ハイキング
秋に登った山へ、今日もハイキングへ行くの。
リュックに水筒、おにぎりを入れて。
おにぎりの海苔はぱりぱりが好き。
だから普段のお弁当には海苔は別にして持って行くの。
今回は少しでも荷物を少なくして向こうで簡単に食べられるように、海苔も巻いて持って行く。
これすると、お米のせいで海苔がしめしめになるし、何より歯にくっついちゃいやすくなる。
それでも今日は良いんだ。
だって誰にも邪魔されずにのんびりとハイキングするだけだもの。
おろしたてのツバの広い登山帽。
偶然見つけた好みのくすみグリーンの帽子。
見つけた時に決めたんだ、久々にちょっとお散歩しようって。
「よし」
準備万端。
家から早速これをかぶって、いざ出発。
ここはね、可愛らしい高山植物が沢山あるし、冬だと小さな動物たちも見られるんだって。
前回来た秋に、ホームのハイキングコースにしようと思ったくらい良かったの。
山にはわざわざ電車を乗り継ぎをしなきゃいけない。
だから今日まで延び延びに。
駅から少し歩いてふもとに辿り着いた私。
のんびりキョロキョロ歩いていると、「はっはっ」とリズミカルな息遣い。
軽快な足音をさせた、動きやすそうな格好をした男性が追い抜いていったわ。
きっとあれがトレイルランニングね。
それからも登山道から付かず離れずでキョロキョロ移動。
少女が手を引く大人の男性にスマホの画面を向けている。
「ほら、こうやって写真を撮れば簡単にお花の名前調べられちゃうんだから」
少女はおじいちゃんらしき人に得意げに。
おじいちゃんなんかにお花の名前教えてもらえなくたって、調べられるもん。といった風情。
あ、さっき追い抜いていったトレイルランニングさん。
彼が顔の首位を汗でてらてらと光らせて登山道から降りてきた。
私は少しだけ道の端に移動し、更にゆっくりと足を進める。
彼はすれ違いざまに感謝の意とも挨拶ともとれる軽い会釈を。
周囲の木々と爽やかな彼の汗の混じった香りすら感じらた。
ふと気づいた。
他にあまり人はいないみたい。
だからトレイルランニングさんも、きっと走りがいあるよね。
私たちだけだけの山だな、そんな風に思ってクスクスと勝手に楽しんでいたの。
すると後ろからガヤガヤ声が。
振り返ってみると中年女性の団体だ。
「ほらほら早く登らないと、早い時間に山頂まで行けないわよ。
それにあんな風にのんびりしていたら周囲に迷惑でしょう」
聞こえてきた女性の声で私の顔が赤くなった。
もう植物の彩も目に入らないよ。
下を見てトボトボと。
もう少し行けば休憩場所があるから、そこでおにぎりを食べて帰ろう。
景色眺めたら、ちょっとは気分が良くなるかも。
「よし」と、前を向いて休憩場所までまたゆっくりと歩く。
すると「通りまーす!!」と大きな男性の声。
道を広がりあるく団体女性地への、追い抜きざまのトレイルランニングさんの声だった。
また私の隣を素早く駆け抜けていった男性。
彼の背中が小さくなる。
するとまた後ろから女性の声が響いてきた。
「さ、あの走って行った人みたいに早く行きましょう。じゃないと早い時間に帰れないわよ」
ガヤガヤとおしゃべりをする女性たちに追い抜かれると、なんとなくだけれど周囲の木々にまた目が行くようになった。
そうだ。
おにぎり食べて帰る道では、またのんびり植物たちを見学していこう。
少しだけすくめてた肩を楽にして、休憩予定の場所までゆっくりと私は歩いて行った。




