見たことある天井
最初の4行は「。」を付けない事で夢現を表現してみました。
付けた時になんか違和感が...
白く高い天井に大きな窓
外は明るいのに日差しは入って来ない
寝たまま目線を下げると誰も居ないベッドが見える
もう一度窓に目をやり外を見る
「知らない病院だ」
一瞬父と義母の死が夢だったのかと思ったが、知らない風景と自分の身体を見て違うと理解した。
自分でも不思議なくらい落ち着いていた。
耕にぃと純玲と自分だけ...
普通の家族構成じゃない。
恵子家族にお世話になっている。その事だけで忘れていられるような事じゃないのに...
「どうして...忘れていられたの?玲子さんだけじゃない。御厨家に、自分の両親まで!」
いや...厳密には忘れてなどいない。正確には
悲しいとか淋しいとか辛いとか...
そんな当たり前の感情を忘れていた。
……ガラガラガラガラ
「起きたのか?」
やってきたのは耕にぃだけだった。
ベッド横にある椅子に座り耕にぃは
「大丈夫か?」
と慈愛のこもった声で、同じ位優しい目で
「耕にぃ〜…」
包まれていると、今更ながらに気付いた。
震える声で耕にぃの名を呼び手を握ると、耕にぃはそっと抱きしめてくれた。
ガラガラガラガラパーン!!
「ねぇね〜〜〜ぇ〜〜〜!!!」
けたたましく扉を開け純玲が飛び込んできた。
靴を脱がせる間もなくベッドによじ登り、驚いた私の胸にしがみつき
「ねぇね〜〜あぁぁぁ〜〜〜んっ!!!」
まだ3歳にもならないのに妹は私の感情と、おそらく自分の中にもあった普通じゃない、どう表現したら良いか分からなかった感情が同調したのだろう。
後に知ったが私が恵子ママの車を見てフラッシュバックした時、妹も大泣きして暴れ出したと聞いた。
騒がしくしたせいで人が集まって来てしまい、恵子と恵子ママが病室前で謝り倒していた。
私は妹の頭を撫でた後、額を重ねながら笑顔で
「ゴメンね」
そう言いながら妹の涙を拭くと妹も
「ねぇねも♪」
と言いながら私の涙を拭ってくれた。
次の話だけ現在視点になります。




