16
「敵艦は依然浮上しながらこちらに向かって来ています」
「浮上しながら…?俺たちは今潜航しているんだぞ?葵、聞き間違えではないんだな?」
「はい。私たちの後ろの少し上の方でスクリュー音がします」
相手は何を狙っているんだ…?ソナーが死んでいるのは俺たちだけなんだぞ?わざわざ浮上して俺らを包囲する意味が分からない
「包囲陣は着々と完成に近付いてきていると思われますが、どの艦からも装填音が聞こえません」
「戦闘する気はないのか…?であれば包囲する意味というのがわからなくなるのだが…」
包囲した後に網でも垂らして進行を妨げようとでも思っているのか…?流石にそれはないか。あまりにも短絡的すぎる。
となるとあり得る線としては…交渉?もしくは本気で俺たちに補給を…?ダメだ。わからない
とその時、千夏から衝撃の報告を受ける
「…艦長、後方の潜水艦隊から高エネルギーを検出しました!!」
「…マズいな。直撃したら第二兵装にバッテリーを優先することになる事で耐圧性能が下り、バッテリーを大きく消費することになる…」
「艦長、途中で爆発するように魚雷を設定してから180度回頭して後進しながら撃ち込むのはどうですか?一部の相殺に繋がるとは思いますが…応急処置にもなりませんかね…?」
「…やってみる価値はありそうだな。葵、敵のエネルギーが溜まり切るまであと何分だ?」
「今までの宵闇のデータと照合してみると…あと1分です」
よし。間に合うな
「海音!魚雷の信管調整と装填を頼む。千夏、180度回頭完了次第後進を始めてくれ。雫は海音の補佐に回ってくれ」
「「「了解しました!」」」
間に合うか?
……チャージ完了まで残り40秒と言った葵の声がひどくゆっくりに聞こえる
目の前の視界が揺らいで、意識を失い倒れそうになるところを必死に堪える
FSCの後遺症かとも思ったが、おそらくこれは責任によって生じるストレスのようだ。
「…大丈夫だ。全員を信じろ…」
自分に暗示をかけないともう立っていられない。そうとすら感じ始めたその時に、彼女たちの報告にやっと気がついた
「艦長!!」
「すまない。海音、魚雷発射よーい。撃て!」
「撃ちます!!!!」
それを撃った直後に敵艦からの高エネルギー反応が一瞬途絶えたかと思うと、こちら側に向けて放出してきた
「魚雷、起爆!!」
頼む。俺たちと敵艦の一直線上にエネルギーの伝達を妨げる壁が出来たはずだ…耐えてくれ…
そんな地獄のような時間が続き…
……艦内があまりにも不自然に静かになった




