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笛吹いても踊らない正義の話をしよう

何の教訓もありませんで申し訳なし。

 ととは高校一年生。そしてついでに、重い知的障害がある。

 それでも持ち前の明るさと、人好きのする性格で、毎日楽しく暮らしていた。


 ととの兄・とらは高校二年生、妹ぴかは中学二年生。

 母ヨシコが、この三人を車に乗せて少し遠くから帰宅している時のこと。


 気分は最低だった。車の中には、疲労、空腹でイラついた空気が蔓延していた。出先でも特に楽しいことがあったわけではない。家に帰ればそれぞれやらねばならないことが山積み。

 ちなみに、ととだけは一人で楽しげに、CDの曲に合わせアルトリコーダーをぴーぷー。

 もちろんデタラメ。本人は曲にあわせているつもりなのだが。

 ちょっと、いや、かなりうるさいがすでに家族間ではその雑音は当たり前のBGMとなっていた。


 そんな中、ささいなことがきっかけでとらとぴかとのいい争いがはじまった。


 とら「その、兄を兄とも思ってない言い方は何かなー」

 ぴか「だったらアニキらしい立派な態度をとれやハゲ」

 とら「あ? 今、なんて言った? つうかそのイヤホンオレのなんですけど」

 とと ♪ぴーぷーぴーぷーぷぷぷーー

 ぴか「すぐそう言うけど捨ててあったくせに。全然だいじにしないよね」

 とら「泥棒、どーろーぼー」

 ぴか「うるっせーハゲ」

 とと ♪ぴーぴぴー

 母「とらもぴかも静かに。声が大きい方が勝ちなんかい?」

 とら「だってぴかが元々取ったじゃんか」

 ぴか「そういうお兄、いや、ハゲだってすぐウチの取るじゃん! そのパンツだって」

 とら「このGパン、キミのじゃないんですけど」

 ぴか「うちのなんですけど、お母さんからもらったし。つうかうざいわボケ」

 とら「どっちがだよ」

 そこに母が一喝。

「だから声を張り上げるな! 世の昔から、自分が正義だと思うと声をデカくすりゃいいなんて思ってる連中が多すぎるんだよ」

 ぴか「だってこのハゲが」

 とら「あ~あ~あ~」

 母「うるさいな! だからいつまでたってもこの世から戦争が無くならないんだよ!!」

 ぴか&とら「「お母さん一番怒鳴ってんじゃん」」

 とと ♪ぴーぴーぴーぴー

 ぴか&とら&母「「「うるさい!!!」」」


 しかし、笛を吹いているのが一番、平和的な態度なのかもしれない、と。


 ちなみに今日も、ととは助手席で笛を吹きまくっていました。

 母は聴かないフリして、黙々と俗世間というハンドルを切り続けておりました、とさ。



 意味のないメロディー、踊りようがないのですが、それがいいのでしょう。

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