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昼飯の食器を洗い終えた俺は発令所へと向かう
時間が経つと何となくだが足を動かせるようになった。
おかげで食器洗いをすると言ったことが嘘にならなくて良かったよ
「…さて、次の作戦だが本艦はすでにタスマン海を通過していると聞いた。後は補給艦と合流するだけなのだが問題はここからだ。損傷部位の騒音が酷い。ソナーが使えない。艦のバランスが安定していないと、潜水艦としてやっていけるのか不安なぐらいには被害を受けている」
「す、すみません…」
「いや、謝らなくて良いんだ。そこでだ、あえて浮上し補給艦と通信をして正式に補給をさせてもらうと言ったやり方を考えたのだが」
「危険すぎます」
「そうだな。でも、潜航したままだとうまく電波も飛ばず騒音だけが海中に広がるんだ。何処の誰が見ても怪しいだろ?だからわざわざ姿を見せようと言っているんだ」
正直、被弾するとは思ってもいなかったし被弾して生き残るとも思っていなかった
だから被弾した時のプランなんて一つも考えていなかったのだ
俺の悪いところだ
最悪の状況を考えても意味がないと考え、常に成功した前提で物事を考えてしまう
「ですが、もし補給艦以外にも艦がいて、私たちが悪い方向で伝えられていたら…」
悪い方向とは、俺らが反逆者だの犯罪者だのと伝えられた場合だろう
「大丈夫だ。俺を信じろ。おそらく日本軍は俺たちを追ってくる事はない」
「…えっ?でも艦長、硫黄島出発前にバレてるだろうなって。世界を敵に回すことになってもとか言ってたじゃないですか」
「あぁ、そりゃバレてるだろう。ただ追ってくる追ってこないの話はしてなかっただろ?」
「確かに…」
「つまり、水中で悪目立ちするぐらいなら最初から姿を出して堂々としていようと言う事だ」
もう説得は不要だろうな
「本艦はこれより水上航行に切り替え、なるべく急いで補給艦へと向かう。各員持ち場につけ」
「「了解!」」
「メインタンクブロー。浮上せよ」
「メインタンクブロー!」
正直水上航行するというのも危ない所ではある
ソナードームが浸水し抵抗が大きくなっていることで速力は低下し、騒音が響いてしまうからだ
まぁ、潜航していようがしていまいが遅くなるものは遅くなるし騒音だって鳴る
「浮上完了」
「よし。誰か俺と一緒に久しぶりに風にあたりに行かないか?新鮮な空気を吸いたいんだ」
「私行きます」
「私も行きたい!」
「私はここで操艦をしておくので…」
「私も良いかな。艦長、まだ足が完全に良くなってないんだから気をつけてよね」
美波と海音以外は待っているのか
梯子を登りハッチを開けると少し強めの風が俺にぶつかってくる
「ひぁっ!風強いですね…」
「うーん。この風が気持ちいいんだよなぁ…」
「わかりますよ艦長。風っていいですよね」
今はもう冬に差し掛かっている。南半球にいる影響か、刺すような暑さと海上の涼しさがせめぎ合い丁度良い感じになっている
「こんなふうに、普通にリラックスできる時間が続けばいいのにな…」
「そうですね…」
二人ともが視点を落としている
…あれ?もしかしてこれ俺のせいで空気悪くなった感じか…?
どうしたんだよ、二人とも俯くなよ…
「な、なぁ、軍に入る前美波は何をしてたんだ?」
「えっ?私は家業を手伝ってました。父が戦死してから家の定食屋が回らなく…」
「ちょっストップストップ…いや、ごめん」
「別に謝らなくてもいいんですよ」
やばい。俺のせいでさらに空気が重く…
「…インドネシアに着いたら二人が欲しいもの俺が買うから、だから元気を出してくれ」
「ええっ!?」
「私たちそんなに暗い表情してました?」
「…え?」
「いや、こうして艦長達と仲良く話ができる今が、とっても幸せだなぁって思ってたんですよ?」
「な、なるほど…?まぁ、約束は約束だ。インドネシアに着いたら市場でも歩き回ろうか」
「やったー!」
なんだろう。俺の予想とは全然違ったな
…つまり?俺だけが無駄に張り詰めてたってこと?
「…これじゃただの心配損じゃないか……」
「「?」」
「いや、なんでもない。新鮮な空気も吸えたし艦内に戻るか?それとも陽が沈むまでここにいるか?」
「いいえ、戻りません!」
「たまには、太陽が水平線に沈んでいくのを見るのもいいですからね」
「なら決まりだ。二人は折り畳み机と椅子を持ってきてお茶でもしていてくれ。俺は艦の簡易的な点検と掃除をしてくる」
「了解です!気をつけてくださいね…?」
潮風に当てられながら艦を点検する
…たまにはこんな日も悪くないな




