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「こちら日本海軍所属伊号第十三潜水艦。応答せよ」
《…おぉ、久しぶり。元気してた?》
…無事接続は完了
「勿論だ。お前の方はどうなんだ?」
《いいに決まってるだろ。それで、お前の艦から信号弾が飛んでくのが見えたけど何かあったのか?」
「あぁ、お前のところで今のうちに資材を補給しておきたいと思ってね」
《…隠してるんじゃねえよ。今お前の艦、どこかに損傷があるんだろ》
…何でわかったんだ…?音が潜航時並みに大きくなるのを避けるためにわざわざ海上航行をしているんだぞ?そんな簡単にバレる訳…
「…DSCか?」
《おっ、覚えてたんだ。そうそう。それが君の艦には搭載されていてね、現在地などはわからないものの、資材がどれぐらいあるか、艦の損傷レベルがどれくらいかはこちらに表示されるんだよ》
「そこまでわかってるのであれば俺が今何を希望するかわかるはずだ」
《勿論。うちの艦で補給と修理をしてあげるよ》
「…何だって?」
「艦長、DCSとは…?それと、修理ができるとの事ですが…」
「DSCはダメージコントロールシステムの略だ。ダメコンとかいう割には損害を留めたりはしてくれない報告をするだけしてあとは何もしないゴミシステムだ。そんな事より、あすかは補給艦じゃなかったか?修理だなんてことは出来ないはずだが」
《君が勝手に脱走してから色々あってね。気付かなかった?この艦、二代目だよ》
「…移動式ドッグあすか、か…まさかもう完成しているとは」
《驚きだろ?まぁとりあえずこっち来いよ》
「…了解した。少しだけ待っててくれ。一度無線を切るぞ」
《おう》
…ヤバいな
「葵、美波、千夏。急いで中に戻ってこい」
甲板のほうに上がる時間がないのでスピーカーを使って会話を試みる、が
「私たちが水遊びしようと思ってせっかく水着に着替えた直後にそれですか?もしかして覗いてたんですか?」
「いつの間に着替えたんだよ。てか俺はそういう趣味はないから安心しろ。これは艦長命令だ。早く中に入ってこい」
「はーい、わかりました」
…すまん
「どういうことですか?艦長、わざわざ修理までしてくれるって言ってたのに、というか二代目あすかなんて初めて聞きました。軍事機密ですか?」
「俺は無線なんかで軍事機密を話さない。それに、二代目あすかなんて物はないから安心しろ…いや、むしろ安心できないか」
俺がそういうと、たった今降りてきた3人を除く全員が不思議そうに俺をみていた
「…俺が嘘をついてもその嘘がまるで真実かのように振る舞っていただろう?つまり、あれは宵闇の艦だ。おそらく、俺の友人が乗った補給艦を含む日豪合同演習部隊はもう…」
「そんな…」
「…これは戦争だから、犠牲が出ることは仕方がない。それは俺も、友人も承知の上だったんだ」
…しかし不味いな。DSCの技術と情報が盗まれているんだ、このまま普通に戦ったら負けるぞ…?
「…千夏、このまま戦闘に入った場合、俺たちに勝ち目はあると思うか?」
「…ほぼないと思われます」
「そうか、残念ながら俺も同じ意見だ。だから今は距離を詰めずに相手の動きを潜望鏡でひたすら確認するぞ。深度を潜望鏡深度に設定」
「潜望鏡深度、了解しました」
「…葵、補給艦にソナーを搭載して武装をする脳筋はこの世に居ると思うか?」
「宵闇ならやりかねません」
「やっぱり…?」
困ったな。
もし武装が無かったとしても補給艦一隻だけを敵の目の前に置く訳がない。俺らが逃げている事がバレた時点で追撃を喰らって終わりだ
「…これは、今年最大の危機かもしれないな……」
相手にバレるのが先か、こちらが逃げ切る、もしくは敵をバレる前に攻撃するのが先か…
恐ろしいギャンブルじゃないか
「俺が、お前らの仇を打ってやるから。だから、世界が平和になるその時まで、空の向こうで待っていてくれ…」
グレートオーストラリア湾付近の暖かい場所から少し離れた南極海に宵闇と氷山がまばらに見え隠れしている
もう太陽が海へと沈もうと動き始めていた。友人ら日豪合同演習艦隊が沈んでいった海は、もう数時間後に、宵へと差し掛かる――――――
次の話より第二章、南極海開戦が始まります




