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高所にある本を取るため腕を伸ばすと、左肩に鈍い痛みが走った。

もう数日経ったはずなのに、今でも狙撃された出来事が痛みとともに思い出される。


ルイスが狙われた日以降、狙撃事件はパタリと止み、事件はひとまずの収束を果たした。


そんな中ルイスは、執務室で書架の整理をしていた。普段やることが多いからなのか、エレナはこういった整理整頓を疎かにする癖がある。


エレナは現在会議で留守にしているため、掃除をする絶好の機会なのだ。


書架の整理が終わり、他の場所も掃除しようと机の上を見てみれば、紙屑や筆記用具が散らばっていた。

その中に、一枚の写真が混じっていた。


手に取り眺めてみると、そこには二人の女性が敬礼して並んでいた。一人は、今よりも髪が短いが、一見してエレナだとわかる。もう一方は、エレナよりも幾分か背が高い女性だった。

口を一文字に結んだエレナとは対照的に、その女性は朗らかな笑みを浮かべている。


「ご友人かな…」

裏側を見てみると、撮影した年と日付が書かれた横に、「エレナ エラルフィア」とだけ記されていた。


察するに、士官学校時代の友人か何かだろう。社交的ではないエレナだから、一緒に写真を撮るからには、余程親しい仲だとわかる。


「それをこんな無造作に」

フォトフレームか何かで飾っておくべきだろう。

一旦写真を引き出しにしまい、机の上の掃除に取り掛かった。


少しして、音を立てて執務室のドアが開いた。

「…綺麗になってる」

部屋に入るなり、エレナは小さく感嘆の声を漏らす。

「大佐があまりやらない場所も掃除しておきました」

「そうか、ありがとう…ん?なぜここにこの写真がある」

そういって、机の上の写真を指差す。

「机の上にありました。素敵な写真ですね」


「友人なんだ。士官学校で出会った唯一の友達でな、今でもたまに手紙が届く」

懐かしそうに、エレナは写真の女性を撫でた。


「その方は今どちらに?中央では見かけませんが」

「北方司令部で少将付き補佐官の少佐だ」


北方司令部といえば、植民地シャーレと、その国に度々圧力をかける国ウルドゥワ共和国が接する最北端の司令部である。

現在の情勢を考えても、油断できない位置にある。


そのことを言うとエレナは答えた。

「不安はない。何年も過ごしてきたが、あれは強い女だ。安全な場所での平穏は、あいつは好まんし似合わない」


類は友を呼ぶ。その友人も、形は違えど信念を貫く強さを持っていると言うことだろう。普段見せない表情で友を語るエレナの姿を見ていると、少しだけ…

「羨ましいです。俺は正直大佐より友人は多いけれど、他の司令部や駐屯地に移っていてもう連絡はとっていません。友人がいないも同然です」


揺るぎない存在として知覚できるエレナと違い、ルイスは彼らのことが朧げで、たまに忘れることもある。

身近に親しいと言える存在はいないため、時折寂しく感じる。


「…私がいるじゃないか」

「え?」

こちらに背を向けたエレナが小さな声で呟く。

ちらりと見えた頬は、少し赤かった。

「友人ではないが、私はお前をそれと同等程親しく思っている。だから、そんな寂しそうな表情をするな」


「あ、あり…がとうございます…?」

顔が熱くなっているのを感じる。何故エレナは、今こんなことを言ってきたのだろうか。

ここ最近、エレナの様子がおかしい。妙に優しいと言うか、上司の気遣いというだけでは済まない心配りが、そこにはある気がする。


そして、そんなエレナに対する自分の感情にも、ルイスは目を背けることができずにいた。





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