遊園地ではなく病院でした
「大丈夫か?!」
目を覚ますとそこに父がいた。
「お父ちゃん?」
まだ父をパパからお父ちゃんと一度も呼んだ事は無かったが、母をお母ちゃんと呼び始めていたので父をそう呼んだ。
「ここどこぉ?お母ちゃんどこ居るん?」
キョロキョロしながらそう言うと、父は目に涙を溜めて...
「沙織〜!」
私を抱きしめながら、大声で泣き出した。
(痛いよ)そう言うより事故の事を思い出した私は
「耕にぃ!お母ちゃん!御厨夫妻はどこなん?!」
そう言って父を引き剥がそうとすると
「痛い!?」
首や背中、左腕が痛かった。
「だ、大丈夫...じゃないよな」
父は泣きながら辛そうな顔をした。
「なにか飲むか?ずっと寝てて喉、乾いてないか?」
そう言った父に「オレンジジュース」と言うと
「分かった。そこで大人しく寝てろよ」
父は優しく微笑んでから、部屋を出て行った。
私は父に気付かれないよう病室を出て名札を見る。
【永峯 沙織】
漢字はほとんど読めないが平仮名とカタカナは読めた。
壁伝いに名札を見るが見当たらず、この時【永峯 幸子】が同室にも隣にも無い事に怖くなった。
私は近くに居た看護婦さんを捕まえて
「母はどこですか?名前は永峯幸子です。他にも一緒にいた御厨耕助はどこですか?その両親はどこにいますか?」
震える手と声を抑えながら「こちらですよ」と言ってもらえる事を祈りつつ、看護婦さんの顔を見ると...
驚いたあと、目を細め一瞬上を向いた後
「お父さんは?一緒に病室に居たよね?」
と屈んで優しく話しかけてきた。
………私の質問に答えずに!!
「嫌ぁーー−−!!ママどこぉーー−!耕にぃ出てきてよぉーー−−−!!!」
自分では抑えきれない感情に、どうにもならなくて
心臓が爆発しそうになって
父が顔色を青くして駆け寄ってきて
ドサッ
父に抱きしめられながらも、何かが滑り落ちたような音が聞こえて
そっちを見たら名札が目に入ってきた。
【御厨 耕助】
「耕にぃーー−−!!」
名札を見た瞬間病室に飛び込む!
そこには、床に這いつくばりながらも顔をこちらに向けた耕にぃが...
「耕にぃ...」
顔をグチャグチャにしながら、私は上半身を起こした耕にぃに抱きついた。
「良かった...」そう呟く耕にぃに私も
「生きてた...生きてたよぉ...」
全身の痛みなんか忘れて、体中の水分がなくなるんじゃないか?と言う位泣いた。




