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02 エルフ、観察をする




 私の名前はレザリア=エルシュラント。この地方の西の森にある『月の集落』出身のエルフです。


 以前、私はさらわれた同族を助け出すために人身売買組織へと単身乗り込んだのですが、そこで運命の出会いを果たしたのでした。


 まだ駆け出し冒険者だったリナは、妹分のライラを連れて組織に乗り込もうとしていたのです。さらわれた街の娘たちを助けるために。



 ——『じゃあ、協力して乗り込もうか。よろしくね、レザリア!』


 ——『はい、リナ!』



 こうして無事、組織は壊滅できました。さすがは私のリナ。そしてそこに囚われていた娘カルデネとも意気投合し、私たちは冒険者パーティ『白い燕』を結成して今日に至る、という訳なのです。


 それなのに——。



「……はあ……これからどうしましょう……」



 追放された私は、冒険者ギルドを恨めしく眺めます。一体これから、私の性よ……愛情の注ぎ場所をどこに求めればよいのでしょうか。


 いえ、やはりリナしかいません。この世に生を受けて数百年、人を愛したのは初めてなのですから。


 私たちエルフ族は寿命が長いです。その為か、種の保存本能である性よ……愛情を感じることなんてほとんどありません。この出会いを逃してなるものですか。


(……ウフフ……あなたが私を拒否しても、私があなたを拒否することはありませんよ、リナぁ……)


 私はヨダレを拭いとり、想い人のために決意を固めるのでした。








 私は木の上に隠れ、『白い燕』の戦いぶりを眺めます。


 まずはリーダーである私のリナ。


「やあっ!」


 ザシュ。


 素晴らしい剣捌きです。いえ、刀捌きと言うのが正しいのでしょうか。どちらにせよ惚れ惚れします。


 なんでも彼女の師匠からみっちりしごかれたようで、ここいら辺の魔物で彼女の相手になるものはいないでしょう。


 そして治癒術師のライラ。


「えいっ!」


 ポコッ。


 彼女は『身を守る魔法』を掛けて前線に躍り出る、珍しいタイプのヒーラーです。


 攻撃面で決め手には欠けますが、その素早さもありリナをサポートするには十分な役割をこなします。


 最後に補助術師のカルデネ。


「やんっ!」


 ペチッ。


 彼女に関して申し上げることは特にありません。補助魔法は得意なのですが、攻撃力は皆無に等しく。彼女を守るように立つのがいつもの私のポジションでした。


 戦闘を見守る私の胸中に、複雑な思いが広がります。


(……私の代わりに、誰も……入れなかったのですね……)


 ご覧のように、このパーティにはアタッカーが足りていません。私の代わりに遠距離攻撃が可能な射撃手か魔術師、最低でも近接攻撃が得意な者が、あと一人は欲しいところです。


(……まあ入れたら入れたで、私が直々に試験させてもらいますが……)


 そりゃあ、どこの馬の骨かわからない者にリナを任せる訳にはいきません。せめて私以上の愛情は示してもらわないと。



 やがて戦闘も終わり、三人はその場で座り込んで休みます。


「……ふう。やっぱりレザリアいないと、キツいねえ」


 ピク。リナの言葉に私の耳が反応します。


「そだねえ。でもこれからは慣れないとね」


 お待ち下さい、ライラ。スッと手を上げればこのレザリア=エルシュラント、いつでも参じますよ?


「私、いつもレザリアに守ってもらってたから。頑張って戦えるようにならないとなあ」


 いえいえ、カルデネ。あなたを守ることで私の実力をリナにアピールすることができるのです。いつまでも最弱のあなたのままでいてください。


 リナがスクッと立ち上がります。おっ、早くも私を呼び戻すつもりでしょうか? ええ、あなたが願えばこのレザリア、すぐにでも身体を差し出しますとも。


「ま、仕方ないよ。今までレザリアに頼りすぎてたし。これからは私たちだけで頑張ろう」


「「うん!」」


 ズル。いけません、枝葉に触れ少し音を立ててしまいました。


 三人がこちらを見ますが——大丈夫です。エルフ族秘伝の奥義が私にはあります。



「——ギャル、ギャル!」



「……なんだ、鹿か」


「でも、木の上から聞こえてきたような?」


 そうです。エルフ族秘伝の奥義『鹿の鳴き真似』です。首を傾げる三人でしたが、やがてこの場を後にしました。


(……ふう。危ないところでした)


 私は額の汗を拭い、木々を渡って三人の後を追いかけます。


 去り際、私は背後を確認します。


「まったく、撃ち漏らしはないはずですが……私のリナに手を出すのはやめてくださいね?」


 そこには私の矢に穿たれた魔物、総勢五十二匹。それらが一匹残らず魔素に還りゆく光景が広がっていたのでした。





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