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近所のがらがらどんを応援します

 『三びきのやぎのがらがらどん』のお話をご存じの方も多いのでは。

 ざっくり冒頭のご紹介を。


 大中小の大きさの三匹のやぎ、名前はどれもがらがらどん。山の草地に行くのに、橋を渡らねばなりません。まず橋を渡ったのは小さいやぎのがらがらどん、しかし下で待ち構えていたトロルに喰われそうになり……


 我が家のすぐ近くにも、これと似た状況の小橋があったのさ(今呆れた顔したね、うん?)。


 それに気づいたのは、先日架け替えられたばかりの橋を渡り、わんこの散歩をしていた時。

(架け替えられた橋の過去について、ごくごく個人的感想の記事はこちら→

つらつら草/架かっていない橋は渡れないの話http://ncode.syosetu.com/n3931ca/13/)


 すでに先月渡り初めは済んでいて、人も車も細々と利用している小さな橋。

 そこを犬を連れて渡っていった。

 すると、その橋の向こう、土手ぞいの草地のど真ん中に、何か白い影が動いているでは。

 大きな犬か? それにしてはずっと同じような場所に立っている。


 できるだけ近づいてみると、それは先日から近所でよく見かけていた仔ヤギでした。 


 なんとメルヒェン。なんと牧歌的。

 犬とともに少し近づいていった私に気づいたようで、頭を上げ、じっとこちらを見てからまた気にせず草を食んでいる。

 よくよく見ると、以前他の場所で見かけた時よりもふた回りくらいデカく、たくましくなっているでは。

 確かこのヤギ、元々の住み家は橋の反対側だった。日中は橋を渡った側の草地に放され、夕方またねぐらに帰るらしい。


 これで思い出したのが前述のがらがらどんのお話。

 橋を渡って家に帰る際、つい、下を覗き込んでしまったよ私ゃ……ほんと、昔からここにトロルが棲んでいるのでは? デカくなってきたヤギ、実は橋を渡る度にトロルと

「まだまだ、草を食べて、うんと太りますよ。待っていてください」

「オマエこの前も同じこと言ったな……」

「ほらこんなにまるまるしてきたじゃないですか、もう少ししたらもっと肥えますから」

「……しかたない、待っててやる」

 こんなやりとりをくり返し、でも実は最強になった頃トロルをひと突きでやっつけてやろうと画策しているのでは?

 そう思うと、まっ白で可愛いヤギの目つきが妙にふてぶてしく見えるから不思議。


 橋の正式開通前に、実はこの小橋を一時的に開放した晩があった。

 それは夜祭り開催日。駐車場の関係で誰の判断かは知らないが、私が所用から帰ってきた夕刻には、多くの観光客っぽい人たちが誘導に従ってぞろぞろと真新しい橋を通っておったのよ。

「え? 開通式もすんでいないのに??」

 と、その時は思って、今までさんざん回り道させられていた身として、正直ちょっとむっとしたのは確か。

  

 その数日後ようやく橋は正式開通。渡り初めも執り行われたらしい。まあ、『渡り初め』という儀式、由来もはっきりせず、儀式の内容も様々のようですが。

 例えば普通伝えられるのが、三代夫婦揃って、とか、長寿夫婦とか、末長くという明るい祈りが感じられるものが多い。たまーに、日本のどこか、大昔かと思うが、子どもが十二人いる家族が揃ってできたての橋を渡るのだが誰か一人が生贄に……という例を見つけたり何だり。ブルブル


 ここの式典も実際どのように執り行ったのか、その日は外出していたため全然見ておらず残念だったが、後から聞くところによると、地元の子どもらが歌や踊りを披露したり、餅まきなども行われ賑やかに開催された様子。

 お祭りとしての要素が大きかったようで、盛況だったのももちろん悪くないのだが、個人的には、元々架けたばかりの橋に対しては神事や呪術的な儀式が執り行われ、後のちまでの安全を祈念するというところが実は主だったのでは? と感じてはいる。


 お祭り騒ぎ主体と言えども、何か思う所あるからこそこんな儀式を行うのだろう、と考えついて、やっぱり橋って何となく怖い、橋の向こうのなぜか誰もいない草原で草をもぐもぐ食んでいるヤギもどこか曰くありげで通る度にじぶん、橋の下をそっと覗いてしまったり、そして正式開通前の暗闇をぞろぞろと渡ってしまった人たちは今ごろどこで何を……とか、ひとり勝手に妄想だけが暴走している日々なので、あった。


 うん、ひとりひんやり。

 がんばって早く大きくなってくれ仔ヤギちゃん。

 ちょきん、ぱちん、すとん。

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