みっくんはお兄ちゃん
お昼寝から目覚めると、母が居なかった。
幼い私は寂しくて大泣きしていた。
そんな時、後ろから男の子の声がかかる。
「大丈夫だよ」
そう言って私の頭を撫でてきた。
「だぁれ?」
そう聞いた私に男の子は
「御厨 耕助、お隣さんだよ」
「みくりゃ?」
まだ少し舌足らずだった私は上手く言えず
「みっくん!」
テレビで男の子を君付けで呼んでいるのを思い出しそう呼んだ。
因みに彼は大泣きする私の声を聞いて、押入れのベニヤ板をズラし此方に来ていた。
引っ越しで押入れを開けっ放しにしてた時、光が漏れていて気になって触ったら動いたそうだ。
そこを二人の秘密の通路にしてしばらく遊んでいたのが懐かしい...
ある時母が私を遊ばせようと思い公園に着くと、そこに見知った顔があった。
「みっくん!」
呼びかけ駆け寄りながら、私は彼の足にしがみつき見上げて笑った。
「耕助君その子誰?」
声がした方を見上げると、彼と同年位の女の子が居た。
それよりもまだ私が呼んでない下の名前を他の女に呼ばれた事にショックを受け、私は
「お兄ちゃん遊ぼ!」
そう言ってブランコまで引っ張って「押して!」と我儘を言った。
取り残された母と同級生を睨む自分は
「ませ過ぎだよなぁ」
今思うと少し恥ずかしく思う。
この時から私は、『みっくん』の事を『耕にぃ』と呼び方を変えた。




