不運の連鎖ならぬ帯電日誌
朝から米を買いに行かねばならぬ。
定時の所要ついでに、約束した農家へと出かけたいが持ち金は底をついた。
財布の中には4円しかない。なのに8500円必要。
車で出動、朝のひと仕事を片付けてさて、米を買いに……そうそう、財布には4円しかない。
非常用の金融機関Aに寄ろう。
待てよ、あそこはATMが確か8時45分からだ。
40分ほど、どこかの木陰に車を停めて休もう。珈琲飲んで。
って、だから所持金4円だってば。
バッグの中をごそごそ漁る、天に通じたのか底から百円玉1枚発見。
早速行きつけのファミマX店にホットコーヒーを買いに、と思ったが、あまりATMの場所から離れたくない、わずかに近いY店に行く。
ホットのSサイズを頼んで百円払ってから、いつものX店で使っているポイントカードを出す、が、こちら使えませんすみません、と。
よくみるとちっちゃく「X店限定」と書いてあった。
しかたなくカップを持ってドリップマシンにセット、ポチっとな。
はっ、と気づく。アイスを押していた。
店員いわく、ホットのカップでも構いませんよ、ただ、量が少なめでかなり苦いかも、と。
氷入りのアイス専用カップに替えてもらえまいかと訊ねたら、もう一度買って貰わねば、とインギンな口調で真っ向拒否。
だからもう金がないって言ってんだろー、とヨタモン風になって店を出る。
気を落ちつけるため、少し離れた河川敷に車を停め、名実ともに苦い珈琲を飲む。
すぐ終わる。
気を落ちつけようと煙草を出す、が、ライターがない。
しばらく白い棒を咥えたままぼんやりする。
新しく思いついた創作のメモでも書いていよう、とメモ帳を出す、が、いつも持っているはずのペンがない。探す。しつこく探す。
ようやく、ダッシュボードの片隅に子どもの教材付録についていた赤ペンを見つけ、ちみちみとそれで書き始める。
1行いかないうちに、木漏れ日がまともに顔に当たり始めた。
仕方なく車を少し移動。だが、注意力が足りずペンを落としてしまい、シートの下に入り込む。
煙草を出す……そして気づく。
ライターがないんですってば!
携帯のアラームが鳴って、ATMの始動時間を告げる。
ああ、ようやく動き出せるわ。
という細かい不運の連鎖はよくあることでしょうが。
これは連鎖というより、どちらかというと『不運の帯電状態』と感じている今日この頃。
連鎖は断ち切れば終わるが、帯電はなかなかお終いにならないというか。
油断してると、すぐピリリときますし。
こう言う時には、とにかく知らん顔して運命をやり過ごすしかないのでしょうね。
たまに、大地にぴたりと手のひらを付けて、溜まっている分を放電したりね。
まあ、今日はまだ可愛い方だったな。
と、起きたばかりの交通事故現場脇を車で通りかかりながら、その方々の不運も近いうちに去りますように、と少しだけ祈ってみたり。
みなさまの所にも不運が溜まりませんように。