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主に目立った外傷はなく、甲板上からは見えないが喫水線下に被弾しただけのようだ。ソナーが使えなくなるのは辛いが裏を返せば被弾したにも関わらず被害がソナーが使えなくなるだけなのだ。むしろありがたいぐらいだな
…1番怖いのは、この状況を宵闇が狙って起こしていた場合だ。もしその場合、今の俺の動きは全て宵闇の意思の通りに動かされていると言っても過言ではない
…杞憂か
「おーい、こっちは確認終わったぞー!もしよければ俺もお茶会に参加させてくれ」
「勿論いいですよ」
「はい!」
「…じゃ、俺は自分のカップと新しく紅茶を入れてくるから待っててくれ。アイスとホットどちらがいい?」
「私は…アイスで」
「私もー!」
なら俺もアイスにしようか。洗い物は極力減らすべきだからな
「わかった。少しばかり待っててくれ」
そのままハッチを開け梯子を降り、調理場まで行って前使っていたティーポットを洗い、拭いた後紅茶を入れる
そしたら2、3分待って…
茶こしでこした後そのまま蒸らしておく
そうしている間に氷を細かく砕き、それを器に入れて持っていく
「…なぁ千夏、ちょっと一人で持ってくのしんどいからこれ持って上に上がってくれ。それと、千夏も一緒にお茶しないか?」
「あっ、はい!ご一緒させていただきます…」
流石に俺一人で氷とティーカップとティーポットは持っていけない
「…おっと、先に行っててくれ。千夏の分までカップを取ってくるから」
「了解しました〜」
氷は溶けてしまうから先にティーポットを持って行ってもらった
…何となくだが、氷にカップを入れて冷やしてしまおう。何だがそっちの方が良い気がする
「よいしょ…っと。うーん。やっぱり外の空気は格別だな」
「あっ艦長!ここですよ〜」
「知ってるさ」
「そんな事より、お身体の方は大丈夫なんですか?今さっきから艦の点検をしてたって美波ちゃんから聞きましたけど」
「うーん…まぁ、動かしても悪くはならないんだし、大丈夫なんじゃないか?」
「そんなもんなんですかね〜」
「…相変わらずオフの時の千夏は緩いな」
「そうですか?」
そうだとも
そう答えながら俺は全員に氷を入れたカップを配り紅茶を注いでいく
「今日はディンブラを使ってみたんだ。苦いのが苦手な人は少し飲みにくいかもしれないが、まぁコーヒーほどでもないんだし大丈夫だろ?大丈夫じゃなければ砂糖を持ってくるだけだしさ」
「香りがいいですね」
「まぁ、本場から仕入れた高いやつだからね」
「!?…こんなのどこで仕入れたんですか?」
「…どこだと思う?」
少し挑発をしてみようか。多分答えられるやつは一人しかいないだろうけど
「…もしかして、うちのお店…ですか?」
「大正解だ。さすが、舌が肥えてるだけあって気付くのが早いな」
「えっでもいつの間に…?」
「あれ?気付いてなかったのか?俺あそこによく行ってるんだよ。普通に美味しいからね」
「そうだったんですか!?」
「あぁ。だから艦内であの味が食べられると知った時は驚いたし、何より嬉しかったかな?」
「…なんか、いつもありがとうございます…!」
「フフッ。別に俺の方が感謝しないといけないな。いつもありがとう」
「…ちょっと艦長、私たちも話に入れてください」
「そうですよ。私が呼ばれた意味ないじゃないですか」
そう言って互いに笑い合い、そして静まり返った
波の音だけが響いている
「…平和だな」
「それ言うの何回目ですか?」
そう言って笑いかけてくるが、葵だってこのひと時を大切に思い、そして楽しんでるじゃないか
「そうだね。でも、何回でも言えるほど平和で美しいひと時って事なんだと思うよ」
不思議だな。こうしていると、なんだか気分が晴れ晴れしてくる
「…さて、そろそろグレートオーストラリア湾の下あたりだ。予定通りに行けばもう1日もしないうちに日本軍と合流すると思われる」
場の緊張感が一気に上がる
「…だから、今の時間をめいいっぱい楽しむように。これが、本日の最後の命令だ」
「「了解しました!」」
やっぱり、この艦には暗い雰囲気は似合わないな




