03
調理場を後にして食堂に行くと既に全員が座って待っていた
「今日はまたカレーなんでしょ〜?」
「そうだね。でも、たまには連続カレーでも良いんじゃないかな」
各自楽しそうに雑談を楽しんでいるようだな
「今日はハンバーグカレーだそうだ」
「そうなんですか!?やったー!!」
主に海音が中心となって喜んでいる
やっぱり飽きてたんだろあいつ。でなきゃこんなに喜ばないだろうしな。まぁ、それをわざわざ言うのは野暮というものだ。変にちょっかいかけて嫌がられようものならたまったもんじゃない
船の中では信頼と協力関係がいちばん重要なのだ。さすがにそれぐらいで崩れるものではないとは思うが、別にわざわざ言う必要はそもそも無いからな
「喜んでいるところ申し訳ないが、次の作戦を考えるぞ。良いな?」
「了解しました」
よろしい
「俺たちが次に向かうのはインドネシア西部にある新ジャカルタ港。知っての通りここは第二次世界大戦前に海底に沈んだ都市や陸がいくつもあるため、潜水艦は一度浮上してからインドネシアの複雑な海路を渡らないといけない」
「なるほどなるほど、つまり普通に行ったら他国にバレておしまいって訳ね」
「そういう事だ。それを防ぐための策が3つある。わかるやつはいるか?」
「うーん…わかんないかな…?」
他のやつらも不思議そうな顔で俺の方を見ている
「1つ目は強行突破。インドネシアは資材などが豊富にあるが、海域が広すぎで十分に管理しきれていない癖に戒網に好きがある時間帯がある。その時間帯で全敵艦を沈めるという策。だがこれは世界中を敵に回すため得策とはとても言えない」
「確かにね…」
「そこで2つ目、船底が海底にあたるギリギリを潜水してインドネシアまで行く。これは前者よりやりやすいだろうが1歩でも間違えたら即沈没だ。これも良い策ではない」
正直、インドネシアがまだ俺たち伊13の脱走を知らない可能性も無くはない。だが日本は東南アジアに近いということもあってインドネシアとは戦前から深い親交がある。ほぼ相手も自分たちの脱走のことを知っていると考えて間違いない
「じゃあどうするの?良い策がなくてもその中から1つ選ばないとダメでしょ?」
「ちょ、落ち着けよ。2つの悪い策はただの前置きだ。最後に3つ目の策があるだろ?」
「あっ…確かに…」
3つ目も、正直言ってしまえばあまり得策とは言えない。その理由は…
「3つ目は東南アジアを迂回してオーストラリアの下を通ってインド洋に行き、そこからジャカルタ港に入るという策。おそらく、これが一番安定してはいるが、もし戦闘になった際残りの資材的にも一番危険が伴う恐れがある」
「…正気?インドネシアに行ってからチリに行くとなると航続距離的に資材も無駄になるし、正直言って自殺行為じゃないの?」
「あぁ、知ってる。俺もそう思っていたよ。俺の親友から入電が来るまではね」
「…?」
「今俺の友人が艦長として補給艦に乗り、南極付近でオーストラリア海軍の補佐をしているらしい。日本海軍はオーストラリアの海軍を強くしようと躍起でな、今はオーストラリアと演習だってさ」
「いや、でもそれじゃ日本にもオーストラリアにもバレるんじゃ…」
「それは大丈夫だ。補給艦の真下にピッタリ張り付いたまま補給を行えばいい」
「「「は?」」」
「補給艦と言っても、そいつは移動式ドックなんだよ」
「…嘘でしょ?バレるでしょ…」
「実は、ついさっき1つ目の策と2つ目の策を合わせると言った案を考えてみたんだ。厳しいんだよ。隙が出る時間とジャカルタ港に着くのに必要な時間とを照らし合わせたら」
「なるほどね…」
そこら辺は一度やってみないと分からないから行ってみてダメだったら戦線から離脱すればいい
「別に全部を成功させる必要はない。オーストラリアまで行ったら無理に潜水せずに水上航行すればインドネシアになどすぐに辿り着ける」
「…わかったわ。それで行きましょう」
俺は一旦調理室の方へ向かい美波へ作戦の趣旨を伝えると
「了解しました!でも艦長、このカレーたちはどうすれば…」
「…すまない。今夜温め直してみんなで食べようか」
本来ならスケジュールや時間が厳密に決まっているため今回みたいに各々の意思で動くというのに慣れていないのだ。これは俺の落ち度だな…
「はい!楽しみにしててくださいね!」
それを聞いた俺は後ろへと向き直り発令所へと足を運ぶ
「よし、全員いるな?」
「はい!」
「了解。総員、潜水配置につけ!」
「「潜水配置!」」
「現在地硫黄島。所定位置まで水上航行」
「了解、水上航行」
さて、俺はFSCを起動しないとな…
「俺はFSCを起動する。起動完了次第スピーカーの方から指示を出す」
「了解です」
ま、起動と言っても隣の装置に座って手足を固定したあとはもう自動的にドッキングされるんだけどね
《…無事起動完了、現在地は?》
「所定位置に着きました」
《了解、今から潜航を開始する。潜航用意》
「「潜航用意よし」」
《潜航開始》
「「バラスト注水、潜水を開始します」」
《深度五十で水平》
「「了解、五十水平」」
そうして伊13は静かに海の中へと姿を消していった…




