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架かっていない橋は渡れないの話

 つつましい田舎の道の、小さな四つ辻から30メートルほど進んだところ、たいして大きくない橋がありました。

 老朽化により橋が取り外され、新しいものに架け変えることとなりました。


 先に橋を落とすのでもちろん道路は通行止めとなります。

 いくら小さな橋とは言え、河原からの高さは3メートルくらいあって、川の水量も馬鹿にならない。しかも工事が始まって、橋工事現場手前の四つ辻にはものものしいガードフェンスや工事表示板などが立ち並んだし、これはけっこう大がかりな工事になったなあ、とヤジウマは現地に見物に向かいました。


 看板には、なになに……

『通行止め 平成27年1月27日まで』と。

 その時は秋。数ヶ月で橋がかかるのか、案外早いもんだね、と誰もが思いますよね?


 ところが、工事の様子を見るにつけ、なかなかはかどった様子が感じられません。


 1月も20日を過ぎても、橋はようやく撤去されたものの、工事現場には重機が並び、掘り返された土はそのままで、特に橋らしい建造物は見当たらないのです。


 期限5日前、3日前……


 これはもしかして、「墨俣一夜城」レベルのミラクルが見られるのでは、期限日の翌朝にはここに最新式の橋が取り付けられているのではないか……


 そのうちに、通行止め期限の1月27日がやってきました。


 わくわくしながら様子を見に行くと、現地には、何の変化もありません。

 しかし、よくよく見てみると、なんと看板だけ


『通行止め 平成27年3月25日まで』


 と替えられていたでは。


 とほほほほ。


 それでも三月末をひたむきに待つ私。橋がないと微妙に不便だし、落ちつかない。


 そしてついに3月25日となりました。


 ちなみに、今回も特に工事の進展はないようで、川岸には相変わらず何やら工事関連のもろもろが積み上がっております。


 橋は、とみると、やっぱりない。


 もしや、と看板をみると今度は


『通行止め 平成27年5月25日まで』ですって。


 いったいどこまで引っ張るつもりや、●×建設!?


 ここまでくると、5月25日以降に何かを期待するのは逆に間違っているような気もしないでもないのですが、やはりそこは田舎者、大人しく期日を待つことに。


 ついに来ましたね。5月25日。

 今度は、期日前の五月になると工事関係のみなさん、少しはやる気になったのか、眼に見える変化が現れ始めました。護岸に白いコンクリート基礎ができていたり、脇の小路にガードレールが新調されていたり。

 川のまん中に支柱を立てず、道路から道路に直接橋を架けるらしいので、ここで一気にどっかとおニューな橋を据え付ければもう完成なのでしょう。


 そしてついに、5月26日早朝。

 急いで四つ辻にかけつけてみると……


 工事用看板のいっさいが、撤去されておりました。

 表示板も、ガードフェンスも。

 ただ、30メートルほどの道路の先には、ぽっかりと川に向かって切り立った崖状態の護岸が出来あがっているのみ。

 もちろん、橋はありませんでしたわ。


 通行止めについては解除されたのは事実で、橋が出来あがるとは誰も言ってませんよ。


 そんな、すがすがしい朝の空気に満ち満ちた田舎の川辺でした。



 国土交通省とか農水省とか、工事関係者のみなさん、地元自治会とか、個人の地主さんとか、色んな方がそれぞれに職務や義務に忠実に立ち働いていたらしいのも事実。

 しかし、ただの護岸だけの寸断された道路がいつまでか分からないあいまいな期間、何の説明看板もなく置き去りになっている状態は、周辺の何もきかされていない人々から見るとまるっきりの不条理世界でしかないですよね。


 それぞれの事情から辿ると、こんなオマヌケな経緯に至った理由もわずかに見えてきたりしますが、それでも不便なことには変わりない。

 ただ、誰をどう責めればいいのか、やはり難しい話ですね。

 憎むべきは、他人に利が及ぶのが面白くなくてわざと妨害しようとする輩や、何も詳しい事情も知らずに、ただ尤もらしく周りを惑わすような噂や見解を流す連中。


 なのですが、まあ、私も人のことはあまりとやかく言えず。


 とりあえず今後は、偏向した噂に惑わされず、常に幅広い所から情報を集め、バランスよく分析せねばならないでしょう。

 そして、できていない橋は渡れないのだ、という当たり前の事実を冷静に見つめることでしょうかね。


 他にその川を渡る手立てはいくらでもあるのですから。少し離れて周りを見回さないとね。


 つまりは、現実社会とはこんなものなのだろうなあ。

 

 と、何となく身に沁みた初夏のできごとでした。

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