お痒いところはございませんか
「お痒いところはありませんか?」
今日も美容院でそう訊かれ、私は特にありませんと答える。
それはいつものことだけど、正直言っていつも同じ所がかゆい。
そしていつものことだけど、そこだけは絶対に手が触れず、最後までむず痒い感覚が残る。
もう何年も前から、頭頂部やや左の後側、自分の頭が角ばっていると仮定すると、左後の角がむずむずするのです。
どう洗ってもらっても、絶対にそこに触れられることはない。指の圧が強くても弱くても、なぜかそこだけ存在が消えてしまったかのようにきれいに無視されてしまう。
いつもいつもあまりにも当たり前に「触られない」ので、特に気にしたこともなかったのだが、今日になって急にものすごく気になって(家に帰ってきても痒かったので)、初めて丹念に触ってみた。
おや、というくらい触れた感触がない。
元々、そのあたりの触覚がマヒしてるのだろうか?
触れば触るほど、何か分厚い皮が一枚上から覆いかぶさっているような感じがしてくる。
範囲としては直径5センチ内くらいかな。
しかし、頭頂部側から徐々に指を降ろして問題部分に刺激を与えると、ようやくわずかに痒いのが和らぐような気がする。
触れかたによってはようやく感覚を取り戻す、身体の中でも『消えた部分』。
まるで亡霊のようではないか、それにしてもスケールちっさいオカルト、と思いながら何度も頭頂部を指でまさぐっている私でした。
うん、まだ全体的には生きてますってば。