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粒つぶになって散って集まる、というイメージについて

 風呂で寝ました、またもや。


 気づいた時にはぜんぜん普通な感じがしたのに、鼻の穴にはコルク栓のごとく水が詰まっており。かなり危険な状態だった、かも。


 起きられたのには、訳がありました。


 その前に、ちょっとばかり。

 この風呂ではひとり、事故で亡くなっております。

 死にカタログという本にもありましたが、自宅での死亡原因で意外と高いのが、風呂での溺死、らしい。

 認知症の父が、やや認知力は回復して、しかし体力が落ちていた頃にひとり、風呂に入って立ち上がろうとして失敗したのか、そのままうつ伏せで風呂に倒れ、そのまま心肺停止に。

 その時家族は全員揃っていたにも関わらず、です。私はちょうどカレーを作っておりました。

 ちびまる子ちゃんのオープニング曲の流れる時間帯でした。


 それでも風呂はそのまま使用しており、今でも当然、みな何ごともなかったように入浴しております。


 その場には何か残っていないのか? そこで、人が亡くなったのだよ!?

 と叫んでも家族の誰もが「え?」みたいな顔をしてから、ふっと

「それでも人は、生きてイカネバ」

 みたいな目になるのです(まあ妄想半分ですが)。


 確かに、誰かが亡くなったところでナニカがあるのならば、この世のすべての場所で、ナニカが発生するのでしょうよ。


 そこでふと思ったのが、意識の無くなった瞬間、戻った瞬間のこと。

(恥ずかしながら、私も事故関係で数度もありましたが)ふつう人は眠りにつく時、そして目覚めた時に何度も経験するでしょう。

 そんな時、どのように『自分』は失われ、また、戻ってくるのか?


 私はいつも何となく、眠りについたとたん、自身が細かい粉状になって散って行くイメージがあります。

 そして、目覚める時にはそれがぞわーっと寄せ集まり、また元の自分に戻る、という感じ。

 粒つぶのひとつひとつには全て、自身のDNAというのか、積み重ねた記憶から思念から、更に生まれる前から引き継いだものなどが載っている、というか。

 

 先日、海岸の脇にある道路をドライブしていた時のこと。

 空は晴れ、風はそこそこ。深く青い色を沈めた海は細かい三角波をたて、白い波しぶきが時おりそこを縁どっておりました。

 そんな時、滑らかな道路前方に白みがかった煙が、立ち現われては消えていくのが見えました……まるで水蒸気が流れて上がっていくかのように。

 よくよく見るに、煙の正体は砂浜から上がってきた砂のようでした。それがわずかにまとまり、強い風にあおられ、不思議な波模様を描きながらまた大気に消えるあり様が走る車の前に次々と立ち現われたのです。


 無くなったようにみえる人とか生き物とかはこのように、散らばりながらもまた集まって、また散っては集まり、それぞれの粒が望む場所に、ついには戻ってくるのでは……


 だから、離れた場所で無くなったとしても、その粒つぶはバラケながらも次第にそれらの『あるべき』場所に戻ってくるのかも、知れない。

 想う場所が多ければ、それなりの配分で、少しずつ別れて戻ったりして。


 風呂で亡くなった人も、風呂好きでした。だから風呂場にいくばくか。

 故郷のことも思っていたので、もちろん故郷にも何割か。

 山が好きでした。山にも少し、戻っているかもしれない。


 私がふと目覚めて、溺死を免れた理由とは。

 

 一瞬、暗がりの中で鋭く響いた『ピー』という警告音。

 その音で私はふいに目覚めたのです。

 何が鳴ったのかは全く判らず、ただその音にびっくりして飛び起き、あたりをきょろきょろとうかがい、それからよくよく考えて。

 そんな音をたてる機器は、うちにはない。

 

 寄り集まった粒つぶが、

「そこで寝るのは、まずいべ」

 と、せいいっぱいのエネルギーを使ってくれた。そう信じましたよ。


 ありがとうございます。

 まだまだこの世で粒つぶを固めて生きていかねば、とつよく思いました。 

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