神様の足下に
神様の足下に
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……聞いていたとおり、不遜な男でした。魔導師として、霊能者として活動するのであれば我々と同類、提携関係にあってもおかしくはないのにまるで協力の意思を示さない。あくまでもビジネス、支払いと契約書がなければ動こうともしない。腕が悪ければ相手にしないところですが、そうではない。私も上の指示がなければ、彼とは関わらないでしょう。灰色と呼ばれる魔導師は、事情だけは聞こうと言っていました。私がここまでの事情を話すと、そんなところだろうな、と吐き捨てました。
できないことを請け負うから外注しないといけない。看板を出す前に出していいか考えろと不満そうでした。許されない発言ですが私は主に許しを乞い、十字を切りました。灰色は私を見てあきれていました。
「やめろ。オレは地獄に落ちたくない」
灰色は契約書を手に取って、書面を見もせずに出て行こうとしました。お前らじゃできないだろう、仕方ねえヤツらだ。契約は成立したようで、私の仕事は終わり。灰色に対して、きっとお許しいただけるでしょうと言っておきました。玄関で靴を履く灰色は、私に聞きました。
「革靴を履くのか?」
……ええ。何かおかしいですか?そう聞きかえすと、灰色は特に何もおかしくないと言います。ゆるめのスニーカーを履きながら、灰色は私に聞きました。
「本山に行ったことはあるか?」
「お偉いさんに会ったことは?」
「どんな靴履いてるか見たか?」
私には興味のない話で、契約ができたなら後はなんでもいい。灰色は私に向かって、幸運を、と言い残しました。自分の胸の前で十字を切って。結局はそこに落ち着くのだと思っていたのですが、ふと調べたんです。何もあるはずがないと思って、灰色の言っていたことを。
……何もありませんでした。本山の伝統衣装は、一般的とは言えない装飾品ならいくらでも調べられる。しかし、足下が……あまりにも特徴的な服装に隠れて、見えません。本山に歴史的にはどんな履き物があったのかも、調べてもわかりません。メーカーすら特定することができず、規模から言って国内で作るはずがないのに輸送ルートもない。本山の靴……いったいそこに何があるというのでしょうか。私は契約書を頼りに灰色を探しましたが、すでに仕事が終わり支払いも済んでいる今、もう連絡がつきませんでした。




