六月生まれの娘たち
「あら?今月純玲ちゃんのお誕生日なの?」「うん♪そうだよ〜」
幼稚園で他の子と接したからか、関西弁が抜けてきた純玲が嬉しそうにしながらかなさんに答えた。
「何日がお誕生日なのかな?」
気の所為か表情にやや陰りが見えたように感じたが、気の所為ではなかった。
「15日だよ〜」
純玲がそう言った瞬間、かなさんは立ち止まり
「15...綾音の...日」
青い顔でボソッと何かを呟いた。幸い純玲はニコニコしながら前を向いて歩いていたが、皆が立ち止まった為振り向こうとした。
「純玲ちゃんのお誕生日楽しみだなぁ」「ホント〜?」
さっきまでのやり取りが尾を引いているのか、純玲が恵子にまだムクレている。だが恵子はかなさんの言った事が理解出来ていたのか、痛ましそうにかなさんをチラッと見てから
「ホントだよ〜。ケーキは何がいいかな?」「ケーキはかなちゃんとこで貰うから要らな〜い」
「えぇ〜...」と言いながら離れて角を曲がった二人を見た後、私はかなさんの方を振り向いた。
「6月15日はね...綾音の、長女の命日なの」
かなさんが言うには長女の綾音さんは6月1日に切迫早産で片肺しかなく、心臓の壁も無かった為生後二週間で亡くなったそうだ。
「生きていたら、純玲ちゃんと同じ歳なんだよ」
かなさんが寂しそうに言った。
「もし生きてたら、純玲と双子みたいに仲良く幼稚園に通えたかな?」
「そうだったかもね」
私が言うとかなさんも少し元気を取り戻したのか、でもやっぱり微笑んだその瞳は悲しそうに見えた。
「お姉ちゃ〜ん?」
角からひょっこり顔を出して呼んでる純玲に
「今行くから」
と言ってかなさんの方を見ながらゆっくりと、私は歩き出した。
石上 綾音...1993/6/1〜1993/6/15
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