】にかえこっちに向かってくるモモがいた。


「遅れてごめんなさい。これからよろしくお願いします」

モモは晴れやかな笑顔だった。


後日ずっと準備中になっているのを心配した大家がテーブルの上に土地の権利書と二枚の手紙を発見した。


一つは大家へのお店を空けることにしてあとの事は任せるということと。


「おばあちゃん、おじいちゃん、モモいってきます。見守っていてね。」と綴られた涙かと思うような所々シミになっていた手紙だった。







リクシャーへいくことになった四人。

車内でリクシャーについたらなにをするか役割分担を決めることにした。


「テツはお金をかせぎにいかなきゃねー」

リンの皮肉めいた一言に誰一人意義を唱えることはなかった。

お金の持ち合わせがなくリンに頼ってたテツ。

テツだけが即決で仕事をすることに決まってしまった。



テツに仕事探しをさせたことにより、情報収集は誰がするんだよとラルがリンに問いただすと。

「そりゃ私でしょ」


リンの言葉にラルはモモがリンと一緒に情報収集することになってモモが振り回せるんではないかと心配になった。


「じゃあおれもリンと一緒に情報収集するよ。モモは宿とごはん作るのに食材調達してくれないか?」


ラルはモモを気遣い自らハズレくじを引くことにした。


リクシャーに着くと中心部には大きな時計塔があった。集合時間を決め、そこに集合することにして一向は解散した。


ラルだけがさみしい背中をしていた。




情報収集編


時計塔で分かれたリンとラル。

リクシャーという町は数多くの船が多く行き交う港町である。

時計に詳しい人はいないかと聞いて回る二人

だったが返ってくる言葉は「ロキに聞け」「いま忙しいんだ。あっちいけ」この二つだけだった。


誰だよロキって!


ロキはどこにいるかと聞いてみても誰も居場所を教えてくれない。

というか常に動き回っているため神出鬼没らしいと皆が口を揃えて言う。


そんな中でもめぼしい場所を何箇所か教えてもらいあたってみてはみたものの、一向にみつからず諦めかけていたときふいに後ろから話しかけられた。


「あんたらか俺を探してるっていう二人は」

話しかけてきた人こそロキだった。

やっと会えた喜びから膝から崩れ落ちる二人。


「なんだよ。本当に神出鬼没だな。どっからわいて出てきたんだよ」


ロキは今少し時間があるからといって事務所のような所に通してくれた。

秘書らしき人がお茶をもってきた。

かしこまる二人。

似合わねーとリンとラルはお互い目を合わせアイコンタクトで話していて通じ合ったせいか、クスッと笑った。


二人がクスッと笑っているとロキが、

「で、時計がどうとかって皆話していたけど話とはなんなんだい」


ラルは自分に熱く語ってきたテツの話を同じトーンでロキに伝えた。



熱血漢の強いロキは熱くなりラルに質問しては二人してテツについて熱く語り出していた。


「はぁ。。」

この暑苦しい雰囲気にこの場にいないのに良くここまで語れるとリンは溜息をついていた。


話を聞き終え気づかれてはいけないなとロキはおもったのか秘書にあることを伝える。


ロキは秘書に伝え席に戻って一言。

「街の皆にも協力をお願いしておいたから。テツの事を聞いてまわるようなやつがいたら知らぬで通せってね。」


口をあんぐりと開け話を聞いているが頷くだけで精一杯の二人だった。


ロキは後日知ったのだがこの街の頭だった。




モモは宿探し兼食材調達編


その頃モモはというと、ラル達と同じ様に聞き込みをしていた。お金をあまり使えない皆の為にも格安で揃えられるような場所を探していた。


「ねぇ、お姉ちゃん今暇?」

宿を探したいのに若い男達に誘われまくる始末。

男性に免疫のないモモが戸惑っていると優しいお婆さんが匿ってくれた。


事情を話すとそのお婆さんは宿屋を経営してることがわかった。


「空きがあるからよかったら泊まっておいきなさい。」

お婆さんの優しい言葉にモモは自分の祖母を思い出し泣きそうになっていた。


お婆さんは今日の晩御飯の食材を調達するために外に出てたらしくモモはお婆さんの代わりに荷物を持ってあげ一緒にお買い物へと繰り出した。


自分が食堂を経営していたこと、祖父母のことなどをお婆さんに話すと。


「じゃあもしよかったら今夜のおかずを一品作ってくれないかい?うちに来る人は常連ばかりでねー、モモちゃんが作ってくれたら皆喜んでくれると思うんだよね。」


モモは得意料理を振る舞うべくやる気に満ち、食材を見る目がどんどん変わって行った。



買い物を済ませ、集合時間にはまだ時間があったのでお婆さんに集合時間のことを話し、下ごしらえだけしようと思い宿屋に一度行くことにした。


宿屋につくと何故かリビングにラルとリン、そしてロキ。


やる気に満ちてたモモの目がぽかんとなっていた。






仕事探し編


テツはというと仕事をするといってもなにをしていいか分からず街の中をぶらぶらと彷徨っていた。


しばらくぶらついていると一枚の張り紙を見つけた。

【働き手募集短期でも可】


どんなことをするのか一切書かれていなかったが、なにもしないで帰ったらリンになんていわれるか分からないなと思ったテツは背筋がぞわっとなり寒気を感じ、とっとと終わらせようと決め店内に入って行った。



中に入ると薄暗く、両脇にロウソクが並べられ明かりはそのロウソクのみという風景が広がっていた。


不気味に思い帰ろうかと思っている微かに声が聞こえてきた。

「おまえさん、なにしにきたんじゃい。この街の人ではないようだねー。」

背の低いいかにも魔法を使いそうなお婆さんがどこから湧いてきたと思わせるような登場の仕方だった。



張り紙を見て来たことを告げ、仕事内容を聞いてみると、薄暗くてわからなかったが書店のようだ。

お婆さん一人で切り盛りしてるらしい。

明るくしすぎないのは日焼けで本をダメにしないためらしい。

でも暗すぎてどこになにがさっぱり分からない。



試しに自分の探してる時計について聞くと、それならあそこだ。と位置を特定して教えてくれた。


一人でやってるんだから場所がわかって当然かとも思うが、この広さの中からピンポイントで言われちゃさすがに引いてしまった。


まぁ、他に行くあてもないしここにするかと決めたテツは働きたい旨をお婆さんに伝えた。

するとお婆さんは笑顔で、

「さすがに高いところに本を置いたりするのがしんどくなってきてのぉ、品出しをお願いしようと思うとった。後やってもらうことはお客が来たらわかるからゆっくりしていなさいな」とだけはテツに告げた。


こんな所に客なんかくるのかよと思ってると、さっそくお客さんが入ってきた。



お婆さんと親しげに話している。常連らしい。

その様子をテツが見てると、「あんた、名前なんてったっけ?タツか?ケツか?」


「テツです。なんですかケツって!」

ガクッとテツは崩れ落ちた。


「ごめん、ごめん。このお客さんが探してるのこの名前なんだけどあそこの棚に置いてあるからとってきてくれないかい?」


テツは瞬時に悟った。

このお婆さんは今までは客にあそこにあるからと言うだけだったものを全部俺にパスして取らせに行かせる気だなと。


たまたますぐ客が入ってきただけだ。そんなに来ないだろうと高を括っているとひっきりなしに来る客。一人一人並ばせ次々に本探しの依頼が来る。


今まで客をそれぞれ取りに行かせたからごった返しになってたんだろう。一部荒れてる所があった。


それを、直すのが億劫だったのだろう。

お婆さんは笑顔で並んでいる客と談笑していた。

俺はというと走りっぱなし。


お客が引いた頃にはヘロヘロになっていた。


休憩しなさいとお茶をだしてくれたが横になるだけでこれといってやることはない。なんたって一面本しかないのだから。


ピンポイントで見つけてもらった時計の本でも見ようかと思い、横になりながら読んでみた。


似たようなものはあっても同じ時計は見つからなかった。


他にないのか聞いて見ると一冊お婆さんが投げてきた。

「これぐらいしかないよ。」



投げてきた本を見てみるも同じ時計は見当たらなかった。


よくみると作者が同じなことに気がついた。

名はパト。


「なぁ、婆さんパトって作者知ってる?二冊ともこの人書いてるんだけどー」


「はてねー、わたしも本は好きだけどパトかい?聞いたことないねぇー。」


パトについては名前しか情報を得ることが出来なかった。


お客も落ち着き、婆さんに日当を貰い談笑していると集合の時間になったのでテツは待ち合わせ場所に向かうことにした。



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