08
海の中を滑るように進む
音をなるべく立てずに、少しでも存在を隠す為
「艦長、敵艦の動きが止まりました」
「止まった…?やはりあいつらの目的は俺たちを沈める事じゃないのか?」
「その可能性は高いですね…陽動か、もしくは本命か…」
「どちらにせよ敵艦が止まっているという状況は俺たちに有利に進むはずだ。葵、敵艦の向きは?」
「はい、船首をこちらに向けて静止しています」
雷撃戦や爆雷の投下をする場合、通常なら船尾を向けてくるのが普通だ
妙だな。まるで、無防備な前を狙ってくださいとでも言っているようなものじゃないか
「相手への警戒を厳としつつ速力を少し上げろ。あとは千夏の判断に任せる」
「えっ私!?」
「そうだ。お前は葵と同じぐらい賢いんだからこれぐらい操艦補助としてできて当然だろう?」
「…そうですね。できて当たり前です。速度を20ノットで固定!なるべくはやく浮上できるように急いで行きましょう!」
「「了解」」
「…にしても不気味ですね。私たちが逃げているのにも関わらず追いかけてこない敵艦なんて聞いたことありませんよ」
自分たちに攻撃する姿勢を取らず、かと言って追いかけてこない。冷静に考えればこんな動き方良くないに決まっている。敵は何が狙いなんだ…?本当に、資源の消耗と情報収集だけが目的か…?
「…駆逐艦[架]から飛翔魚雷が射出されました!!」
「「!?」」
飛翔魚雷とは、以前紹介した通り空を飛ぶ高火力の魚雷のことである
「いくつ飛んでいった?」
「あくまで推定ですが、4〜6本かと…」
「…昔見た報告書には追尾機能はついていないと書かれていた。今はこれを信じるしかないようだな」
「…どうしますか?」
「こちらも新型兵器を使用して抵抗するしかない」
…正直これはあまり使いたく無かったのだが…しょうがないか
「本気ですか!?あの兵装はまだ試験段階で動作も安定していないんです!それに…」
「そんな事を言っている時間なんて無いんだ。俺の身体なんて知った事じゃ無い。やるぞ」
FSCを急いで起動し精神をドッキングする
自分の中に、とあるボタンが置かれているような感覚、そのボタンを押してしまえば、新型兵器は起動される
この兵器の特徴については、また今度説明しよう
その名は―――――
「起動!!」
その瞬間、大きな脱力感と共に艦内に轟音が響いた…
「艦長、目が覚めませんね…」
海音がすごく落ち込んでいる
それもそのはず
艦長が気を失ってからそのまま丸一日が経過したのだから
あの後新型兵装のおかげで飛翔魚雷の迎撃に成功したものの、艦長が倒れ艦内はパニック状態に陥っていた
そうして慌てているうちに、駆逐艦[架]は音もなくどこかへと消えていってしまった
今は無理な潜航は控えながら航行している
「私が、あの時に違和感に気付けていれば…」
「…あれはしょうがないわ、艦長ですらパニックになってたのよ?」
雫はそう言うけど、操艦補助としてあの時の違和感に、艦長の指示に無理があったことに気付いていれば…
「…そうですね、今だけは自分達の過ちは忘れて艦長を称えましょうか」
今回の作戦で得た情報が一つだけある
それは、FSC起動者が、艦の暴走により意識を失った時に限り自動解除されると言う事
そのおかげで艦長は医務室で安静に寝かされている
「雫、今私たちはどこにいるんですか?」
「もうすぐでタスマン海を抜けるわ」
「つまりもうすぐで艦長のご友人の艦に合流すると言う事ですね?」
今は海音が艦長の代行をしてくれている
私が聞こうとしていた質問を先に越されてしまった
「…全員各持ち場についてください!今から私たちは補給艦と合流すべく潜航を開始します!」
そうして一番の支えである艦長を一時的に失った伊13は、海の中へと消えていく
最近夜に起き続けることができなくなりました




