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エレナ 16歳②

「戦争をなくしたいの」

エラルフィアは、今の世界の情勢を聞くたび、その言葉を使った。

「お互いが労わって手を取れば、戦争に勝つよりも幸せになれるんだよ?人と人だから、無理なはずがないと思うの」


吹けば飛ぶような綺麗事を、こうも当たり前のように語ることができるのは、エラルフィアが綺麗な人間だからだ。


だから、エラルフィアが綺麗事を言うたび、エレナは決まってこう答える。

「軍人は綺麗事を言わない」


様々なことがあった学校生活で、エラルフィアとのこうした会話が、記憶のいちばん手前にあるのは、それほどエラルフィアが強烈な存在だったからだった。


彼女のおかげで、エレナは4年間を退屈せず過ごすことができた。


「エレナはさぁ、好きな人とかいたことある?」

寮の女子部屋で、ベットに転がりながらふと、エラルフィアがつぶやいた。

「…何だよ急に、いたことないよ」

「私たちもさあ、軍人にはなるけど女ではあるじゃん、いつかは恋をして、結婚して幸せになるんだよ。恋バナくらいはしとかないと」

「わからない理論だな。それに、いつまでも女に拘ってると、半端で終わってしまうぞ」


ある日の夜。窓から指す月明かりが、部屋を満たす唯一の光だった。


「大事なことだよ。女にこだわるってのは、何も女々しくいることじゃない。出来るだけ綺麗を保って、男に媚びず自分に誇りを持って、そうやって母親になるの。特にエレナは可愛いんだから、夜更かししたりしちゃダメだよ」

「うるさいなぁ。全部フィアの価値観じゃないか」


思えば、エラルフィアとはいつもこういった問答ばかりしている気がする。

軍人になり女として生きる道を考えないエレナ、軍人になりその上で、女としての幸せを掴み取ろうとするエラルフィア。二人の意見はよく対立したが、争うことはなかった。


「エレナにもきっと、いい人が見つかるよ」

そうして、決まってこの言葉で締めた。

「エレナにも」という言い方をしているが、エラルフィアには相手がいるのだろうか。


エラルフィアはともかく、エレナには自分が誰かと幸せになる未来が見えなかった。


家族を知らないエレナには、愛がわからない。誰かと結ばれて、家庭を持って、幸せになる。エレナにあり得るのだろうか。


今日は、まだ眠れない。








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