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「…敵艦ロスト。魚雷爆破の音が大きすぎて他の音が聞こえません…」
「仕方がない事だ。無理に今から聞くことはない。耳が悪くなるから1分ほどヘッドホンを外しておけ」
「了解しました」
…魚雷の音がうるさくて何も聞こえないこの状況で、敵艦も同じように魚雷の爆発音の影響でソナー等が使えなくなっている可能性もゼロではないのだが、下手に動くとこっちの場所を探られ攻撃される可能性がある
そもそも自艦が魚雷の爆圧で自爆するギリギリを狙って撃ったのだから、相手の方に大きな影響が出ている可能性は少ないと思うのだ
「千夏、残り時間は?」
「はい。第二、第三兵装のリミットはあと25分です」
…だが、残り時間を計算に入れるとそんな悠長な事は言ってられないのかもな…
「まだ少ししか時間は経っていないんだな。よし。今から全力で逃げるぞ。破損による水中抵抗の増加によって速力は落ちているかもしれないが、そんなことを気にしていたらおそらく沈む。最大戦速。深度を1500に設定」
「1500ですか!?圧壊する恐れがありますよ!?」
「構わない。どうせ1500メートルまで潜航することは出来ないんだ。ブラフとして取り敢えず1500に向かうぞ」
「了解…?」
今出せる最大の速度を出して海中に潜っていく伊13のソナードーム付近で軋む音が鳴ったりしている
「艦長…本当にこのルートで大丈夫なんですか?」
「…千夏はどう思う?」
「私は…どうすることもできなかったと思います。残り時間的にも、敵艦に包囲されている今の状況も相まって、玉砕覚悟で攻撃に回るもしくはその場にとどまるという選択をしていたと思います…」
「玉砕覚悟は…どうかと思うが、その感覚はおかしくない。ただ、今のこの状況を変えるためには自分から行動を起こし相手を混乱させる必要があるんだ。ただ自分の都合の良いように動くだけじゃ、相手に動きを先読みされていた時にしんどくなるだけだからな」
「なるほど…」
…葵の動きがずっと固まっている
波形のところをよく見てみると魚雷の音がまだ収まっていないせいで周りの音を拾えないらしい
「…海音、魚雷の爆発音ってこんなに何分も残るものだったか?」
「そういうものも作られてはいますがうちの艦は搭載していませんし、大抵の魚雷は爆発してから長くても数十秒で収まります」
つまりこの爆発音は、何者かによる妨害だとも考えられるわけか…
「宵闇…そこまでするのか?」
俺の知っている宵闇とは少し違った戦法だな
基本的に宵闇というのは我々の知らない特別な技術を使って我々の攻撃を尽く防ぎながら圧倒的火力で殲滅してくる、力で押し切ってくる常識はずれの敵と言うイメージが国の中では出回っている
そんな彼らが、いきなり妨害という面倒臭い手段をわざわざ使ってくるのだろうか?
作戦を変えたと言うにはあまりにもいきなりすぎるというか、自分達が今まで一度もやった事がない戦い方をいきなり実践に入れるのは、非常に危なっかしい
………
…まさか。まさかそんなわけ
…
「…お前らよく聞いてくれ……宵闇の判断速度や声真似の精度が、あまりにも人間離れしていないか?」
「…どう言うことですか?」
千夏達が不安そうにこちらを覗いてくる
「…今までやったことのない作戦をいきなり実戦に投入する頭のキレといい、俺を騙す時に使ったあの声の調声といい、たまに意味のわからない動きをするところが、今発展してきているAIの特徴にピッタリなんだよ」
…俺たちは、人間でもない敵と戦っているのか…?
人間同士の対立を生み出しまで…?
結局、今の俺にはその答えが出てこなかった




